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定年後、高齢者の就業


1. 高齢者の就業状況

 世界の主たる国々のなかでもその割合はトップクラスとなっているとのことです。この社会変化のなかで、高齢者の就業も維持されている状況です。実際、65歳以上の就業者数は、20年連続で増加し900万人を超えてきているということです。これにより、就業者総数に占める65歳以上の就業者の割合は、13.5%まで増加しているそうです。この様に、働くことの好きな日本人の65歳以上の就業率は、主要国の中でも高い水準になっていることも分かります。下図は、内閣府の令和6年高齢社会白書(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/html/zenbun/s1_2_1.html)のデータを用いて、各年齢層の就業者割合の年毎の推移を示しました。65~69歳の就業率は、すでに50%を超えており、70~74歳の年齢層でも35%へ迫るレベルまで就業率が上がってきています。

年齢別就業率推移

 日本では、人不足を理由に、定年後高齢者の就業が叫ばれ、高齢者の就業も社会の強い要請となっていることもあり、急激に定年後の高齢者の就業率が向上していることが分かります。これを後押しする大きな施策として、会社員の定年は、60歳から形式上引き上げられ、65歳までは継続雇用義務が課せられており、更に、70歳までの雇用目標まで設定されました。内閣府の令和6年高齢社会白書によりますと、従業員21人以上の企業23万7,006社のうち、高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の割合は99.9%(23万6,815社)となっており、65歳までの社員が引き続き同じ会社で就業できる道は整っていると思われます。一方で、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は29.7%(7万443社)に留まっており、従業員301人以上の企業では22.8%と低く、社会要請の70歳までの就業に対して、会社制度は、十分に答えていないことが分かります。要するに、会社組織は、基本的に65歳以上の高齢者の就業を良くは思っていないのであると考えられます。一般的に、定年前に役職定年を設けている会社が多く、役職の席を後輩に空けることにより、組織膠着の状態を回避しています。相当優秀な年配者であったとしても、組織の活性化の名の下に、それまでと同じ立場と役割を与えられることは、まず、無いと理解しています。反対に時には、「老害」と揶揄されることもあるでしょうし、後輩の指揮の下に、定年後の会社生活を送ることは、精神衛生的にも宜しくないと思われます。
 それでは、定年後の労働者の業種、労働形態は、どうなっているのでしょうか? これも内閣府の令和6年高齢社会白書のデータを利用して調べてみました。まず、定年後の労働者の業種毎の就業者人口を下記に示します。

高齢者の就業している業種

 平成25年に比べ令和5年の65歳以上の就業者は、1.5倍程度に増加していますが、就業者の増加を牽引しているのは、「建設業」、「卸売業,小売業」、「医療、福祉」及び「サービス業」であることが分かります。この増加の顕著な領域は、正に人材が足りないという分野であり、ハローワーク等での求人案件の多い、「建設作業」、「販売員、配送」、「介護」、「飲食、タクシー運転者」等ではないかと予想されます。

2. 高齢者の雇用形態

 次に、高齢者の雇用形態は、年齢を重ねることによりどの様に変化するのでしょうか? これも内閣府の令和6年高齢社会白書のデータから、就業の形態をまとめてみました。上が男性、次が女性の就業形態となります。

就業形態(男性)
就業形態(女性)

 男性の場合、非正規の職員・従業員の比率は、55~59歳で低く1割であるものの、60~64歳では4割程度、65~69歳で7割と、60歳を超えると大幅に上昇していることが分かります。また、女性の場合も、55~59歳で6割に収まっているものが、60~64歳で7割、65~69歳で8割と、年齢とともに非正規雇用の就業形態に傾くことが分かります。要するに、定年後は、男性では「パート」、「アルバイト」、「契約」、「嘱託」の就業形態となり、女性の場合、もともと多くを占めていた「パート」の雇用形態が大部分を占める様子が分かります。
 この様に、定年後の労働者の業種の状況と雇用形態のデータから、定年後の高齢者は、「パート」、「アルバイト」として「建設作業者」、「商店および飲食店の店員」、「介護職員」、「トラックやタクシー運転手」として就業していることが予想されます。実際には、もっと突っ込んだ調査が必要であると思いますが、定年後の高齢者の働く場所は、高い専門性が発揮できる就業ではなく、時給制により対価を貰うような職業である場合が多くを占めるものと考えられます。

