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初めての海外赴任: 現地のパワハラ日本人上司に気をつけろ!

10年前に初めて米国への海外赴任を経験した。海外駐在はかねてからの希望で、期待と不安の中で彼の地に旅立った。私はそこで人生を棒に振るかと思われるような想定外の状況に見舞われた。今後、初めての海外赴任をするであろう皆さんに対し、同じような悲劇に合わないためにも、あえてその経験を、自分自身の備忘録もかねて述べていく

海外赴任が決まった当初、私も妻は大喜びだったが、当時、小学生高学年であった息子は大泣きだった。友達が多いこの場所から、言葉も通じず、友人もいない海外に何のためにいくのかと。仕事だ、いい経験だ、大きくなれば分かる、と言っても全く理解せず、そんな仕事なんてやめて、あそこで働けばいい、、、とベランダから見えるコンビニエンスストアを指さして大泣きしていた。

一週間たち、息子が神妙な顔もちで現れ、「お父さん、3年たったら帰れると約束してくれる?絶対だよ?」とあきらめた表情でやってきたときは、思わずもらい泣きしてしまった。実際は赴任期間は5年と会社から言われていたが、もし、どうしても子供が帰りたいといったら、会社と交渉しようと心に誓った。

海外赴任に向けて、ビザの取得、健康診断、子供の現地校準備のための各種連絡、等、着々と準備を進めた。

家族帯同の場合、基本的には本人が最初に現地入りし、その後、住む場所等が整ってから家族が赴任するルールだった。私はそれに沿って、2月に赴任し、4月から家族を呼び寄せることとなった。

現地入りし、当時、50代であった私の上司となるKに手土産をもって挨拶にいった。このKは、日本では数回顔を合わせた程度でしかなかったが、日本のメンバーからは「紳士的」という評判であったため、私はろくに事前調査もせずにいた。少ないながらも、私もそういう印象を持っていたからである。挨拶後、食事に誘ってもらったので、その場で、自分がいかに海外赴任にあこがれていたか、また、せっかくのチャンスを感謝するとともに、それを最大限に生かしていきたい決意や今後の抱負を、食事の際に嬉々と話をした。今から思えば、この時の、Kの反応の悪さをしっかりと受け止めておくべきであった。

Kの異様さに気がつき始めたのは、赴任後1カ月程度のことであった。日本の本社からA事業部長およびB部長が、2名で出張で来るから滞在する二日間の夕食をアレンジしてくれという。私は赴任間もないこともあり、どのレストランが良いのかを周囲の日本人メンバーに確認し、日本人出張者をよく連れていくレストランを2つ選び出し、そこを予約した旨を、上司Kに伝えた。以下、その時の報告となる。

私: "一日目はレストランX、二日目はレストランYを予約しました。"

上司K: いったい誰が食事に参加するのか?

私: A事業部長、B部長、Kさん、私の4名で予約しています

上司K: なんでBなんかと俺が一緒なんだよ。

私: いや、、、B部長も出張に来られるので。。。レストランで皆と食事と思っていまして。。。

上司K: 馬鹿野郎!俺はBのことが大嫌いなんだよ。もっと俺のこと調べとけよ。それと、俺はA事業部と会うの初めてなのも知らないのか?Bがいたらまともな話もできないじゃねーか。お前が、Bと二人で食事しろよ。それと、なんで、レストランXなんか予約するんだ? 俺がシーフード食えねえのも知らねえのか! お前がガキじゃねえんだから、そんなこと事前に調べとけ! 俺に失礼じゃないか!

私: (しばらく絶句) 大変申し訳ありませんでした。また、調査不足で大変ご無礼いたしました

これは、いわゆる、昭和のサラリーマン世代ではよくある話かもしれないが、当時の50代(今の60代前後から70代)でそれなりの役職のものは、自分がいかに尊敬されているのか、丁重に扱われているのかに関してきわめて敏感である。自分の人間関係(好きな人間、嫌いな人間)、また、自分の人事評価を行う人間(事業部長A)と自分との関係、はたまた、自分の食事の指向性、等、きりがない。また、海外ともなると、日本の本社のように、周囲の目が多くなく、密室での限られた日本人メンバーでの濃密な関係が求められることが少なくない。上司の機嫌を損ねたら最後、赴任期間中、ずっと、塩漬けにされるか、場合によっては、即刻帰国命令が出るケースもある。

上記のレストラン事件以降、何度も繰り返し、似たようなことが起きた、つまり、上司Kは、自分の尊厳を少しでも棄損したと思えるようなことに関して、烈火のごとく怒り狂い、また、自分がどれだけ、苦労して今の地位に上り詰めたか、どれだけ、自分自身の昔の上司から罵詈雑言を吐かれ辛い状況もありながら、それを耐えてきたのかを執拗に私に繰り返した。

つまり、俺はこれだけのことを経験し、それに尽くしてきたのだから、お前も俺を見習って、この俺がそうしてきたように、俺に対して、尊敬し、丁重に扱えと暗に言っていたのである。口癖は、俺に失礼なことはするな、と。

日本であれば、即刻人事に相談する案件であったが、ここは海外である。赴任後、我慢を重ねた半年ほどたったころ、赴任先の人事担当に相談したところ、上司Kは、そういう性格であることは現地では有名であり、過去も何人も同様の被害にあったものがいると初めて知った。また、それにも関わらず、外面が良いことでも有名であった。これはショックであった。なぜ、赴任前に知らなかったのか。なぜ、誰も教えてくれなかったのかと。

妻と共に長く切望していた海外赴任が、こんなキチガイ上司のために無駄になるのか。海外に行きたくないと大泣きしていたにも関わらず、強引に連れてきた息子に何と言うのか。

結局、私は5年間の赴任期間を無事に終えてから帰任することになった。その間、壮絶な苦しみがあった。また、それに対する対処法もそれなりに導けるようになったが、それは別の機会に記すことにする。

これから海外赴任を初めて経験される方に贈る言葉:

現地での日本人上司となる人間についての調査は最優先案件です。外面だけでなく、現地に滞在している日本人(できればその上司の人となりを知る距離にある)から、よくよく聞いておくことが極めて重要です。








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