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石丸新党「再生の道」の「再生」は動画再生の「再生」~都議選2025

 タイトルで出落ちしているが…(苦笑)

 記者会見を一通りリアルタイムで見た。ああ、また田舎から〝無垢の信者〟がわんさかと上京して、バカ騒ぎに興じるんだろうなと。これもまた、4年後の次の都議選ではすっかり忘れられていて、おそらく都議会の会派すら霧散し(そもそも会派を結成するのかどうかもわからない)、その時には小池百合子も都庁を去った後で、次の世代の都議たちが必死に敗戦処理をしなければならないのだろうなと。会見後に弁当を食べながら空虚な気持ちだった。


都庁記者クラブの会見情報は普通に流出する、というか、流出してくれないと困る

 間違えてほしくないのは、都庁記者クラブの記者会見は決して誰でも入れるものではない。自称記者は入れない。会見に出席するには、何らかの組織に加盟している必要がある。業界紙であれば、専門紙協会や地方紙協会である。インターネットにも同様の協会がある。フリーの場合も、自称ジャーナリストでは許可されず、何らかの媒体に定期的に掲載しているなどの実績が考慮される。誰でも会見に出席できるわけではない。

 ちなみに、こういう類いの会見であるがゆえに、会見の情報は普通に流されている。誰も知らないうちに、こっそり会見することなどできない。石丸が流出の責任がどうのこうのと難癖をつけていたが、記者クラブ側には何の落ち度もない。むしろ、オープンな会見だからこそ、メディアの大小にかかわらず、会見の情報を知ることができる。当たり前のことだ。

 要するに、石丸は会見で〝オールドメディアをやっつけて、マウントをとる〟というワンマンショーをしたかっただけだ。信者はそれを望んでいる。教祖たる石丸が、舌鋒するどいフリーライターにこてんぱんにやっつけられて苦悩の表情を浮かべるなんてことは、あってはならない。神は完全無欠である。だからこそ、都合の悪いメディアやライターは排除しなければならない。この考え方は、小池百合子と同じ。彼女は会見室に入るところまでは許すが、手を挙げても決してしゃべらせない。

 しかも、たちの悪いことに、石丸は会見場の記者たちを逆の側から配信して、さらし者にしている。〝無垢の信者〟たちは会見を見て、オールドメディアがしゅんとしている映像を眺めながら溜飲を下げる。

 こういう茶番劇に多くのメディアが付き合っているのは、二つ理由がある。一つ目は、彼らの大半は労働者で、業務命令を受けてそこに来ているからだ。自分の判断でボイコットなどできない。二つ目は、選挙が絡んでいる以上、それを無視することはできないからだ。メディアは少なくとも主要政党、主要候補を公正に報じなければならない。石丸だけ無視するわけにもいかない。

 そういう意味ではテレビ朝日が欠席したのは「英断」である。おかげで石丸は、〝巨大メディアであるテレ朝をやっつけるヒーロー。それに恐れおののいて静かになるオールドメディアたち〟というストーリーをつくれなかった。

 間違えてはいけない。石丸がやりたいのは政治ではなくエンタメであり、彼自身の自己実現でしかない。石丸伸二という物語をいかに演出するのかであって、それ以上でもそれ以下でもない。しかし、それでも選挙に出てくるからには、メディアはそれに付き合わざるを得ない。悲しい立場である。

 都庁記者クラブの会見場は少なくとも20世紀までは、一部の有力メディアしか入ることができない聖域だった。それをフリーライターや弱小メディアにも開放したのが、1999年に知事に就任した石原慎太郎である。石原は決して、都合の悪い記者を排除しない。質問をさせて、怒鳴り散らす。私も当時、弱小業界紙の記者として初めて記者会見に出席した。道府県の記者クラブにはいまだに記者クラブ加盟社しか知事会見に出席できないところもあるそうだが、石丸がそういう閉鎖的記者クラブを望んでいるのは面白いところだ。

