UI,UXデザイン初学者の助けになりそうなブックリスト(2024)
(タイトル画像はChatGPT 4oで生成)
はじめに
UIデザインあるいはUXデザインを学びたい初学者向けの本を選んでみました。
UIやUXの名称を掲げたデザイン学科や専門課程は日本では数が少なく、他のデザイン分野(たとえばインダストリアル・デザインやグラフィック・デザイン)の学科数と比べて大きな差があります。そして残念ながら今後一気に増える気配もありません。多領域を横断する分野の特性やデジタル関連分野に特有の変化の速さが専門コースの成立を阻んでいる要因の一つかもしれません。
その一方で、デザイナーの人材不足が慢性化している分野でもあり、専門スクールが少ないためにある程度は独学せざるを得ないという事情があります。「独学する人」は増えてはいますが、初学者が未知の分野の初めの壁を超えることはかなり大変ですし、そもそもどこから何を(どの範囲を)学んだら良いのかわからないということもあるでしょう。
このブックリストは、UIデザインやUXデザインとそれに関連する広い領域の中から基本的なもの、押さえておくと良いものを選んで作りました。 これまで長くデザイン教育に関わってきた経験から必要なものを厳選したつもりです。好き嫌いや向き不向き(相性)はもちろんあると思いますが、学んでいく際のガイドや道標になれば幸いです。もちろんこれら全てを読む必要はなく、逆に読破したらすぐにデザイナーになれるわけでありませんので、あくまでも参考としてご覧ください。 専攻や専門分野によっては簡単すぎるという本も含まれていると思いますが、その際はさらに上位の専門書をご覧いただければと思います。
ここにあげた以外にも優れた本はたくさんありますし、いまどきは有料/無料の動画コンテンツや講座も手に入ります。どのように学ぶかは、その人の目的や学びへのモチベーション、得手不得手などに応じて、学び手が主体的に選んで決めていくのがよいでしょう。
表現の基礎
スマホアプリ、ウェブサイト、PCで動作するソフトウェア、 いずれもグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を介してユーザーとやり取りします。 自分でデザインするにせよ、テンプレートを使うにせよ(あるいはAIが作るにせよ)、それらのグラフィックを適切に扱い、選択や指示をするためのスキルと知識が必要です。
グラフィックデザイン,レイアウト
デザインの教室 手を動かして学ぶデザイントレーニング Kindle版
デザイン入門教室[特別講義] 確かな力を身に付けられる ~学び、考え、作る授業~
伝わるデザインの基本 増補改訂3版 よい資料を作るためのレイアウトのルール
デザイン・ルールズ[新版] デザインをはじめる前に知っておきたいこと
表現の基礎を手で学ぶ
デジタルプロダクトのデザインはほとんどがPCでのデザイン作業で完結すると思いますが、基礎的なスキルや選択眼を身に付けるという意味では手で作りながら学ぶことも効果があります。
かたち・色・レイアウト: 手で学ぶデザインリテラシー
武蔵野美術大学の1年生向けの基礎演習を書籍化したものです
表現の基礎 色彩
色彩についての知識をまとめて習得したい人向け(検定の受験に関わらず)。基本的な内容が網羅されています。
色彩検定 公式テキスト 3級編 (2020年改訂版)
色彩検定 公式テキスト 2級編 (2020年改訂版)
色彩検定公式テキストUC級(2022年改訂版)
UCは「色のユニバーサルデザイン」のことです
表現の基礎 イメージと記号
アイコンやピクトグラムのようにイメージ(図像)には意味を持たせることができます。直感やセンスだけに頼るのではなく、コミュニケーションの手段としてイメージを扱うためのトレーニングブックです。
イメージと意味の本 記号を読み解くトレーニングブック
表現の応用 インフォグラフィックス
情報を可視化して伝えるために必要なインフォグラフィックス、考え方の基本と表現について。
インフォグラフィックス: 情報をデザインする視点と表現
UIデザイン
UIデザインは単に操作画面を描いて並べる(繋げる)ことではありません。目的や基本的な考え方、プロセスを理解しましょう。
UIデザイン入門
はじめてのUIデザイン 改訂版 Kindle版
UIデザインの教科書[新版] マルチデバイス時代のインターフェース設計
デザインツール Figma入門
Figmaの入門書を1冊だけ紹介します。ツールそのものの入れ替わりやアップデートが早いため、その都度ご自分に合ったものをお選びいただくか、書籍以外の教材も利用して学んでいただくのがよいでしょう。
Figmaデザイン入門〜UIデザイン、プロトタイピングからチームメンバーとの連携まで〜
認知科学
使いやすさやわかりやすさを実現するには、人間の認知や思考の仕組みを知ることが役に立ちます。
心を動かすデザインの秘密 認知心理学から見る新しいデザイン学
誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論
使いやすさやわかりやすさを考えるための必読書です。
HCI(ヒューマンコンピュータインタラクション) の理論
人間とコンピュータのインタラクション(相互作用)について学ぶための教科書です。
新しいヒューマンコンピュータインタラクションの教科書 基礎から実践まで
UXデザイン
UXデザイン(あるいはUX)は扱う範囲が広く、専門家の立ち位置によって定義も様々です。初学者は、基礎となる理論、実践での考え方と手法、世の中の様々な事例をバランスよく学ぶのが良いと思います。 ビジネスとの接点で含まれる領域が拡張しているので、学問的な定義(UXとは〇〇である)にこだわるのは(社会の変化に付いて行けなくなるという点で)あまりおすすめしません。
