もしも2022年に小池辞任なら都知事選の候補者として名前が挙がりそうな顔触れを妄想してみる
前回、私は小池都知事が任期途中で辞任する可能性は五分五分だと書いた。所詮は神奈川県民の憶測でしかないが、その可能性をゼロだと言える人はかなり幸せ者だ。
少なくとも2016年に舛添知事が辞任するまで、小池百合子氏が都知事選に立候補するとはだれも思っていなかった。都知事選は名前が挙がった時点が人気のピークである。だから、告示直前に出馬表明する後出しじゃんけんが流行る。いかに政策論争せずに、ネームバリューと空気だけで勝ち抜けるのか。そこにかかっている。
仮に、12月に小池知事が何らかの理由で辞職を表明し、年明けに都知事選が行われると仮定してみよう。私が勝手にタイミングを設定した、あくまで仮定である。
都知事選は新人同士の争いになる。
候補者としてどんな名前が挙がるのかを考えてみよう。これは、この人が相応しいと言っているのではなく、片っ端から名前をピックアップしているだけだ。
《小池都知事の後継》
小池都知事はおそらく自分の後継候補を指名する。都議会にはまだ「都民ファーストの会」が存在するから、公約を実現する候補を立てて、現都政の路線を継承させるのではないだろうか。
荒木千陽(都議会議員、都民ファーストの会代表)
知名度は低いが、小池都知事が衆院議員時代に公設第一秘書を務めている。小池氏は彼女が可愛くて仕方ないだろう。定数3の中野区で都議を続けられるとも思わない。勝ち負けは別にして、次のステップに進むチャンスではないか。
野田聖子(衆院議員、元総務相)
自民党総裁選にも立候補した。ならば「初の女性総理」を目指すのではないかと思うかもしれないが、おそらく何度チャレンジしても無理だろう。岐阜1区選出だが、東京での知名度は高い。小池氏による新党設立と合わせて、都知事を盟友・野田氏に託すというのはいかがだろうか。
《自民党系「勝てる候補」》
自民党都連は今回も情勢調査を行って、「勝てる候補」の擁立に動くだろう。
松岡修造(元プロテニスプレーヤー、スポーツキャスター)
知名度は文句なし。人格的にも問題ない。2020年都知事選でも名前が挙がったが、結局、自民党は候補を擁立できなかった。ただし、都知事として相応しいかどうかは検証が必要だ。主な仕事は、東京五輪の敗戦処理である。本人にその自覚があればいいのだが。
橋本聖子(参院議員、東京五輪組織委員会会長)
知名度が高く、「女性知事」というイメージも引き継げる。ただし、東京五輪で組織委員会のトップにいた人物が都庁に乗り込んで、東京五輪の敗戦処理をすると想像すると、ゾッとする。実態を理解しているからこそ、膿を出し切るのか、それともお花畑の検証で済ますのか。
松岡氏が出れば圧勝するだろうが、問題は〝文春砲〟だと思う。事前の身体検査が必要だ。
《自民党系…勝てるかどうかは別として》
自民党が「勝てる候補」を擁立できなければ、どこかで妥協するしかない。まさか都知事選に自民党が候補を立てないなどということはあり得ないだろう。負けてもいいから、泥をかぶっていただく。
増田寛也(元岩手県知事)
2016年都知事選で小池氏に惜敗した。勝てるだけの得票数は得ていたが、いかんせん小池旋風に吹き飛ばされた感じ。
丸川珠代(参院議員、元五輪担当相)
「女性知事」として人気は集めそうだが、彼女自身に都知事になるだけの物語が欠けている。要するに、タレント候補でしかない。
石原伸晃(元衆院議員、石原家の長男)
衆院東京8区で惨敗し、浪人中。石原都政の再興をかけてチャレンジすれば話題は集めるだろう。
長島昭久(衆院議員)
衆院東京18区で菅直人に敗れたものの比例復活。同選挙区で勝てることは一生ないと思うので、首長を狙うのはアリだと思う。右翼的なイメージがあるが、民主党出身ということもあり、意外にバランス感覚は良い。
川松真一朗(都議会議員)
勝てはしないが、都政で政策論戦できる数少ない政治家だろう。少なくとも都知事選が面白くはなる。
澤章(元都職員)
都政新報社から暴露本を出版して、天下り先の3セクを首になった。文春や日刊ゲンダイなどでも活躍している。反小池の急先鋒として面白い政策論戦を見せてくれそう。
《維新系候補》
維新の会の強さは首長を獲り、実績をつくり、それを基に支持を広げていくことだ。東京での維新の弱さは、ひとえに東京で首長を獲れないからだ。いつまでも大阪の話をしている。大阪府に続いて、東京都で知事の椅子を奪取することは、維新にとって大きな武器になるだろう。
橋下徹(元大阪府知事、元大阪市長)
最近は都知事選のたびに名前が挙がる。確かに知名度も人気もあるが、これまでの都知事選で他道府県の知事経験者が勝ったことは一度もない。都民は田舎侍には冷たい。大阪での成功体験を都政に持ち込むと100%失敗することは、小池都政1期目を見れば明らかである。
