田中健太郎・地点
一人寡黙に歩いているサイ。
今にもこちらに向かってきそうなトラ。
どの動物たちも、生命感と躍動感をにじませながら、健太郎さんの、穏やかな柔らかさと、芯のあるストロングスタイルの両方が混ざりあった温かい人柄が感じられるタッチ。
どの作品も、どの個展も、見る度に、会う度に度肝を抜かれる。
いつもこの筆遣いを見て、彼がどんな思いで向き合ったのか、何を経て、このアウトプットに至ったのかに考えをめぐらせる。
この数年自分なりに見続けて、同じ時間を過ごしたり、会話を続けているアーティストの一人。
作品を通して、作り手と関わるのと同時に、自分で自分を振り返るきっかけにもなる。
作品を見るのも楽しみなのと同じくらい、友達として(と先輩をつかまえて言うには申し訳ないが)、お互いのキャッチアップをするのが、自分にとってはとても有意義な時間だ。
作品づくりで感じてきたこと、込めた思い、浮かんだ言葉と、自分の中にある言葉や経験を重ねあわせていく。
形になった時点で、作者はすでにもっと先に進んでいると思うけど、彼のその時の地点であり、それ見て、立ち返る自分の今の「地点」。
自分が、彼からもらった言葉、作品を見て感じた感覚が、明日からの生き方のどこかの血肉になるように、僕と重ねた時間がまた、次の作品の何かにつながっていれば嬉しい。
そんな、感覚の結実を感じるから、僕はまた健太郎さんの絵を楽しみにしているのかもしれない。
展示は21日までです。
お見逃しなく。