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<特別対談>成果を出す人の共通点は「日報」だった / 安河内亮さん(リノベる株式会社 上席執行役員)

※本記事は2021年4月に出版した著書「人生肯定」に掲載された対談内容をそのまま全文公開しています。(内容やプロフィール等掲載当時のものとなります)

就職や転職は、人生と向き合うひとつの機会だと感じています。私は15年前、就職活動の中で、自分探しに必死でした。自己肯定感が低く、それでいて他者からの承認欲求の塊だった頃の自分を採用し、育ててくれたのが、安河内さんです。 人事・採用の観点から、キャリアを踏まえた人生との向き合い方、自己内省におけるぶつかりやすい壁についてディスカッションさせて頂きたく、対談を依頼しました。

安河内亮さん(リノベる株式会社 上席執行役員)
2003年、大学卒業後、株式会社ベンチャー・リンク入社。FC店舗のスーパーバイジング等に従事した後、2007年より人財開発部マネージャーに。2008年、株式会社リンク・エージェント(現 株式会社FCEトレーニング・カンパニー)取締役就任。2009年より代表取締役、2013年より株式会社グローバルアカデミー 代表取締役。2019年、リノベる株式会社へ。上席執行役員として、人材戦略・ブランド戦略等を管掌している。

ピカピカだったけど、いつも人の目を気にしている子だった

オア:お久しぶりです。こんな風に安河内さんと対談する日が来るなんて、とても嬉しいです。私が人生肯定のプロセスで自分自身の過去の棚卸をする時に、必ず登場する人生ハイライトが就活の話なんです。それは、20代前半で自分探しに必死だったあの頃と、就活を通じて人生と真剣に向き合ったことが、今の「人生肯定」という考え方のベースになっていると感じているから。安河内さんは新卒として私を採用してくれた人でもあるので、当時を振り返りながら、色々とお話伺えたらと思っています。まず、当時の私の印象ってどんな感じでしたか?

安河内:最初の印象はすごく良くて、ピカピカな子が来たなと思った。ただ、本質的な自信のなさとか、抜け出したいともがいてる欲求みたいなものを感じて、これは非常にもろくて折れちゃうかもしれないし、もしかしたら反対に大化けするかもしれないとも思っていたよ。

オア:採用プロセスで人生のストーリーを見つめるワークがあって、その時に私は自分の生い立ちが理由で「必要とされたい」という潜在意識と承認欲求が強いということに気づくことができました。そして、採用面接の中で「もうこれ以上誰かの人生背負うんじゃなくて、自分の可能性を信じて生きてみたら?」という言葉をかけてもらって、ふっと肩の荷が下りて自分の人生を肯定できたことを覚えてます。

安河内:そうだね、そこでちょっと肩の力抜けたかなと思ったら、内定者期間でまた気合いはいっちゃってたよね。研修の度に同期とよく喧嘩してた印象があって、内定者同士ってもっと楽しく、仲良くやるもんじゃね?って僕は思ってたけど。何をそんなに喧嘩することがあるんだ?って(笑)。

当時の同期たち。優秀な仲間と切磋琢磨した内定者期間は宝物。

オア:当時150人いた優秀な同期たちに「負けたくない」一心で、いつも誰かと競争してたんですよね。自分が一番になりたくて、認められたくて。内定者をまとめるリーダー的ポジションにもいたし、何でも完璧にやりたいタイプだったから、やる気のない態度の人を見かけたら腹が立って「ちゃんとやりなよ!」って口うるさく言っていた気がする。でも内心では自信がなくて、不安でよく泣くっていう、めっちゃややこしいやつでしたね(笑)。

安河内:明奈ちゃんはいつも人の目を気にしていて、もっと楽にすればいいのにという感じがしてたけど、最初からアツさと人間味はあったよね。泣いたり、怒ったり、極端な人だった(笑)。

オア:事あるごとに感情的に涙を流すから、「なんかその涙、嘘っぽいよね」って同期に言われてめっちゃ傷ついたこともありました(笑)。そんなこんなでやる気十分で入社したものの、同期がどんどん表舞台に出る華やかな仕事を任せられていくのに、私はいつまでたっても裏で採用説明会に学生さんを集客するための電話をする仕事しか任せてもらえなくて。当時「なんで私だけ?」ってとっても悔しかった。

