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死と向き合うということ ~第37話 パラグライダーで墜落 そして入院~

墜落してから2ヶ月と20日程が経った日の出来事です。

パソコンが壊れてしまい、代わりのパソコンは確保できたものの、処理能力が遅い。フォトショップをはじめとする写真の作業をするのは厳しくなってしまいました。

そんな状況の中、開き直って始めてみたことがあります。それは映画を積極的に見るというものでした。そしてこの日見た映画は邦画の「余命十年」でした。

私的な感想は「素直で良い映画」でした。この言葉がこんなにも当てはまる映画はなかなかないと思います。演出、セリフなど、様々な点において、奇をてらわずに、素直に、まっすぐに、描写された作品でした。

逆にちょっと悪意のある言い方をすれば映画の中に新しさや意外性、斬新さみたいなものはあまりなかったと思います。でもそういった、変則的な要素がないからこそ、落ち着いて、安心して素直にストーリーに入っていけたんだろうなと思います。

そんな真っ直ぐな作品だからこそ、真っ直ぐに心に響くものがありました。素晴しい映画でした。皆さんにも是非見てもらいたいです。見終わった時にはきっと、素直に「良い映画だったな」と思ってくれるんじゃないかと思います。

さて、この映画を別の視点で見て考えているもう一人の自分がいました。
最近の自分だからこそ見えた視点だと思います。余命十年とタイトルにあるように、「死」を描いている映画なんですが、 そこに対して今の自分だからこそ、思ったことがありました。
「自分はそんなには死と向き合っていなかったんだな。」
と思いました。

死とはなにか。死と向き合うこととはなにか。
色んな考えや見方があると思います。それは本当に人それぞれですし、正解とか不正解とかはないはずです。
自分がこの映画を通して思った死と向き合うこと、その形の一つとして、「死ぬことで何かを失う恐怖と向き合うこと。」
なんじゃないかと思いました。

私は今回の事故で死にかけました。というか、普通だったら死んでいるような状況で数々のラッキーが重なって死ぬことを回避し、生きることができました。その点では確かに死と向き合ってはいます。ですが「何かを失う恐怖と向き合う」ということはあまりなかったと思います。

事故はたった5秒足らずの一瞬の出来事でしたが、その時の記憶は全くありません。目を覚ましたのは病室で、その時点でこれからも生きていることは確定していました。しかも早い時点でリハビリを頑張れば体の運動機能は事故前の状態にほぼ戻せるという情報ももらえていました。

もちろん、今回の事故で沢山のものを失ったと感じています。でも最小限の後遺症で済んだ自分は幸運にも、多くのものを取り戻せるチャンスをもらえているんです。

なので、何かを失うという恐怖はそこまで感じていませんでした。映画をみた自分の視点からだと、今回の事故では私はそこまで死と向き合っていなかったんだなと思いました。

これって、、、本当にありがたいことだと改めて強く思います。
あれだけの大きな事故。もちろん、失ったものもあるけれど、その多くは取り戻すチャンスをもらえている。こんなにありがたいことはない。

でも正直にいうと、ちょっと前から新たな不安を覚えています。自分が取り戻したいものを本当に取り戻せるのか、すごく心配になるようになってきたんです。

実はなんとなくの退院のスケジュールが見えて来ているんです。
それ自体は喜ばしいことのはずなのに、今は不安の方がはるかに大きくなってしまっています。

1つ目の不安は退院後のリハビリについてです。
今は病院で毎日3時間のリハビリをしています。それが退院後は週に2回程度、一回40分程度のリハビリになってしまうんです。つまり退院後は自分主導でリハビリをやっていかなくてはいけません。そのため、今と同じクオリティーのリハビリが自分でやっていけるのか?という不安がでてきました。本当にちゃんと体を戻していけるのかという不安が出てきてしまうんです。正直言うと、トレーニングをするのはあんまり好きじゃありません。自分が弱い人間だということもわかっています。そんな自分がちゃんとリハビリしていけるのかすごく不安です。

そしてリハビリ以外にも、もう一つ不安要素があります。
仕事や将来についてのことです。
こちらもかなり不安になっています。体の戻っていくペースや1~2年後に腰の手術をしなければいけないことを考えると、しばらくは愛知を拠点にしていく以外の選択肢はありません。今までは東京でフリーランスのフォトグラファーとして仕事をしていましたが、今後は愛知で自分で仕事作っていかなきゃいけません。広告関係をはじめとするBtoBの仕事をメインにしていたので、東京と愛知ではそもそもの需要が大きく違う。そんな中で本当に生計を立てていけるのか?というのはすごく疑問です。もしくはBtoBじゃない仕事を作っていかなきゃいけません。それも具体的なことは全くみえていません。見えないことだらけですごく不安です。

そういった不安を前にすると、もっと入院していたいという気持ちにすらなってしまいます。

物事が見えない中でも進んでいけるように心を保つ。この入院中に訓練されて、だんだんと身についてきているはずだけど、、、これだけ不安になるってことは、まだまだなんだと思います。

それでも今は不安は受け流して、進んでいくしかない。

取り戻せるかじゃない。取り戻すんだ。

こんなありがたいチャンスをもらったんだ。ごちゃごちゃ考えすぎず、また明日もやれることをしっかりやっていこう。

退院後もそうやって日々進んでいこう。

今はそう自分に言い聞かせてます。


不安と向き合う入院生活は続く。


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前島聡夫/空飛ぶ写真家
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