【バルセロナ】セレブリティは身に余った1
バルセロナの街は、新しいものだけでなく古くても建物が整然と並んでいて、パリよりも合理的な印象を受けた。ガウディが曲線を欲したのは、もしかしたらこの反動かもしれない。
TGVの1級客室から華麗に降り立ち、繊細な装飾のあるバルコニーを持つ美しいホテルに向かうタクシーの窓からの景色を見てそんな事を思った。
この時、私たちにはパトロンがいた。
パトロンと言うと「パパ活」を連想してしまうが、特に対価は要求されなかった。
その人は、我々の旅に同行したい、と言うのみだった。
その人とは列車の運行停止の為にマルセイユから乗った臨時バスで出会った。
※マルセイユの話https://note.com/akio_nyan/n/n01f2aff01abc
彼は私と同行中の女性(日本人)を誘導して、先に乗っていた彼の前の席に座らせた。最上級のカメラを首にかけた細身の背の高い日本人のイケオジだった。
私の第一印象は、「レオン」と言う雑誌に出てくるホルモンマシマシな男性を現実的に上品にした感じだと思った。なので、少し危険だなとも思った。
彼は美容系の会社をいくつか経営していると言っていた。会社の人をパリに研修に連れてくる予定が当時のテロリズムの流行の為に延期にしたらしく、時間ができたので社長だけ一人渡仏したそうだ。
彼はもっぱらニースやカンヌでハメを外していたが、私たちと同じく列車の運行停止に巻き込まれたそうだ。
バスではその彼の横には既に人が座っていた。山高帽を被ってきちんとした身なりをした小柄な若い日本人男性だ。そんな身なりだがユダヤではなかった。でも、擦れていないその雰囲気から誰かを騙す人では無いと感じた。
彼は20代前半で学生でもなく仕事らしい仕事をしていないと話していた。ご実家が会社を経営されていて、働く必要が無いと言うか、とても自由な身であるようだった。彼は一人で南フランスを旅していたらしい。
山高帽君もその臨時バスに偶然乗り合い、パトロンさんと出会ったらしい。
私たちの気ままなその日暮らしのヨーロッパ旅の話をすると、パトロンさんは同行したいと言い出した。パトロンさんの見た目から躊躇する気持ちもあったが、彼が山高帽君を誘ったので了承することにした。
ここから4人で旅をすることとなったのだ。
つづく