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レポート『日刊工業新聞社主催のスマートファクトリーJapan 2024』

 2024年2月20日から22日まで東京ビッグサイトで開催された日刊工業新聞社主催のスマートファクトリーJapan 2024に行ってきました。製造現場のスマートファクトリーを実現するうえで欠かすことのできない情報管理・処理システムをはじめ、製造設備・装置、その他、生産工場に関する技術・製品に関しての企業が86社参加している様でした。オンラインでも開催されており、2024年2月14日から29日までアクセス可能な様です。
 展示会最終日の2月22日に会場に出向き、開催された講演会 日本ストラステクノロジー株式会社 事業開発部 部長 香月さんによる『製造業DXの基盤を支える“止まらない”エッジコンピューティング~導入例から見る勘所~』を聴講しました。私は知りませんでしたが、Stratus Technologies(ストラタステクノロジー)は、アメリカ合衆国の企業で、2018年頃から、今回紹介されたztC Edgeを展開している様です。このztC Edgeは、エッジ環境向けに設計されたゼロタッチで安全な高度に自動化されたエッジコンピューティングプラットフォームだそうです。同システムは、堅牢で小型のコンピューターで、アプリの導入・管理・保守が簡単で、時間と労力を節約可能だそうです。また、2台で一対の構成で、自己保護機能と自己監視機能により、計画外のダウンタイムを大幅に削減し、ビジネスクリティカルなアプリケーションの24時間365日の高可用性を実現しているそうです。また、リモートアプリケーション管理、迅速で効率的なマルチサイトの展開、そして重要なビジネスオペレーションやアプリケーションの高可用性を実現するような設計で、エッジコンピューティングの課題を解決し、これによりビジネスクリティカルなアプリケーションの高可用性を実現するための強力なプラットフォームを提供できるとしていましたす。
https://www.stratus.com/jp/solutions/platforms/ztc-edge/
講演では、可用性と信頼性が確保されていれば、現場設置のエッジコンピュータでの製造装置の制御があってもいいのではないかとしていました。当然、製造現場のDXのアプローチは、現場データの収集、データの可視化+分析/共有によるデジタル化省人/自動化/効率化ということでありますが、ztC Edgeの導入では、エッジでのこれら推進も可能であるし、中央制御機構やクラウドとの接続によるよりグローバルな運用構成を構築することも可能出るとしていました。但し、一番重要なことは、エッジコンピュータの可用性で、ztC Edgeでは、2台を並行運用する冗長構成を取っており、常にミラーリングすることにより、片方が故障した場合でも、即座にバックアップ可能であるとのこと。また、故障機器も予備機との交換が、イントラネット端子コードの2本を付け替えることにより即座に、バクアップ体制の再構築が可能としていました。要するに、ITエンジニアによる複雑な設定変更が不要で、最終的には、停止時間がないということによりロスカットが出来る点と、上記のITエンジニアが不要という固定費の削減で、十分導入価値があるとしていました。
 講演を聞いた私自身の結論として、現場に導入するエッジコンピュータの有力な候補であることは間違いがないと感じられました。また、大きさはB4サイズであり、冷却ファンが無いということで、半導体製造ラインの様なクリーンルームでの設置も問題ない装置で、この点でも有利であると判断しました。但し、現場でのやりたい内容に関して、ソフト容量、扱いたいデータ量、そして処理速度から、コンピューター能力の精査が必要であることには間違いがありません。
 会場で、最も大きなブースを運営していたのがSORACOMでした。SORACOMは、通信プラットフォーム「SORACOM」を提供し、専用SIMを用いた通信によりとクラウドを融合し、IoT/M2Mに最適化された通信をリーズナブルかつセキュアに提供しています。また、そのビジネスは、世界140の国に展開されている様です。今回お話をお聞きしたのは、Amazon Monitronとのコラボレーション商品です。Amazon Monitronは、機械学習ベースのエンドツーエンドのモニタリングシステムで、振動・温度データをキャプチャする専用センサーと、データをAWSクラウドに自動的に転送するゲートウェイを提供しています。SORACOMは、クラウドへの通信手段を提供するのだそうですが、トータルのシステムの構築をお願い出来る様です。専用センサーは、消しゴム大で完成されており、モニター対象に置くだけで、データを収集出来るようになっている様です。このデータを分析し、理想的には機器の潜在的な障害の兆候を検出し、障害の発生の通知を可能とします。初期導入費用は、14万3千円とされており、月額料金330円からとなっていることから、ちょっとした製造ラインの駆動系を有する機械の監視には十分対応できるような内容になっていると考えられます。
https://soracom.jp/store/26949/
 次に注目は、ローカル5G導入です。通信速度は、Wifiと同程度でありますが、通信可能範囲で魅力があることから、大きなデータ活用が必要な製造現場でのローカル5Gは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための重要な技術だと考えます。このローカル5Gは、自社の敷地や建物内に独自に構築する5Gネットワークのことで、超高速、超低遅延、多数同時接続という特性を実現出来ます。これにより、製造現場での大容量の無線通信が可能となり、デジタル化の加速が期待されます。今回、NTTビジネスソリューションズからローカル5Gサービスが提案されていました。
