『マンモス再生プロジェクト』
アメリカの遺伝学の権威であるジョージ・チャーチ博士が、ケナガマンモス(ウーリーマンモス)を復活させるプロジェクトを進めている。そして、そのプロジェクトのための資金調達が完了したとのニュースが入ってきた。
「ニューヨーク・タイムズ」によると、米バイオサイエンス企業として起業したばかりの「コロッサム」は21年9月13日に、「絶滅種ケナガマンモスを新技術を使って再生し、北極ツンドラに再導入する」という計画を資金調達と共に発表。チャーチ博士は同社の共同創業者になっている。
彼らの目的は、偉大な哺乳類の群れ全体をつくり、北極圏のツンドラ地帯(地下に永久凍土が広がる降水量の少ない地域)に放すことだ。「今回の絶滅種の復活の取り組みによって、破壊されたり失われたりした生態系を再生するワーキングモデルを確立できる可能性があり、それによって気候変動の影響を緩和、または抑止することさえできるだろう」と説明している。
もう一人の共同創業者でありCEOのベン・ラムは「ケナガマンモスのような古代の絶滅種を復活させるだけではなく、絶滅危惧種の保存や人間の活動により絶滅した種の再生に、この技術を応用できるようになる」とさらなる期待も示している。
ツンドラ地帯にマンモスを再繁殖させることで、「その新しい群れが太陽光を遮る木々をなぎ倒し、光を反射して地面を冷やす草原に変えることを目指しています。そして、永久凍土に閉じ込められたメタンの放出を防ぎながら炭素を閉じ込める、新しい種類の植物も生み出すことができる・・・」と、研究者たちは推測している。
ウェブメディア「Stat」によると、「チャーチ博士はCRISPR技術(あるDNAから配列をコピーして別のDNAに挿入する遺伝子のコピー・ペーストの一種)を使って、アジアゾウをマンモスに似せ、寒さに対する抵抗力を持つように遺伝子組み替えをする構想」と述べている。
コロッサムの試算では、「最初のマンモスの赤ちゃんが誕生するまでには、6年はかかるだろう」とのこと。その後、ゾウと同様にマンモスのライフサイクルも非常に長いものと考えれば、さらに成熟するまでに10から12年はかかる計算になる。「1500万ドルの資金で、胚の作成にたどり着くことはできるはずです」と、チャーチ博士は正直な想いをコメント。さらに、「マンモスの子どもを誕生させるためには、さらに資金を集めなければなりませんね」とも付け加えている。
マンモスの再生プロジェクトは実際に成功するのだろうか。存在しない動物を再生させることで、既存の生態系に何かしらの打撃を加えてしまうことは容易に想像できる。また今回のコロナではないが、新たな病原菌をばら撒く原因にもなりかねない。実際に成功させるためにどのような道のりを辿るのか、そしてこれらのデメリットをどのように対処していくのか、これから注目だ。
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