UX 理論
The Elements of User Experience ~5段階モデルで考えるUXデザイン
UX 実践
Lean UX 第3版 ―アジャイルなチームによるプロダクト開発
UXリサーチ
はじめてのUXリサーチ ユーザーとともに価値あるサービスを作り続けるために
UX論
その後、シリーズで数冊出ていますが、基本的な考え方を知るには初めに出たこちらを。
アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る
アフターデジタル2 UXと自由
UX 応用 経験を語る(ストーリーテリング)
デザインはストーリーテリング 「体験」を生み出すためのデザインの道具箱
サービスデザイン入門
UXを拡張した先に、ビジネスを含めサービスシステム全体を視野に入れるサービスデザインという分野があります。 デジタルサービスの場合は、デジタルプロダクトがサービスの重要なタッチポイントであることが多く、デザイナーにもサービス全体に関する目配りや知識が求められます。
これからのマーケティングに役立つ、サービス・デザイン入門 -商品開発・サービスに革新を巻き起こす、顧客目線のビジネス戦略
Good Service[グッド・サービス] DX時代における"本当に使いやすい"サービス作りの原則15
プロダクトマネジメント入門
デジタルプロダクトの多くは、これまでのデザイン分野が関わってきたものづくり(物理)とは異なったプロセスで開発されます。多くの職種が関わりながらプロダクトがどのように作られていくのかその概要を知ることも必要です。
ゼロから始めるプロダクトマネジメント
アジャイル基礎 スプリント
デジタルプロダクトやデジタルサービスの開発では、これまでものづくりのプロセスで行われてきたいわゆるウォーターフォール型の開発手法に変わり、アジャイル開発というプロセスを取ることが多くあります。デザインについても、最終形を徹底的に磨き上げる職人型から発想を変えて、スプリント的な方法への対応が求められます。
SPRINT 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法
デザインスプリント ―プロダクトを成功に導く短期集中実践ガイド
行動経済学
この経済学の様々な知見はUXの向上に役立てることができます。ただし、後述するデザイン倫理に反しない範囲で適用すべきでしょう。
行動を変えるデザイン ―心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する
ビジネスデザインのための行動経済学ノート バイアスとナッジでユーザーの心理と行動をデザインする
デザイン倫理
デザインは利用者のUXを向上させビジネスに貢献する一方で、使い方を間違えるとユーザーを欺くことに利用される危険があります。デザイナーには高い倫理観が求められます。
ザ・ダークパターン ユーザーの心や行動をあざむくデザイン
ダークパターン 人を欺くデザインの手口と対策
デザイン思考
世の中に広く普及したこともあり、デザインを語る際の共通言語にもなっています。デザイナーはデザイン思考そのものを使うことは無いと思いますが、教養として知っておく方がよいと思います。
デザイン思考が世界を変える〔アップデート版〕: イノベーションを導く新しい考え方
クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法
教養 ビジネス 入門
デジタルプロダクトやデジタルサービスは企業のビジネスに直結しており、デザインとビジネスの距離がとても近いのが特徴です。デザインだけわかれば良いということではなく広くビジネス全般に関心を持ちましょう。
図解 はじめて学ぶ みんなのビジネス
ビジネスモデル2.0図鑑
教養 マーケティング 入門
会社、職種によって、デザイナーとマーケティング部門との関わりは様々だと思いますが、基礎的な知識を持っておくとマーケターとのコミュニケーションがうまくいきます。
大学4年間のマーケティング見るだけノート
ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム
教養 デザイン史
いまのデザインは、先人が積み上げてきた歴史の延長線上にあります。最新のトレンドを追うだけではなく、社会におけるデザインの歴史を教養として知っておくと、自身のデザインの立ち位置がわかったり、デザインを語る語彙に厚みが出るでしょう。
カラー版 図説 デザインの歴史
おわりに
ここにあげた以外にも優れた本はたくさんありますし、いまどきは有料/無料の動画コンテンツや講座も手に入ります。どのように学ぶかは、その人の目的や学びへのモチベーション、得手不得手などに応じて、学び手が主体的に選んで決めていくのがよいでしょう。
こうしてブックリストを作っている一方で、世の中は進行形でAIによってデザイナーの役割や仕事の内容が大きく変わりつつあり、初学者に必要な知識やスキルもかなり変わっていくことが予想されますし、現場ではすでに変化が起きているはずです。このブックリストの基本がいつまで必要なのか、いつまで有効かは何とも言えません。 世の中の動きを注視しつつ自身で学び方を考える、あるいはAIに聞きながら修得していく、すでにそんな時代なのかもしれません。
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その他のブックリスト
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更新履歴
2024.7.29 公開[更新中]
2024.7.30 アップデートして公開
2024.7.31 その他ブックリストに追記,関連記事を追加,目次を追加