https://www.nttbizsol.jp/service/local5g/
同社では、ローカル5Gサービスに必須の通信制御を司る「5Gコア」を同社のデータセンタに外だしして、トータルの必要経費を低く抑えていることだそうです。また、通信ネットワーク導入では、専門知識が無くても安心できるよう、事前手続き(無線局免許取得等)から構築、運用までサポートするということで、また、要望に合わせて、サブスクリプション型と一括支払い型の2つの料金プランを用意しており、初期費用202万円、月額35万円からの導入プランがある様です。これらの特徴により、NTTビジネスソリューションズのローカル5Gサービスは、お客さまのデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速と地域課題解決に貢献出来るとしています。
ローカル5G通信導入により、例えば、従来は生産設備につけたセンサーで数値データを取得し現場の状況を把握していた現状から、ドローンやAGVのカメラを利用した画像や映像も扱えるようになり、リアルな状況把握が可能となることが期待されます。また、ARグラスによる作業員支援では、遠隔からリアルタイムに適切な作業指示を行い、経験の浅い作業員でもハンズフリーで効率的に作業できるようになることも期待されます。以上のように、ローカル5Gの導入は、製造現場でのDX推進において、業務効率化や生産性向上を実現するための大きなステップアップに繋がる可能性があると思います。
 次に注目したのは、画像による製品出来栄え監視システムです。まず、図形エルミック社のFA Finderについて説明を聞いてきました。
https://www.elwsc.co.jp/app-package/
これは、映像とIoTデータ/機器の相互連携プラットフォームで、異なる形式のIoTデバイスやAI、ユーザーの既設の設備とカメラ映像を簡単に連携できるとしています。イベントをトリガーとして必要な情報をカメラで画像を取得します。この画像データを用い、製品の、もしくは製造装置の良不良を判定します。会場では、NECプラットフォーム社のラインカメラで、ベルトコンベアーで搬送される繊維製品の出来栄えを観察する装置が展示されていました。また、得られた画像データは、クロスコンパス社(https://www.cross-compass.com/)が生成した機械学習の判定プログラムにより良否判定するということでした。これにより、画像検査の適用範囲を拡大し、検査自動化の普及を進めることが期待されます。従来から、習熟者の人の目による良否判定を置き換えるもので、省人化だけでなく、習熟者の枯渇対策にも成りえるものと確信されました。話は脱線しますが、クロスコンパス社は、以前お付き合いのあった会社で、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するAIソリューションを提供しています。その中心的な製品である「MANUFACIA」は、生産ラインのデジタルトランスフォーメーションを推進し、製造業の課題を解決するAI生成ツールとして提供されています。即ち、異常検知・予知保全機能の診断プログラムを生成するもので、また、GPU不要のAIプログラムを提供できるので、非常に既存システムとの親和性が高いものです。
 次に、Adacotech社のお話をお聞きしました。同社が提供する外観検査AIは、画像解析技術の一つであるHLAC(Higher-order Local Auto Correlation; 高次局所自己相関)特徴量を活用した独自の異常検知AI技術を提供しています。
https://techblog.adacotech.co.jp/entry/Introduction-to-hlac
HLAC特徴量は、画像画素データのフィルター処理を行う要領で、近傍演算と画像総和演算といった単純な処理により計算された特徴量です。具体的には、対象となる画像領域内の位置における画素値の共起特徴を計算している様です。この様に得られたデータを用い、良品画像から正常モデルを定義し、その分布から大きく外れるような異なる形状特徴を持つ画像を異常として判定しています。特に、シートなどの表面検査(メッシュシート、メタルメッシュ、カーボンシート、皮目など)が得意の様で、こちらも繊維製品等の直線状に連続した製品が得意な様に思われます。また、演算が簡単であることからGPUが不要であり、既設の画像処理システムに適用も可能です。これにより、通常のPCベースの利用により、検査自動化の普及を進めることが期待されます。

まとめ
今回、スマートファクトリーJapan 2024で見聞きさせていただきましたが、一般の製造現場でのDX推進では、製造装置のセンサー管理のために、振動や温度をデータ化することが必要で、そのための手段が提供されており、また、製品の外観検査により、良否判定を自動化することで、習熟者の監視能力を自動化して、事業の継続と省人化を同時に達成できる可能性があることが分かりました。この様にして、装置稼働状況と製品の良否結果を照らし合わせることにより、品質の維持管理/向上も可能となることが期待されます。また、今回の展示会の数例ですが、そう大きな金額ではない投資で、小さな製造ラインでも、これらのスマートファクトリーが実現可能であることが分かりました。

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