安河内:これは持論なんだけど、人によって成長のフェーズとかバイオリズム、成長の仕方があるなと思っていて、成功体験をさせるのが今じゃないって思うことが結構あるんだよね。だから、逆境体験をさせた方がいい場合もある。普通はみんな社会人になってすぐ華やかな仕事をしたいと思うけど、一回ダメになって立ち上がる人もいるし、最初からずっこけてすぐ成長する人もいる。明奈ちゃんはさっさとつまずいた方が良さそうだった。中途半端になるくらいなら最初から底の底まで落ちた方がいいかなって。

オア:正直、私なら社会に出てもすぐに活躍できるっていう根拠のない自信があって、でも蓋を開けてみたら、資料作成や数値分析もろくにできなくて、要領が悪くて納期に間に合わずしょっちゅう怒られるし、入社早々天狗の鼻を折られたんですよね。自信喪失して、どん底まで落ちてた時に異動の話があって。だから、他部署で成果出して、自信をつけて絶対にまた戻ってこようと腹を括ったんです。その結果、いい意味でプライドを捨てられて、新しい部署では自分のための成長じゃなくて、私を信じてくださっている人たちのお役に立てるように成長したいって思うようになりました。その時から、自分の成長速度を高めるために毎日2時間以上かけて日報を書くようになりました。それが今の振り返りを習慣化するようになったきっかけです。

1つ上の先輩たちと次年度の採用活動に全力投球だったインターン時代。

成果を出す人の共通点は「日報」だった

安河内:実は、これまで成果を出してきた人の共通点が日報なんだよね。最初は必ず仕事として書いてもらうけど、途中から任意になることが多い。それでもなおやり続ける人とそうじゃない人がいて、書き続けるからといって必ずしもパフォーマンスが高いわけじゃないんだけど、書いてない人でできる人はいない。振り返りをして「今日よりも明日」って進めてる人と、そうじゃなくダラダラ過ごしている人だとやっぱり差が出るよね。

オア:あれは、自己内省というか、自分を知るツールということなんですかね。

安河内:時間は勝手に流れていくからこそ、そのフローをどう自分で止めるかが大事だと思っていて、日報はそのために有効なツールなんですよね。もっと言えば、自分が正しい方向へ向かうための定期的な軌道修正が大切なんだけど、流れている最中はその方向が正しいかどうかは大抵わからない。だから、正しい方向につねに流していくためにも、定期的に流れをせき止めて現在地を知る必要がある。日報はその役割を果たしているんだと思う。

オア:自分の向かう先が正しい道なのかを見つめるという。

安河内:しかも、その流れってまわりの人に影響されてさらに斜めにズレていく。だから、それをいかにせき止めながらまっすぐに戻していくかが大切だと思う。人生までいかなくとも、仕事ひとつ取ってもそう。その都度流れをせき止めて、現在地を把握して、軌道修正できる術は必要だよね。それができないと、まわりに流されてしまうけれど、現在地を知ることができれば、自分の人生を生きることができる。日報による言語化にはそんな意味があるんだと思う。

オア:そういえば、内定者時代に「私はこう生きる」というミッションステートメントを発表する研修があったんですけど、私は当時それがどうしても言語化出来なくて、「結局、決められませんでした。ごめんなさい」って泣きながら発表したことを覚えています。今ならとりあえずその場で言える範囲で言ったらいいのにって思うんですけど、当時はまだ答えにたどり着いていないのに言っちゃいけないっていう頑固さがあって。人って「自分の人生こうしたい!」ってミッションや軸を掲げたいんだけど、うまくそれが言語化できない人もいるじゃないですか。掲げられる軸があった方がいいとみんな必死に探している気がしているんですけれど。

