ごめんなさい
ワタシとあの人は、7年前に当時の職場で出会いました。何かにつけて彼の言動から、捻くれ者に感じてしまい、理解できず犬猿の仲と感じていたな。
そんなある日事件が起きるのです。
今ではとても大きな存在であり、尊敬するあの人を、私は、深く深く傷つけてしまったのです。
何てことない、たわいない会話から、彼は自分のお母さんについて
「ヒドイ親だった、あんな女母親じゃない」と言ったのです。
私はその言葉を聞いて、自分本意な価値観で
「いい大人が自分の親をバカにするなんて最低。子どもを想わない母親なんていない」と言い切ってしまいました。
私自身、母親から「あなたの為を想って言っている。」と言われて育った幼少期の背景があった事。そして、私自身が、息子2人を本当に大切に大切に育てている事。自分の事より何より息子達優先で愛情を注いでいる事。自分の欲しい物は我慢しても、愛する人の為には惜しみなくお金も使う事。そんな私は、自分の価値観だけで彼の言葉を全面的に否定してしまったのです。
そうです。彼は虐待を受けて育った虐待児だったのです。
この時、彼と私の意見は平行線を辿り、ますますお互い嫌悪感が漂ったと思います。
しかし、大人同士なので仕事上では本当に良き相談相手であり、協力者でした。
少しずつ距離も近づき多くを話す事になっていく中で、彼から児童虐待問題について教えてもらいました。ニュースでは知っていたけど、まさか身近な人がそんな目に合っていたなんて思いもよりませんでした。
家庭と仕事の往復しか世界がなかった私は、彼から教わる社会問題や、政治の話。彼が運営していた子ども食堂の話。すべてが新鮮で興味があったと同時に、自分の無知さ故の、私のあの一言が、彼の尊厳をひどく傷つけた事を知り、本当に後悔する日々が始まりました。
「本当にごめんなさい。」
謝っても謝っても心が締め付けられる想いです。
そんな後悔があった事もあり、彼に習って、私ができることをやってみようと思いました。彼が開いた虐待問題の勉強会にも参加しましたし、区内で新たに子ども食堂を立ち上げたりしました。
もちろん彼のアドバイスがあっての事。力を合わせて多くの仲間を集め、NPO法人を立ち上げる事にもなりました。活動はどんどん広がり、多くの出会いもありました。
そんなある日彼から、政治家を目指している事を打ち明けられました。虐待問題を行政側の立場で改革したい。そのために協力をしてもらえないかと。
私は政治には疎いけど、こんな楽しそうな事に巻き込んでくれる事が嬉しくて二つ返事で承諾してしまったんです。
半年間、私なりに夢中で、試行錯誤の応援をしてきました。彼の生い立ちを漫画で表現したり。毎日の政治活動をコラムでわかりやすく表現したり…。
そして、なりふり構わず、全力で名前を叫んで応援しました。
挑戦の結果はダメでした。完全に私の力不足でした。
しかも、苦しい苦しい選挙戦の後半には、彼が私に対してトラウマを持つ事件があり、また彼を深く傷つけてしまったんです。
本当はいつも自分に自信のない彼に、思い切り自信をつけてあげたかった。
彼は自分の幼少期の過酷な経験を、財産と捉え、世の中を変えたいと思っています。
私はそれを彼に実現させたいのです。
「幼い頃から苦労して大変だったわね」そんな同情から彼とコンビを組んだわけではありません。
私たちはお互い高め合う関係だと思っています。
私に足りない所は彼が補い、彼に足りない所は私が補う。
いまだに意見の相違もあり、本気でケンカをしています。でも、それはお互いが成長する過程として必然な事だと思っています。
私は彼を人生のスタートラインに連れて行きたいのです。
かつての私の様に間違った考えを持っている人達にも現実を伝えたいのです。
とことん彼を応援したいのです。
もし、今後も、彼が私を必要とするのならば
彼が経験した虐待児という負の財産を、周りの人を幸せにする素晴らしい経験値の財産として磨きをかけていく努力をします。
彼が心の底から自信を持って人の前に立てる、素晴らしい財産にする手助けをしたいのです。
どんな境遇の中で生きてきた人でも、人生をやり直し、夢を勝ち取るチャンスが必ずあります。私はそれを彼で証明したいのです。
あれからずいぶん時が流れました。
今度の挑戦でまた多くを学ぶ事でしょう。
全力で頑張ってほしいなぁ。
改めてそんな事を想う夜です。
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