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武蔵野美術大学✖︎convivi 2月セミナーレポート

テーマ:「日常の中に世界を再発見する 新しい学びの形」


1. 市川力さんの視点と背景

市川力さんは、「学び」を従来の知識習得型ではなく、「体験を通じた気づき」 として捉えています。
特に、「偶然の発見」や「対話の中で生まれる新たな視点」 を重視し、学びを単独の行為ではなく、「共有することで広がるもの」 と考えています。

この考え方の背景には、以下の視点があります。

「学びは個人の中だけで完結しない」
→ 自分の気づきを他者と共有し、対話を通じて新たな価値を生み出すことが重要。

「既存の教育システムへの違和感」
→ 知識を詰め込む教育ではなく、「自分で問いを立て、考える学び」 が必要。

「偶然や予測不能なことを受け入れる」
→ 合目的的に「計画的に学ぶ」のではなく、偶然の中にこそ深い学びがある

こうした視点が、市川力さんが提唱する**「フィール度ウォーク(Feel度Walk)」という手法にも反映されています。フィール度ウォークは、地域活性化だけでなく、「個の幸せ」** につながる学びの場として各地で開催されています。


2. セミナーの流れとポイント

市川力さんのセミナーでは、次のようなステップで話が展開されました。


(1) あてもなく歩く

📌 「まず、あてもなく歩いてみる」

  • 目的を決めずに歩くことで、普段気づかないものが見えてくる。

  • 「目の前にある世界を、改めて意識することが学びにつながる」

  • 学びは「情報を得ること」ではなく、「自分の視点を開くこと」。

🔍 背景となる考え方

  • 私たちは普段、決められたルートを歩き、決められたものしか見ていない

  • あてもなく歩くことで、意識のフィルターを外し、「無意識に選ばなかったもの」と出会う機会を作る


(2) なんとなく気になったものを見つける

📌 「ふと目に留まるものを見つける」

  • 人は、自分の中に**「なんとなく気になる」というセンサー**を持っている。

  • そのセンサーを意識的に働かせると、学びの可能性が広がる。

🔍 背景となる考え方

  • 教育は「知識を得る」ものではなく、「知識を生む視点を持つ」 こと。

  • 偶然の出会いが新しい問いを生む

  • 子どもは「しょうもないもの」でも面白がるが、大人は「意味のあるもの」しか見ない。この違いが学びの鍵になる。


(3) その次は?(何が起こるのか?)

📌 「気になったものを見つけた後、どうするか?」
→ ここで多くの人は戸惑うが、市川さんは「何もしなくてもいい」と示唆している。

🎭 可能性 ①「じっと観察する」
→ もう少し時間をかけて、なぜ気になったのかを自分で探る。

💬 可能性 ②「他の人と共有する」
→ 他の人に話してみると、違う視点が入る。

🖊 可能性 ③「みんなで模造紙に絵を描く」
→ それぞれの発見を、模造紙に絵として記録することで、全体の視点が広がる。

🔍 背景となる考え方

  • 「すぐに意味づけしようとしない」ことが大事

  • 「思考は、対話の中で広がる」

  • 「なんとなく気になったものを、他者と共有することで、思いがけない発見が生まれる」


(4) みんなで模造紙に絵を描く

📌 「個人で終わらせず、みんなで共有することで発見が生まれる」

  • 「発見は個人のものではなく、共有することで広がる」

  • 「他者の視点が、自分の視点を変える」

  • 模造紙に描くことで、個々の発見がつながり、より深い学びが生まれる。

🔍 背景となる考え方

  • 「発見とは、1人で完結するものではなく、関係性の中で深まるもの」

  • 「組織を作るのではなく、場を作ることが大事」

  • 「偶然の出会いが、新しい価値を生む」


3. セミナーのキーワード

「あてもなく歩く」 → 計画を手放す。
「なんとなく気になるものを見つける」 → センサーを意識する。
「すぐに意味を求めない」 → 考え続けることが大事。
「共有することで、新しい発見が生まれる」 → 対話の中で気づきを広げる。
「みんなで模造紙に描く」 → それぞれの視点を融合し、より大きな気づきを得る。


4. まとめ:市川力さんの学びの本質

市川力さんの話の本質は、「偶然を受け入れ、問いを持ち続けること」 にあります。

📌 「学びは、知識を得ることではなく、視点を広げること」
📌 「個人の発見は、共有されることで新しい価値を生む」
📌 「すぐに答えを求めず、問いを育てることが大切」

この考え方は、「合目的的思考」や「計画主義」の教育とは異なり、「レンマ的な学び」 に近いものです。
つまり、「偶然を楽しみ、対話の中で問いを深める」 ことこそが、市川力さんの提唱する「新しい学び」なのかもしれません。


力さんがセミナーの中で紹介されていた作家さん一覧(敬称略)

  • 水木しげる
    状況を体験し、その先に何もないと感じて「真面目にならない」と決めた人物として言及

  • 浦沢直樹
    漫画『漫勉』が好きだと話に出た。

  • 伊藤亜紗
    『手の倫理』の著者。視覚障害者の「触れる」感覚について研究し、学びの多様性を考える視点を提供。

  • 鶴見俊輔
    『日本人は何を捨ててきたのか』の著者。ネガティブ・ケイパビリティ(不確実性を耐える力)について言及。

  • 群馬直美
    「葉画家」として、葉っぱを使った絵を描く。セミナーの中で「これは写真ではなく絵です」と紹介された。

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