学び続ける大人でありたい――工業高校の先生がゼロから始めたiOS開発
アプリ道場サロンメンバーのoka yuujiさんは、教員として働くかたわら、iOS開発の勉強を続けています。身の回りの課題を解決する手段として始めたプログラミングは、いつしかokaさんにとって心から楽しめる学びになっていました。その経緯と今後の展望を聞きました。
教えるために学び始めたら、自分のほうが楽しくなっていた
――okaさんが現在なさっているお仕事について簡単に教えてください。
oka「工業高校の教職に就いています。大学卒業後から教員ですね」
――iOSアプリ開発とは遠い業界ですね。どうして開発に興味を持ったのでしょうか?
oka「まず、働き方改革に伴って業務効率化への関心が高まり、プログラミングの知識があれば現場の課題を解決しやすいのではないか、と考えました。
それとは別に、生徒からもプログラミングに関わる相談が増えました。私が務める工業高校は、生徒の卒業後の就職先が工場などに絞られます。親の意向を理由に工業高校に入学したものの、『本当はプログラマーになりたかった』、『ゲームを作ってみたい』と進路相談で話す生徒がいまして……」
――それで自分が開発をゼロから学ぼう、と考えたのですか?
oka「はい。プロになるためにどの程度の時間や学習を必要とするのかわからなければ、生徒に適切な進路指導ができません。自分自身が経験してみなければ……と2019年頃から独学で開発を始めました。生徒が目指しているものは応援したい、という気持ちから始めたことです」
▲時間を有効活用しながら、アプリ開発に挑んでいます。
――ちなみに、どうしてiOSアプリ開発を選んだのでしょうか?
oka「自分が持っているデバイスだから身近だったし、実際にアプリが動いている様子を見ると、やはり感動しますからね。それと、iOSアプリ開発に関わるエンジニアの皆さんは職人気質な印象が強く、ストイックなコミュニティに惹かれました」
――実際勉強してみてどう感じましたか?
oka「仕事の合間や帰宅後の時間を使って一日平均5時間ほど、毎日こつこつ勉強して、ある程度の基礎知識を得ることができたと感じています。これならば、真剣に取り組めば生徒の夢も叶う、という手応えを得られました。
その後、生徒たちに広い視野でキャリアを考えてもらうため、学校主催でプロのプログラマーをお招きし、特別講義を開催しました」
――生徒たちに学びを還元できたのですね。ちなみに、未知の領域の勉強は辛くなかったですか?
oka「もちろん仕事との両立は大変ですが、苦痛ではありません。もともとモノづくりが好きということもあり、独学の時間はとても楽しいです。生徒のために始めた勉強でしたが、いつの間にか自分自身が一番楽しくなっていたんです」
学び続ける大人でいるために整えた環境
――独学でも楽しめていたのに、サロンに入ろうと思ったのはなぜですか?
oka「大人が学び続けることは意外と難しいものです。義務教育のうちは勉強時間が準備されていて、無償で教育を受けることができますが、大学卒業後は自分でゴールを設定して、主体的にレベルアップし続けなければなりません。そのための環境として、iOS開発に特化したコミュニティに入ろうと思いました」
――アプリ道場サロンを選んだ理由は?
oka「主催者のakioさんのnoteを読んで、アプリ道場サロンが目指すビジョンに共感したからです。転職など明確で短期的なゴールのために集まるのではなく、開発を通じて互いに学び合おうとする環境が自分に合っていると思いました」
――実際に入ってみて、どう感じましたか?
oka「とても良い環境だと思います。サロンというより、コミュニティに近いかもしれませんね。教員の立場から見ていると、クラス運営に似た部分も多いな、と感じます。
サロンの文化やリテラシーは、参加したメンバー一人ひとりによって変わっていくものです。集っているのは学生ではなく大人ですから、クラスのようにサロンを改善していくというのはもちろん難しいことですが、主体的に学ぶ人が増えることで、もっと良いサロンになっていくだろう、と考えています」
誰かから学びとる素直さと謙虚さを忘れたくない
――okaさんのように大人になってから何かを学ぶとき、モチベーションを維持するコツはありますか?
oka「学習の適切な目標設定と、周囲を気にしない姿勢でしょうか。目標は、短期、中期、長期それぞれで設定したほうが、方針がブレることなく勉強できると思います。それから、学習の進捗を他の誰かと比べないことが大切です。誰かよりも優れている状態をモチベーションにしてしまうと、自分よりも優れた人と出会ったときに、心が折れてしまいます。自分と向き合える目標を設定して、マイペースで勉強するのがモチベーション維持のコツです」
――それがなかなかできない人も多いですよね……根本の問題はどこにあるのでしょう。
oka「そうですね……これは私が教職を続けていて生徒から教えてもらったことですが、謙虚さと素直さが何より大切かもしれません。素直に質問したり、謙虚にアドバイスを聞けたりする生徒は、それだけ実績を伸ばすんですよね。
以前、あるスポーツの指導をしていました。実績がないうちは生徒の信頼を得ることが難しかったのですが、『自分を信じてついてきてほしい』と伝えて、最終的には彼らと全国優勝を勝ち取ることができました。そのとき素直に伝えたことを吸収してくれた生徒が、ぐんぐん成長していく姿を目の当たりにして、自分もそうありたいと感じたんです」
――okaさんの学び方は、生徒から学んだものでもあるのですね。
oka「はい。教える側と教えられる側は上下関係ではなく、互いが学びあう対等な関係で結ばれるべきだと思います。それはアプリ道場サロンでも変わりません。サロンメンバーと学び合い、高めあっていけたらいいですね」
技術者として現場を楽しみながら、ネクストキャリアへ
――今後チャレンジしてみたいアプリはありますか?
oka「自分の職場の業務を効率化するためのアプリを開発したいです。まずは身近な課題を解決するものを自分自身の手で作れるようになれることが目下の目標ですね」
▲日々の学びや発見をTwitterで更新するokaさん
――アプリ開発に関わらず、将来の夢はありますか?
oka「漠然とした答えになってしまいますが、技術者としてモノづくりに関わり、スキルを伸ばし続けたいと思います。今は生徒との時間も大切ですし、担任業務がある年はなかなかスキルアップには時間を割けない状態です。しかし、今後はエンジニアとしてスキルに向き合っていく生き方も魅力的かもしれないな、と考えています。
ありがたいことに、独学で培ったアプリ開発のスキルを見込んで、行政や校内から開発に関わる依頼を受けることも増えました。また、エンジニアとしてのネクストキャリアを歩めるお誘いもいただいています。アプリ開発の勉強を転職のために始めたわけではありませんが、幅広い視野で今後のキャリアを検討しています」
教育現場で生徒から学んだ姿勢をぶらさず、自身の学びに真剣に向き合うokaさん。楽しくてのめり込んだiOSアプリ開発は、okaさんが技術者としてモノづくりを探求する新しいキャリアの選択肢を増やしました。楽しく学び続ける大人でいるために、素直に、謙虚に。okaさんだからこそ伝えられるメッセージ、ありがとうございました。
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