 オールドメディアをやっつけたい教祖は、〝既得権益に縛られたオールドメディア〟という悪役が成立しないと、逆に困るのだ。そういう意味で、都庁記者クラブは、石丸にとっては新しすぎたのだと思う。

政策がなくても都議選では勝てる(石丸を褒めてない)

 すでにあちこちで評価されているように、石丸新党とはすなわち、選挙互助会である。政策はない。当選後の縛りもない。供託金は出すが、それ以外は自己負担。徹頭徹尾、自己責任である。おおよそ、政党としての体はなしていない。さまざまな評価はおそらく正しい。

 石丸伸二が政治をやりたいなら、これではダメだ。落第である。だが、石丸は政治をやろうとしていない。前述したように、石丸は都議選を、ひたすら自己実現のツールとしか思っていない。教祖・石丸のブランディングをしたいだけである。だから、石丸自身はこの新党の、選挙の結果やその後の都政に与える影響について、自分ではいっさい責任を取る気がない。

 例えば、都議選で新党が何議席取ろうが、彼は大上段に構えてマウントを取ろうとしても、自分自身の責任はいっさい口にしない。「だって、最初から議席の目標なんて言ってないですよね」「政策はないって言いましたよね」とか、例によって石丸構文でお茶を濁す。石丸新党は全選挙区で候補者を擁立する方針だが、全選挙区で当選させようなんて、会見では一言も言っていない。候補者はこれから公募するから、全選挙区から候補者が応募してくれるかどうかもわからない。

 石丸は、未来に責任が持てるほどの大物ではない。そういう自覚すらない。あくまで、〝神〟としての石丸伸二を、〝無垢の信者〟たちにアピールしたいだけだ。

 政策がなくても、都議選はたたかえる。

 例えば、鈴木俊一時代の1993年の都議選で、後に首相になる細川護熙率いる日本新党が、都議選初挑戦で20議席を獲得している。当時の争点が何だったか、覚えている人はいるだろうか。「冷戦終結」「55年体制の打破」である。「保守か革新か」という戦後の対立軸が「終わった」と言われ、「非自民連立政権」の樹立が一つのテーゼになっていた。

 都政の争点など、どこにもなかったのだ。

 当時の日本新党の当選者には、後の杉並区長・田中良もいる。立憲民主党の手塚仁雄もいる。後に自民党入りした超右派の古賀俊昭もいる。これだけ並べても、日本新党が都政に残したものなんて、なーんにもない。

 1989年の都議選では、社会党が29議席を獲得して大躍進したが、鈴木都政の与党入りし、存在価値を失って、4年後には半減。ご存じの通り、後継の社民党は都議選で議席を獲得できていない。当時の争点は、消費税導入の是非。自民党はこのとき単独過半数を割り、以来公明党の議席がなければ過半数を確保できていない。

 都議選で都政が争点になることは、ほとんどない。常に国政の前哨戦として各党が位置付け、時の政権の勢いが、そのまま自民党の議席数に反映される。

 つまり、都議選において都政の政策など意味がない。

 今回の都議選も、各党はひたすら裏金問題を追及するだけでいい。しかも、都議会自民党までもが裏金に蝕まれていたのだから、自民党の逃げ道はない。

 果たして、小池都政の政策など争点になり得るだろうか。

 石丸新党が、候補者に政策を委ねるというのは、これまでの都議選の歴史を振り返れば、不思議ではないのだ(石丸を褒めてはいない)。

 おそらく、このままだと石丸新党は20議席前後は獲得するだろう。そして、都議選が終われば霧散する。忘れられる。

石丸本人が意識するかしないかにかかわらず、石丸新党とは、自民党公認漏れの救済策にしかならない

 自民党は、都議会自民党の裏金問題が浮上したことで、いよいよ追い詰められている。放置しておけば、20議席を割り込むほどの歴史的敗北を喫してもおかしくない。まともな自民党都議なら、自覚しているはずだ。一部都議が今さら、マスメディアの報じ方云々を論じているが、議席が減ることはあっても、増えることはない。

