
でき太くん三澤のひとりごと その104
◇ Yちゃん
今回は、今朝車を運転しているときにふと思い出した会員さんのことを書いてみたいと思います。
私がその会員さんの学習をサポートさせていただいたのは、彼女が中学3年生のとき。
数学が苦手で、このままだと受験も不安ということで入会されました。
入会したのは5月だったと思います。
その子は病気の影響で視力がかなりわるくなってしまったようで、読もうとする字から1〜2cmくらいの距離まで目を近づけないと見えないというくらいでした。(眼鏡とかで調整してもです)
その子に電話で
「いつごろから数学が苦手になってきた?」
と質問をすると、
「おそらく中学生1年生くらいからだと思います」
とのこと。
とても礼儀正しく、しっかり返答できるお子さんでした。
「では、1次方程式とか計算できたりするかな」
と質問したら、
「はい、大丈夫だと思います」
とのこと。
しかし、実際にその子の数学の状況を確認してみると、小学校算数の分数の概念や、異分母の加減といった数学を学習していく上で重要な単元をすべて取りこぼしているという状況でした。
「これは時間がかかるな…」
そう思った私は、あらためてその子(以後Yちゃん)にお電話をしました。
「Yちゃん、この前Yちゃんの数学の状況を細かくチェックしたら、分数や小数といったとても大切な単元がしっかり定着しないままになっていたんだ。だから、本当に力をつけたいなら、そういう定着していないところから学習していく必要があるんだ。でももしYちゃんが、受験にだけ間に合うようにしたいというのなら、突貫工事のようなこともできるけど、これは実力がついているわけではないから、高校に入ったら、しっかり学び直さないといけない。だけど、多くの子は高校生活が始まってしまうと忙しくなって、学び直しができる子はほとんどいないかな。だから、突貫工事はあまりお勧めはできない。Yちゃんは、どちらがいいかな」
と質問をすると、Yちゃんは迷うことなく
「突貫工事ではなく、本物の力がつく方法でお願いします」
と答えました。
「わかったよ、Yちゃん。私も全面的に協力していきますね。これから受験本番までに、しっかり実力をつけるには、ちょっと大変だけど、毎日3〜4枚くらいのペースでプリント学習を進めていく必要があるけど、できるかな」
「はい、がんばります」
そこから、Yちゃんとの学習がスタートしました。
ここまでの流れは、私が日々学習をサポートさせていただく中ではよくあることなので、何ら特別なことではないのですが、Yちゃんには、私が今でも思い出すほどの「できるようになりたい!」という強い想いがありました。
その強い想いはどういうところに現れていたのかといいますと、FAXを使った質問攻めです。
たいてい夜9時くらいにYちゃんから質問のFAXがきます。
その当時私は自宅でも業務をしていたので、すぐにその質問に返信をします。
すると、夜11時くらいにまたFAX…
「まさか、Yちゃんじゃないよね。夜遅いし…」
と思って見てみると、Yちゃんからまた別の質問。
そのFAXに返信をすると、今度は夜12時に、また別の質問。
というように、こちらが根負けするくらい、わかるようになるまで、できるようになるまで質問をしてきます。
(夜遅いときがあるので、さすがにこの件で親御さんにお電話しましたが、親御さんもYちゃんのやる気をサポートしていきたいとのことで、夜のFAXの利用については承諾しているとのことでした)
この怒涛のFAXの質問攻めは、毎日というわけではありませんでしたが、受験前までずっと続きました。
見づらい字を、何とか見ながら考え、必死で努力しているYちゃん。
そういうYちゃんに私ができることは「営業時間外の質問だから明日の対応」というような割り切ったものではなく、自分もできる範囲のことは精一杯対応するという姿勢で臨むことだと思い、最後までYちゃんに寄り添ってみました。
ここでみなさんが気になるのは、5月から受験までの数ヶ月で、Yちゃんがどこまで習得できたか、ということですよね。
Yちゃんは、小学校算数の分数の概念からスタートし、異分母の加減、分数の乗除、正負の数の加減乗除、1次方程式の計算、連立方程式の計算、平方根、2次方程式の計算、そして、1次関数まで習得しました。
ここまでしっかり習得できていれば、Yちゃんが希望する高校にはまちがいなく受かります。
Yちゃんは、みごと自分の目標を達成したわけです。
私も比較的物事をあきらめず、根性はあるほうだと思いますが、Yちゃんには負けるかな。
Yちゃんも、今は立派に成人されていると思いますが、視力の障害を乗り越えて、きっと自分の目標を追い続けていることでしょう。
どこかで会えたら、うれしいな。