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金鈴塚4 金銅製冠+装飾履

・金製の鈴が五つ出土した金鈴塚古墳

・19振りの装飾大刀が出土した金鈴塚

・4セットの装飾馬具が出土した金鈴塚

 5つの金製の鈴、19振りの装飾大刀、4セットの装飾馬具と煌びやかな出土品に加え、金色に彩られた金銅製の冠飾りと履物が出土しております。金鈴塚から出土しているのは、実は、金銅透彫金具であり、以下のようなものです。

金銅透彫金具

 私は、勝手に冠として扱っていますが、この形態では、冠であるのかは、明確でない様です。この金具は、2枚出土していますが、縦長の金銅を透かし彫りにして、唐草文や動物文などが描かれています。外縁には金銅鈴が一定間隔で配置される構造であり、写真にはありませんが、ぶら下げる歩揺も数個出土している様で、音を出す機能も持っていたと考えられています。表面も裏面も、鍍金(メッキ)が施され、これにより、装飾品としての美しさを際立させています。
 金銅透彫金具は、6世紀末から7世紀初頭にかけて作られたと考えられています。その形態は、それぞれ特徴違うものが出土していますが、金鈴塚から出土の金銅透彫金具は、その形態が、群馬県前橋市の金冠塚古墳で出土していますもの(下記文化財オンライン参照)と類似ているのではないかと感じております。これは、宝珠形冠と称されており、額に巻く帯から、頭部が宝珠形で「出」字形の装飾が特徴だそうです。似ていると申し上げているのは、金鈴塚の金銅透彫金具に頭に巻く部分があった場合(実際には特定されていない。)、縦に長い冠となることとなります。

 また、奈良の法隆寺付近に位置する藤ノ木古墳からは、頭の周囲を巻く帯も出土(下記文化財オンライン参照)され、それに取り付ける「立ち飾り」には、さまざまな歩揺や勾玉などが付けられる構造を有し、非常に神々しい外見となっています。個人的にですが、同じ雰囲気を感じてしまっています。

 藤ノ木古墳と言えば、奈良県生駒郡斑鳩町の法隆寺の西方約350メートルの位置にあり、その埋葬者は、確定されていませんが、ヤマト朝廷の中心に居たであろう主で、崇峻天皇説や欽明天皇の皇子、物部氏や蘇我氏、膳臣氏などの有力豪族の一員という説もあります。この様な高位な埋葬者であれば、荘厳な冠を所持していたということが理解できます。
 仮に、今回の金鈴塚の金銅透彫金具が、冠の一部であった場合、藤ノ木古墳と同レベルの荘厳さを有している様に感じられることから、金鈴塚の埋葬者の立場に思いを及ぼす分けです。
 この藤ノ木古墳からは、金銅製飾履(下記文化財オンライン参照)も出土されています。金メッキが施された銅製の履物で、非常に豪華な装飾が施されています。

 石棺内から大小2組の金銅製履が出土した様です。履は棺内の足元に立て掛けられており、葬送儀礼の後に置かれていたとされています。全体の形は、先が尖がった「船形」になっています。履は、全面に線刻と列点文によって六角形の亀甲繋ぎ文が刻まれ、円形や魚形の歩揺が、金銅製の針金で綴じ付けられています。亀甲繋ぎ文は、辺から辺を繋いでいくと無限に広がる文様で、古代の人々は、金属製品や宝石、ガラス玉などの輝きとともに、この無限の広がりに永遠の時を感じていた様です。朝鮮半島の当時の墳墓からも、金銅製履が出土されており、対象の品も朝鮮半島からの渡来品であるか? 少なくとも大きな影響を受けていると言えると思います。
 金鈴塚古墳からは、金銅製履が出土しています。金銅製履の日本出土例は、15例とされていますが、その1例が金鈴塚になります。復元品の写真を示しますが、靴の本体が魚鱗文であることが、藤ノ木古墳のものとは異なりますが、靴先の反り返りと歩揺が付けられている点では、非常に似た形状であると思います。藤ノ木古墳をはじめ、他の出土例は靴の本体が亀甲繋ぎ文であるのに対し、魚鱗文は金鈴塚ののみの様です。大きさ的には、実際に履くには大きすぎるようで、埋葬儀式に用いられたとされています。

金銅製飾履の復元品

 金銅製の冠飾りと履物ともに、朝鮮半島との政治的交流を示す重要な品物であることは間違いが無く、また、ヤマト朝廷と出土した地方との強い関係を示唆しているもとも間違い無いでしょう。その用途としては、首長が身に着け、儀式に出席することにより、その強力な権威を示したものかも知れませんし、副葬品として埋葬された人物の地位や権力を示したのかも知れません。一方、朝廷の中心であったろう人物が埋葬された藤ノ木古墳の副葬品の荘厳さに、金鈴塚古墳の埋葬品が、冠飾りと履物、装飾大刀、装飾馬具(ここでは藤ノ木古墳の馬具には触れていませんが、3セットの装飾馬具が出土されました。)と言う点で匹敵する様に感じられる点で、この金鈴塚古墳の4人の主のヤマト朝廷における地位が、如何に重要だったかを物語っていると言えると思います。

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