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パンデミックの大みそかに2021年の都議選を占う

 昨日からニュースに「緊急事態宣言」という単語が飛び交い始めた。東京の新規感染者数は大みそかの今日、ついに1300人に達した。第1波にせよ、第2波にせよ、どこかで〝ピークアウト〟は訪れて、いつの間にか感染者数の大きな数字にも慣れてしまっていた。どこやらの関西の〝ピークアウトおじさん〟がTwitterで気勢を上げていた11月後半には、まさか感染者数が500人を超えて、千人に達するなど、思いもしなかっただろう。

 なにかが違う。多くの専門家が気づいているはずなのに、口にしようとしない。東京だけ極端に感染者が増えているのも気になる。〝奴ら〟は東京にやってきて、今、どの程度、市中に蔓延しているのだろうか。

 緊急事態宣言が出た頃、東京の街は閑散としていた。浅草寺の仲見世商店街がシャッター通りになり、観光客が忽然と消えた光景は、なにやらうすら寒いものを感じた。街が死ぬというのは、ああいう景色なのだろう。新年明け、まさか同じことが繰り返されるのか。

 ほとんどの政治家は、滅多なことで緊急事態宣言を口にはしないだろう。今年4月、街をひと月近く〝仮死状態〟にしてしまったしっぺ返しはあまりにも大きすぎた。来年は衆院選と都議選がある。どちらが先かは分からないが、衆院選と都議選が重なる年は政局が大きく動く。ちょっとした判断ミスが命取りになりかねない。

 戦後最大のパンデミックの中で都議選が行われる。普通の常識が通用する選挙になるのだろうか。

 生粋の神奈川県民としては都議選など隣の自治体の他人事でしかなかったが、ひょんなことから夏まで都政をウオッチしなければならなくなった。そんなにモチベーションが続くのか分からないが、とりあえず主要政党の1次公認が出そろったので、表にまとめてみた。

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 主要政党の公式発表のみを並べている。詳細は、某都政の専門紙が新年明けにも特集するだろうから(たぶん)、そちらを参照していただきたい。

(無所属までは網羅しきれていないので、これも某都政の専門紙に期待…w)

 今回の都議選の焦点は、表向きは小池与党の過半数確保だろう。前回、都民ファーストの会が躍進し、都議会第1党に躍り出た。現在、公明党と合わせて都議会で過半数を確保している。前回、大敗を喫した自民党はどれだけ陣地を奪い返すのか。シンプルに考えれば、そういうことだ。

 だが、そもそも都民ファーストの会が現有議席を確保できると考えている人はいないだろう。本人たちですら。公明党と合わせた過半数すら危ういのではないか。

 選挙は水物だからふたを開けてみなければ分からない。とはいえ、大体の顔触れを眺めると、ザクっとした勝敗は見えてくるものだ。

都民ファーストの会玉砕選挙区

①1人区

 千代田区、武蔵野市、青梅市、昭島市、小金井市の5選挙区の現職は苦戦を強いられる。これで5減である。

②2人区なのに複数候補

 台東区は定数2なのに、2人の現職に公認を出している。当然、放置すれば共倒れする。これで2減である。

③3人区以上で複数候補

 世田谷区、杉並区、板橋区、練馬区、足立区、八王子市は複数擁立しているが、2人とも当選できる可能性は低い。地元に縁のなかった落下傘候補は、今回は厳しいだろう。楽観的に片方は生き残ると考えても、6減である。

 ①+②+③で計13減。都民ファーストの会の現有議席は50なので、37人まで減る。この段階で、第1党の確保は厳しい。公明党は現有23議席なので、両者合わせて計60人。都議会の過半数を維持できない。

④定数2で勝ち抜けるのか

 都議会で公明党を抜いて第2党を死守するメルクマールは、定数2の選挙区で勝ち抜けるかどうかである。港区、文京区、渋谷区、荒川区、立川市、三鷹市、府中市、小平市、日野市、西東京市、西多摩、南多摩、北多摩第二、北多摩第四の14選挙区のうち、ここは大丈夫と言えるのは3~4選挙区しかない。

 甘く見積もっても10減だ。

⑤中選挙区でも1人通せるのか

 例えば江東区(定数4)は自公共立で打ち止めだ。4議席目は自民2人目と共産の争いだろう。渋谷区(定数2)も2議席目の争いに絡めるかどうか。葛飾区(定数4)も2議席を都自共で争う構図。三鷹市(定数2)は3番手だろう。この四つを落とすと、公明党と議席数が並ぶ。

