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反岸田の空気を軽々と乙武洋匡に奪われた立憲民主党~衆院東京15区補選

 ね、先月書いた通りになってきたでしょ。

 そのうえで、である。

自民、公明、ファーストの野合共闘

 『五体不満足』の…いや、作家と及びしたほうがいいのかな、乙武洋匡さんが政治家を目指しているのは、例の文春のスキャンダルが炸裂した当時からわかっていたことだ。だから、ここで名前が出るのは不思議ではない。ただ、彼ほどのネームバリューがあれば都知事選狙いなのかと思っていた。

 よもや、東京の片隅の補選だとは、世の中はなかなか見通せないものである。

 東京15区補選は、公職選挙法違反事件で起訴された柿沢未途前法務副大臣(自民党を離党)の議員辞職に伴い行われる。裏金問題の逆風に苦しむ自民が公募に踏み切れない事態に追い込まれており、都ファと自公が連携して候補擁立する案が以前から浮かんでいた。小池知事は、自民や公明などへの支援要請について聞かれると「広くご支援いただけるところにお願いする」と述べた。また、関係者によると国民民主とも連携する方向で調整しているという。

東京新聞2024年3月29日

 前回、私が書いた通り、衆院東京15区は事実上、自公ファの3党連合となることは間違いないし、別件で候補を引っ込めた国民民主党も組むことになるだろう。しかも、乙武さんはファーストの会副代表というから、これはもう、小池チルドレン(チルドレンと呼ぶにはおっさん過ぎるが…)と言っていい。自民党が推薦や支持を出すかどうかわからないが、実質的には支援することになるだろう。

 これは都知事選とのバーターで、小池閣下ご本人が3選出馬する都知事選では、これまで袂を分かってきた自民党も事実上支援に回ることは決まったも同然だ。

 東京新聞が興味深い記事を出していた。

-小池氏自身が東京15区補選に出る可能性も取り沙汰されていたが、これでなくなり、小池氏は7月の都知事選で3選を目指す公算が大きくなった。
「自民党都連から小池さんに対抗馬を立てるような動きはゼロだ。ぶつけ合うようなタマがいない。私がやりましょうという人もいない。以前のように、激しく戦ってたたき落とせというような場面は完全になくなった。小池さんもずいぶん変わって、自民党寄りになってきた。小池さんがそのまま出るならば、自民党としては別に『反小池』の候補者を立てる必要はない。『不戦』だろう。不戦敗じゃない。勝ちでも負けでもないということだ」
-小池氏は自民党を離党して地域政党「都民ファーストの会」を設立し、都議会で自民党と対立してきた経緯がある。自民党都連と小池氏は仲直りしたのか。
「小池さんの身勝手さには、みんな心の中にしこりが残っている。それでも何となく関係は修復されつつあるように感じる。そもそも(自民党時代には)同じ意見でやってきた。彼女は都連の副会長もやっていて、当時はみんな仲間だった」

東京新聞2024年3月30日

 都連最高顧問を務める深谷隆司元衆院議員が、東京15区に絡めて都知事選にも言及している。小池閣下が3選出馬するなら、「反小池」の候補者を立てる必要はないと言っている。そもそも4年前、2020年の都知事選で自民党は不戦敗しているので、候補者を立てないことは不思議ではない。しかし、今回は前回の不戦敗とはかなりベクトルが異なる。深谷氏は「勝ちでも負けでもない」と、不戦敗を否定している。実質的な与党入りと言っていいし、いざ選挙が始まれば、おこぼれをもらおうと小池閣下を支援する自民議員や地域もあるのではないか。

小池閣下は国政に転身する

 ここからは私の妄想の世界に入ってしまうが、小池閣下は都知事選の前に解散総選挙があれば(6月解散説もある)、堂々と国政に転身するだろう。問題は、都知事選の後に解散総選挙があった場合だ。

 当然、小池閣下は都知事の椅子を投げ出して、総選挙に打って出る。

 そもそも、そういう馬鹿げた辞任劇は、すでに石原慎太郎で経験済みである(2011年の4選出馬と2012年の辞任)。都民はすっかり慣れているのだ。

 大義はあるのか?

 そんなものはないが、小池閣下が「左翼(立民・共産・社民)に政権を渡すな!」とでも叫べば、ネトウヨたちは大喜びするのではないか。実際にはもっと、オブラートに包んだ〝百合子節〟で、同じようなフレーズを繰り出すのであろう。いつか、「排除」という言葉を使ったように。

 いったん流れができたとき、立憲民主党の議員たちはどうするだろうか。都議会では立民は一応、野党的立場でがんばっているが、いざ、自分たちの乗っている船が泥船だとわかれば逃げ出す議員は多いのではないか。

 次の衆院小選挙区はおそらく、四つの潮流がぶつかる選挙になる。

①自民党・公明党
②ファーストの会+国民民主党
③日本維新の会
④立憲民主党+日本共産党+社民党(+れいわ)

 当然だが、この場合、維新は小池旋風に吹き飛ばされる。生き残ろうとすれば、小池閣下と組んで選挙区調整するか、比例区のたたかいに特化するしかない。選挙後は政権入りして、自民党安倍派に飲み込まれて、関西以外は霧散するのではないか。

このままでは野党共闘は瓦解する

 こうなると、野党共闘は瓦解する。一からやり直しだ。

 そんなことを言うと、多くの人が憤慨するだろう。だが、オイラの妄想どおりにいけば、こういう世界線があることを、ちゃんと自覚しているだろうか。衆院東京15区補選は、それほど重要な選挙なのだ。乙武さんに負けるわけにはいかない。

 ところが、である。

 衆院東京15区補選(4月16日告示)で、立憲民主党は元江東区議で新人の酒井菜摘氏(37)を擁立する方向で最終調整に入った。酒井氏は江東区議を2期務め、昨年12月の江東区長選に出馬し次点で落選していた。15区補選では共産新人の小堤東氏(34)も立候補表明をしており、両党の間で調整が図られる可能性がある。

東京新聞2024年3月29日

 立憲民主党はなんと、区長選の落選候補を引っ張り出してきた。

 こうも簡単に、反岸田の空気を小池閣下に持っていかれるものなのかと天を仰ぐしかない。

 衆院東京15区補選の対決構図は、そのまま都知事選にも持ち込まれる。そして、解散総選挙でも同じ対決構図が展開される。

初の女性総理は翼賛内閣

 いまは、報道各社が世論調査を行っても、ポスト岸田には小池百合子の名前はない。石破茂、河野太郎、小泉進次郎といった、いつもの顔ぶれにプラスして、最近は上川陽子の名前も出るようになった。これは小池閣下の国政進出などないという展望からそうなっているが、これからは名前が上がってもおかしくない。小池百合子の名前を入れたアンケートをすれば、果たしてどのくらいの支持を得るのだろうか。

 だが、健全な皆さんはお分かりだと思う。

 小池百合子閣下が組閣する内閣は、決して自民党に代わる内閣ではない。それどころか、自民党、公明党、ファーストの会、国民民主党の4党連合政権である。場合によってはそこに維新も入る。つまり、1980年代の地方自治体に広がった「オール与党」と同じ、翼賛内閣にほかならない。

 初の女性総理として国民からの絶大な支持率を引っさげ、自民党が口だけで実現しなかった憲法改正も、あっという間に……

 いや、そこから先は、よしておこう。


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