3.定年後に有効なアクション

  実際に、私が、自身で就職の可能性をネットで調べたところ、高齢者が定年後の就業で、それまで身に着けてきた高い経験や専門性を発揮するためには、次のような条件が必要と感じました。①大きな会社での取締役や役員を経験するか? 少なくとも工場長以上の役職の経験を有する。②IT関係の資格もしくは実務能力、看護師、理学療法士、中小企業診断士、ファイナンシャルプランナー、マンション管理士、不動産鑑定士、危険物取扱者、電気工事士、公認会計士、技術士等の気宇な資格を有している。③業界でのゆり動かない注目と実績を有しているか、同じ業界での顧客の会社での経験を発揮出来る販売元への就業。以上に占めましたケースの、どれかもしくは複数の条件がある場合に、高い専門性を発揮できる就業が可能となると思っております。この考えは間違っているかもしれませんし、あくまでも何も資格のない私のやっかみかもしれません。特に、技術畑のみを歩いてきた私の場合、非常に難関である技術士を退職前にトライする必要があったと反省しています。また、それらの資格や経験を活かすためには、個人事業主としての活動と覚悟が必要と感じている次第です。

4.私のケース

 さて、恥を忍んで私の定年後の状況をお話しさせて頂きます。プロフィールでも触れさせていただいておりますが、長年、半導体製造会社に勤務してきましたが、定年を迎える数年前に役職定年を申し付けられました。これにより、組織の長としての役割を退き、当然、部下無しの状態となりました。当時、それでも全社の改善プロジェクト幹事を担っていましたことから、会社生活におけるやり甲斐を失うことはありませんでした。片方で、管理職としての責務から放たれたことは、精神衛生上、プラスに働いたと思いますが、立場上、元部下が上司になった点は、これは少なからずマイナス方向へと働くこととなっていました。この状態を数年維持しており、加えて、給与面でも文句ない状況でしたので、改善プロジェクト運営に注力していました。そんな中、このプロジェクトをともに司っていた会社役員を含めた上役が一斉に定年を迎え、退社するという話を受け、加えて、何回目かの早期退職制度の実施が決定されたことから、60歳定年を迎える数ケ月前に退社を決意することになりました。
 退職の決意とともに転職先を探し始めました。この機会に、世の中の著名な転職エージェントに登録し、実際にエージェントとの面談を行ったのですが、それまでの半導体製造技術としての経験や、全社改善プロジェクトの幹事としての成果をアピールしても、職種や給与、加えて勤務地に関し、希望を満足できるようなものは全然見つかりませんでした。少し譲歩して応募を試みても、ほぼ門前払いでした。例えば、中国勤務等を受け入れれば、少しは道が開けたのかも知れません。退職の期日も迫って来たことから、本当に困っていたところ、もう数十年のお付き合いのあった半導体デバイスの製造装置メーカーから受けたプレゼンで、当時携わっていた全社改善プロジェクトに係るようなアクティビティが紹介され、ここでこれまでの経験が活かせるのではないかということが頭によぎり、恥を忍んで、その会社で存じ上げていた役員の方に、自身の採用をねじ込んだ次第です。即ち、上節で述べさせていただいた③の業界でのゆり動かない注目と実績を有しているか、同じ業界での顧客である会社での経験を発揮出来る販売元への就業をお願いしたことになります。その会社では、心広く、私のわがままを受け入れて頂き、数年間、希望の開発プロジェクトに従事させて頂きましたことは、会社員生活の最後の幸せな経験となりました。その数年間で、身に着けてきた経験を披露させて頂き、もう伝授する内容が枯渇してしまったとの考えから、65歳ちょっと前に、満円退社させて頂きました。これにて、40年の同じ業界での会社員生活を終了、完全に卒業させて頂きました。
 その後は、ハローワークのWeb版で再就職先のリサーチは行いましたが、これまでの経験を活かすことができるような職場は殆ど皆無で、市の短期任用臨時職員への応募もトライしましたが、こちらは門前払いということから、地域のボランティア活動に身を投じさせて頂いている現状です。

5.まとめ

 定年の年齢が延長方向に動いている現状で、将来の状況が描き難い現状ではありますが、年を重ねる毎に、業務の幅や役割の重みが減る方向であることと、収入も同時に減少することを念頭に、定年後に迎えるべき姿をもち、その時々ですべき行動を考える必要があると思います。私はもう間に合いませんが、これから定年を迎える方々におかれましては、準備怠りないようにご忠告申し上げます。

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