安河内:掲げることよりも、掲げようと思って探す毎日が大事だと個人的には思います。だって、そんな簡単に見つかったら、たやすい人生だから。本質的なミッションなんてすぐには見つからないから、見つけようという意思があることがまず大切。そのためには、練習として、一回言葉にしてみるのが大事で、仮置きでもいいから決めて、前に進むこと。俺だって人生のミッションは7回くらい変えてるしね。

オア:きっとみんな答えを求めがちというか、一度決めたらそうしなきゃいけないとか、綺麗な言葉にしたいとか考えちゃうんですよね。特にキャリアを積んでいきたい世代はそれで焦っている気がします。自分の人生どうしたいかわからなくて、自分に自信がなくて、まわりがキラキラして見えたり。

悩むくらいなら、悩めないくらい忙しくあれ

安河内:悩んでる時点でいいねって思うけどね。悩んでるっていうことは、何かに期待をしているわけで、人生諦めてないわけだから。でもね、「悩む」と「考える」の違いはあると思う。悩みは「苦」を伴うもの。そういう意味では、俺あんまり悩んだことなくて、悩むというよりつねに考えてる。会社の行き帰りも考え続けてるし、風呂でも考えてるし、それを悩んでるんだといえば悩んでいるんだけど、それは苦ではないから、自分では悩んでるって思ったことがない。考えて、考えて、ひとまずやってみる。結局は悩むよりも小さいことでもやっていることの積み重ねが人生を作っていくから、まずは目の前のことをやるという一歩に帰結すると思うんだよね。

オア:悩んでるのはいいことだけど、悩むなら、目の前のことにチャレンジしろと。

安河内:自分は悩んでるな、動けてないなと気付いたら、モヤモヤしているその時間をなくす方向に振り切った方が結果的にミッションが見つかる気がする。さっきの仮置きの話もそうだけど、結局は決め。決める力を高める。経営者なんて特にそうだと思うけど、決める力があって、ミッションだって本当はもっといい言葉があるかもしれないけど、これでいこうと決めている。10年後には全然違うものになってるかもしれないけど、そんなこと誰にもわからないんだから、とにかく決めるだけだと。

オア:ライフログスクールの中で、「自分の人生における大きな意思決定は?」って聞くことがあるんですけど、それに対して「思いつかない」って答える人もいて。だけどそれは、意思決定をしてきたということを自己認知できていないだけだと思うんです。

安河内:まさに、それが日報なんだよね。日報書いてる人って、職務経歴書を書くのがうまいんですよ。人生でハイライトする箇所もそうだし、読み手にとって重要な情報をわかりやすく整理してる。人に伝えるのがうまい。それって、自分のことを振り返るのが上手で、普段からアウトプットしてるから、伝えるのもうまいということ。

オア:たしかに職務経歴書って、はじめましての人に自分を語るわけですもんね。最近では働き方が多様化していることで、今の働き方でいいんだろうかって悩んでいる人も多いと感じてます。人事領域のプロとして安河内さんはどうアドバイスしますか?

安河内:悩んでるうちはなかなか自分なりの答えが見つからないから、まずは仮でもいいから目標を決めて、やってみる。もし最初の目標が決められないなら誰かに決めてもらってもいい。そうやって動いてみたらわかることとか、気が付くことがたくさんある。みんな遠い先のことを決めたがるんだけど、まずは明日・今月とかのことでもいいからとりあえず決めて、それに紐づく次の選択肢を決めていけばいい話だと思う。まず小さくても仮でもいいからセットして動くことが大切だと思いますね。

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「とにかくブレない芯があって、厳しくて怖い人。」
就職活動時に採用面接をして頂き、社会人人生の初上司が安河内さんでした。自己肯定感が低く、いつまでたっても成長実感が持てなかったインターン時代と新社会人時代。本当に厳しくたくさんのことを教えていただきました。知り合ってから16年以上も経つにも関わらず、お会いするとなると毎度緊張で手汗をかいてしまうほど。笑 そんな安河内さんと時を経てこんな風に語り合う日が来るんだよと、当時の私に教えてあげたい!!

2021年にクラウドファンディングで出版した「人生肯定」。本対談も掲載している著書は既に完売していますが、noteで全文公開しています。

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