東国原英夫(元宮崎県知事、タレント)
本人にその気があるなら、維新は乗るだろう。10年前に都知事選で善戦しているだけに、出れば怖い候補。
音喜多駿(参院議員)
小池都政実現の立役者であり、そのことを贖罪した若手政治家。北区長選にチャレンジした経験も持つ。参院議員の任期がまだ半分以上残っているが、一つの椅子に安住できるほどのタマでもない。都政混乱の責任を取って、都知事として本来の改革に取り組んではいかがか。
《国政野党系候補》
衆院選で立憲民主党がポンコツだったため「野党共闘」という枠組みが次の都知事選まで続いているのか分からないが、現状では立憲民主や国民民主が単独で候補者を出せるとも思えない。結果として、野党共闘っぽい選挙にならざるを得ないのではないか。
宇都宮健児(弁護士)
まだまだ元気なので、都知事選となればお出ましになるだろう。野党共闘の枠組みがどうなろうと、立候補はするので、野党はそういう前提で候補者選びをしなければならない。政党の推薦はなくても、60~70万票は獲ってしまうのではないか。
山本太郎(衆院議員)
2020年都知事選にも立候補している。れいわ新選組の東京比例選出だから、山本氏が衆院議員を辞職しても、議席は失わない。都知事選で勝てるとは思えないが、彼を支持する都民は崇拝しているので、本人が否定しなければ、おそらく名前が挙がるだろう。
蓮舫(参院議員)
都知事選のたびに名前が挙がり、消える。参院東京選挙区では200万票を獲るので、分からないでもない。一つ言えることは、蓮舫氏は「野党」をやっているときが一番かっこいいのだと思う。
前川喜平(元文科官僚)
なぜか分からないが、リベラル・左派の方々に絶大な人気を誇る。その一方で、その手の方々にしか人気がない。「野党共闘」で出るなら大きな支持を集めるだろうが、勝てるような気がするだけで「勝てる候補」ではない。
保坂展人(世田谷区長)
2011年に初当選し、現在3期目。世田谷区内では絶大な人気を誇る。次の区長選は2023年で、4選を目指すのかどうか気になるところ。勝てるかどうかは別として、リベラル勢力が推すのであれば悪い選択肢ではない。
《個人的に出てきたら面白いと思う候補》
都知事選はこの四半世紀、党派を超えた人気投票だったと言える(良くも悪くも…)。多くの道府県が自民党が擁立した知事にもかかわらず、東京都政において一貫して自民党が相思相愛の候補者に巡り会えていないのは、そのためである。
言ってみれば、何でもありなのが都知事選。
そこで、個人的に名前が上がれば面白いと思う候補者をピックアップしておきたい。
(支持しているという意味ではないので、誤解なきよう…)
柿沢未途(衆院議員)
お父さんは1999年都知事選に立候補した柿沢弘治氏。元々自民党から出馬の打診があったにもかかわらず、現職の不出馬で自民党が方針転換し、別の候補を擁立。反発した柿沢氏が強行出馬した。あえなく落選。自民党から除名された。しかし、翌年の衆院選では東京15区から無所属で立候補し、当選した。奇しくも2021年衆院選で未途さんが無所属で東京15区に立候補して、当選し、自民党の追加公認を得た。
柿沢氏は都議会議員の経験も持つ。酒気帯び運転で自損事故を起こし、辞職してしまったが、都政の経験を持っているところが強み。
親子2代での都知事選挑戦は、大きな注目を浴びるはず。
乙武洋匡(作家)
『五体不満足』でお馴染みの乙武氏。一時、自民党から国政にチャレンジする予定だったが、スキャンダルで挫折した。乙武氏は障害者だが、私は障害者が都知事になったからといって障害者福祉が進展するとは少しも思っていない。それより、かつて自民党からの打診があったという点と、スキャンダルにより汚れた側面が見えているという点で、きれいごとだけでは済まない都政を預かる気概はあるのだと思っている。
松田公太(元参院議員)
横浜市長選で一時名前が挙がったが、元々は東京都選出の参院議員だ。みんなの党公認で当選したが、とことん国会議員らしくない風貌だった。参院選前に候補者アンケートを行ったら、築地市場の移転に「反対」と答えていて、驚いたことがある。みんなの党が瓦解して、2期目の出馬を断念していた。こういう実業家が都政を司ると面白いと思う。
池内沙織(元衆院議員)
衆院東京12区で共産党公認候補として毎回善戦している。野党共闘が決裂し、共産党単独推薦候補として擁立するなら面白いかもしれない。共産党単独推薦の都知事候補と言えば、吉田万三氏、小池晃氏の例があるが、いずれもコテコテの共産党というイメージ。池内氏なら党派を超えて、都知事選を〝炎上〟させることができる。火だるまになって、都知事選を面白くしてほしい。