石破茂首相は17日、東京都議会自民党の政治団体の裏金疑惑で会計担当者が立件されたことを巡り「私の知る限り、他の道府県では似たような件はない」と官邸で記者団に述べた。併せて「自民党総裁としておわびする。『党本部は関係ない』ということがないようにしなければならない」と語った。
夏の参院選や都議選を見据え、真相究明に努めることが党の信頼回復につながると強調。今後について「森山裕幹事長らとよく相談し、適切に対応する」とした。

https://www.sanspo.com/article/20250117-KPE6ISV4VRPVJAGFFAVZTHPY5Q/

 昨年の衆院選で、裏金議員を非公認とした経過からして、今回も自民党は同じ対応をせざるを得ないのではないか。

 そもそも、裏金問題がなかったとしても、今回の都議選は候補者を絞り込まざるを得ない。自民党に公認しても、公認してもらえない候補者がたくさんいる。加えて、裏金問題で公認漏れとなった候補者もいれば、実際の都議選の自民党公認候補者はかなり少なくなるのではないか。

 しかも、石丸は新党との二重党籍を認めている。

 自民党の党籍を持ちながらも、公認から漏れた候補者を石丸新党で公認してもいい。

 つまり、石丸新党が〝隠れ自民党〟として機能する。

 これは石丸伸二本人は意識していないだろう。

 石丸にとって、新党の候補者とはビジネスパーソンでしかない。自分をより高くブランディングできる候補者なら、自民党の裏金問題など関係ないのだ。政策は本人次第。かつての日本新党と同様、都政とは関係ないアジェンダを掲げて、好き放題、言いたい放題である。

 要するに、石丸新党の候補者とは、石丸の動画をたくさん回してくれる人であればいい。

 裏金問題という十字架を背負った候補者が、そこから都議選で立ち直り、躍進する。そういうストーリーに、〝無垢の信者〟が大量に群がる。そして、動画が回る。

 考えただけで、ゾッとする。

竹内英明兵庫県議の逝去にお悔やみ申し上げます

 この記事を書いている途中で、驚くニュースが入ってきた。

 所属していた会派「ひょうご県民連合」によると、竹内氏は辞職前、斎藤元彦氏を応援する目的で知事選に立候補した政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が、SNS上で、竹内氏の自宅に行くと予告したことなどで「家族の生活が脅かされる恐れが生じた」と説明していた。辞職後も誹謗中傷が続いていたという。

https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202501/0018557392.shtml

 立花孝志はいまだにXで、まるで死者を蹴るような言動を繰り返している。鬼畜そのものである。

 絶望的なことを言って申し訳ないが、これから世間はこういう、被害者を加害者扱いして、死に追いやる潮流が増えると思う。申し訳ないが、止められない。

 このnoteには、斎藤元彦を擁護する〝無垢の信者〟は覗かないだろうが、自覚している人は、今からでも遅くないから、Xを放棄して、政治から距離を置いてほしい。市民にとって、政治は身近なものであってほしいと思うが、残念ながら兵庫県政はもう、普通の人がかかわっていいものではなくなっている。いつの間にか自分が加害者になっている。

 斎藤元彦を擁護する人たちを眺めてみてほいい。死者にどう向き合っているだろうか。彼らは、嘲笑と冷笑に満ち溢れていないだろうか。

 もう、かなり手遅れだが、それでも今、Xから遠ざかることは、精一杯の誠意だと思う。

 斎藤県政は、地獄の穴が空いている状態だ。さまざまな人が〝死〟の世界に吸い込まれる。

 今、違和感に気づいたなら、まだ間に合う。当たり前の日常を、当たり前の毎日を過ごしてほしい。そして、斎藤知事を擁護する人たちとは距離を置いて、平和な日々を過ごしてほしいと思う。


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森地 明
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