 少なくとも複数候補を調整し、一本化すれば、雪崩式に議席を失う事態は避けられるかもしれないが、いかんせん、みんな現職。結局はこの4年間で、地上戦の準備をどれだけしてきたかにかかっている。今回は空中戦で勝てる選挙ではないだろう。

 そろそろ背中に殺気を感じてきたので、お断りしておこう。これはあくまで、頭の体操でしかない。客観的な根拠などない。おそらく、年が明ければ主要政党が情勢調査をかけるだろう。それが見えてくると、自民党辺りは候補者の上積みをしてくるのではないか。

自民党は4年前の陣地を回復するのか

 もちろん、自民党は議席を一定回復するだろう。それは素人でも分かる。問題は、どの程度まで議席を回復できるのかだ。

 前回の都議選(2017年)で、安倍内閣の支持率は35%まで落ち込んでいた。この数字は安倍内閣末期に近い。

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 一方、菅内閣はスタート時点で6割を超える支持率を誇ったが、コロナ対応などを巡って急落している。

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 今年12月の内閣支持率は42%まで落ち込んだ。来夏の都議選時に誰が首相なのか、どの程度、支持率を回復しているのかは分からない。仮に3割台まで落ち込むと、都議選も危険信号が点灯する。

 1989年、社会党が29議席を獲得し、都議会第2党に躍進した際、自民党は43議席にとどまった。1993年、社会党は惨敗し、14議席に終わったが、日本新党が初の都議選で20議席を獲得。自民党は44議席にとどまっている。都議選は常に国政の偏西風が吹き荒れる。

 国政与党を支える公明党の選挙協力もカギを握る。4年前、学会票のない自民党がいかに弱いのかを見せつけられた。都民ファか、自民かという二者択一の票の出し方はしないだろう。公明党の公認候補がいない選挙区では、様々な駆け引きが行われるのではないか。

共産・立憲民主の選挙協力

 前回、2議席増の19議席を獲得した共産党は、2人区の文京区、日野市での議席獲得が焦点。現有議席を確保するには、前回、タナボタで転がり込んだ目黒区(定数3)、豊島区(定数3)、北区(定数3)、町田市(定数4)、北多摩第三(定数3)、北多摩第四(定数2)での議席死守が必須。

 都議選初挑戦となる立憲民主党は、2桁に届けば勝利と言えるが、候補者が出そろわないと何とも言えない。1次公認は、堅い選挙区ばかりだ。

 共産と立憲民主は支持層が重なるので、1人区、2人区での選挙協力がカギを握る。1人区で議席を狙えるのは、武蔵野市と小金井市。2人区は共産・立憲民主の現職がいる選挙区での調整が必要だ。

維新躍進のカギは大量擁立

 維新の会は、まずは候補者を立てることに尽きる。政党としての活動スタイルからして風を自ら起こさなければ選挙には勝てない。前回のように、申し訳程度の候補者しか立てないと、微風すら吹かない。4年前、唯一の議席は国政転身で消え、今は都民ファーストから鞍替えした現職が唯一の議席を復活させている。

 具体的に言えば、公明党の候補者数を上回るのが最低ライン。都民ファの現職を複数引き抜き、劇場型選挙を実現すれば、維新の風が吹くのではないか。

 こんな風に頭の体操をすると、だいたい全選挙区の情勢が見えてくる。

 都庁担当をやっていた頃は4月に入って、主要政党の情勢調査の結果をこっそり見せてもらい、自分の目利きと見比べてみる。どの政党も、自党の候補者には厳しくバイアスをかけるものだ。選挙が近づくと、情報通の都幹部と酒を飲みかわしながら、お互いの答え合わせをしてみる。ちゃんと取材していれば、総体として見方は変わらない。選挙区ごとの情勢にはバラツキがあるが、そこはもう、小さな業界紙の仕事ではなくなる。

 最後は2013年の都議選だった。(2017年は援軍としてかかわったのみ)

 もう二度と同じことはしないと思うので、このnoteは私の頭の体操レベルである。そこをしっかり踏まえて読んでいただきたい。

 さて、この記事を書いている最中に、東京の新規感染者数1300人というニュースが飛び込んできた。〝パンデミックの大みそか〟というタイトルにふさわしい日になってしまった。東京の感染者数は毎日午後3時に発表しているが、12月31日から1月3日までは午後6時以降発表と決まっている。にもかかわらず、この時間にニュースが流れているのは、小池知事がぶら下がり取材で発表してしまったからだ。

 相変わらず、マスメディアは小池知事の宣伝部隊として活躍している。

 まったく、意気消沈する大みそかである。

 よいお年を(無理)。

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森地 明
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