UI/UXの勉強は、何よりも日常生活から入るべきであることを知っていただきたい①

SaaSビジネス Advent Calendar 2019への参加をきっかけに、noteを始めました。そして自分なりに普段の所感を文章化してみんなと切磋琢磨できればと思います。

UI/UXの勉強を聞くと、なんとなくウェブサイトとかアプリとかを思い浮かぶかもしれません。そしてなんとなくルールとかを色々覚えないといけないのではないかと思うかもしれません。自分もそう思いました。

しかし、HCI(ヒューマンコンピューターインタラクション)を学び始めてから思いました。むしろより日常生活のものをフォーカスして理解する方がよりUI/UXの本質がわかるようになると体感しました。

というのも、適切なUXへの理解が最適なUIを作り出し、そして最適なUIが最適なUXを生み出せるので、UIとUXはこうした相互関係にあります。

日常生活の中から、特にシンプルなものをまず取り上げる

新しいことを習う時は、必ず構造的に簡単なものからスタートすることです。UI/UXでも例外ではありません。

まずは、日常生活の中からシンプルなものを取り上げましょう。

1・椅子

例えば、椅子を例とします。

椅子は、学習コストが一番少ないものでしょう。そんな椅子でも、材質から形、機能まで、実に多種多様ですが、それでも椅子は椅子です。人はたった一つの目的を果たすために椅子を使います。「座る」のです。

材質でも、形でも、盛りたくさんの機能でも、根本的に「座る」ことを邪魔してはいけません

これがかなり重要です。しかし時に忘れられることにもなり得ます。特にウェブサイトとアプリのデザインでは、往々にして、根本的な目的を忘れたかのような、奇抜なものになったデザインが生み出されがちです。

もちろんそれを単なる展示用の作品として作るのであれば、椅子だって座りにくいものを作っても問題ありません。しかし、椅子でもウェブサイトでも、それ自体が商用という目的で作られるのであれば、その目的を果たせないことが大きな問題を生じるわけです。

まずは目的を果たせるのが先で、その上で創意を凝らしましょう。

2・ボタン

次に、ボタンを取り上げます。

ボタンは、その形態の多さはまさにカオス状態と言えます。形は丸いものから柄物まで千変万化、そして突起ものもあれば凹状ものもあり、さらに近年はタッチパネルで表示されたものまで存在します。

そんなボタンの目的は、何らか期待した結果を得るためです。

そして、ボタンという媒介物を介して、人はその媒介物(ボタン)が提供する「押す」という機能を使い、最終的に期待した結果を得るのです。

押すというのは、極めてシンプルな動作であるため、期待する結果も基本的にシンプルでなければなりません。

具体的に言いますと、例えばドアチャイムというボタンは、押すという動作を通じて、住宅内の人に対して訪問者がいるということを伝えたという結果が得られます。

それ以外の結果が得られた場合、例えば自分の電話が鳴るとかになると、ドアチャイムを押したことに対して期待した通りの結果が得られません。そうなると人間は混乱します。

また、スマホの電源ボタンとは、押すことによって電源をオン/オフにするという結果が得られます。

もしスマホの電源ボタンを押した瞬間に大音量の音楽が流れ出したら、きっとスマホを投げ捨てたい気持ちになるでしょう。

シンプル(シンプルな動作とシンプルな結果)であればあるほど、学習コストが下がり、また過去の経験則を利活用できるため、利用者は難なく利用できます。

学習コストと経験則

ここまで、学習コストと経験則という言葉がありました。この二つについて簡単に説明します。

学習コスト

学習コストとは、利用者(ユーザ)が、あるものに対して、それを反射的に使えるまでの所要時間と言います。

人は、物事を習得するまでは、いくつかの段階を経るのです。(学習三段階)

1・見ながらやる
   ↓
2・思い出しながらやる
   ↓
3・反射的にできる

「見ながらやる」とは、教科書や教師を使い、それを見ながら、真似しながらこなすということです。

「思い出しながらやる」とは、教科書や教師がいらなくなるが、脳内に記憶されているものの、一度意識的に脳から呼び出すことで使えることです。

「反射的にできる」とは、脳内に記憶されて、かつ体でも覚えているという状態と言えるでしょう。意識せずとも使えるということです。

例えば「座る」という動作は、赤ちゃん以外のほとんどの人間は、座るという動作を意識せずに座ったりすることができます。そのため、反射的にできるという段階に分類されます。

例えば「外国語を喋る」となると、熟練者を除き、文法構造と使用語彙と発音を意識しながら声を出すので、思い出しながらやるという段階に属します。

例えば「会社を経営する」ということを、ずっと会社員をやっていた人間がやり始めたとします。おそらく経営の本を読み、経営者の方にアドバイスをもらいながら、試行錯誤をして行うので、見ながらやるという段階になるでしょう。

学習コストとは、「見ながらやる」の段階から入って、「反射的にやる」になるまで、その所要時間のことです。

例えば外国語を反射的に喋れるようになるまで10000時間かかるのであれば、単純にいうと、その10000時間が学習コストです。

経験則

そして、熟練度が増して学習三段階の最後の段階になれば、人間はそれを一つの「パターン」として身につけられます。

そのパターンを使って、今度は新たに出会ったものに対して、当てはめようとします。こうした行動は、経験則と呼びます。

例えば、先ほど挙げたボタンを説明しましょう。

ほとんどの人間は、すでにボタンを見ると下意識に「押す」という行動ができると理解しています。

そして、新たに違う形で、違う素材で突起物としてある器具の表面に装着された場合は、人はまず無意識に押してみることになるのです。

例えばスマホを初めて手にした人でも、その側面に装着したボタンをまずは無意識に押してみようとしています。

それが、過去に熟練まで学習したパターンを利用した経験則と言えます。

経験則は、学習コストをゼロにさえできます。先ほどのボタンの例でも、スマホについているボタンを学習コストなしで「押す」ことができるので、その学習コストは0と言えるでしょう。

この経験則のおかげで、人間はすべての新しい物事に対して、必ずしも毎回学習の三段階をへる必要がなくなります。つまり、より少ない学習コストをかけて習得できるようになるのです。

いかに経験則を活用して学習コストを下げることが大事

経験則を利用することで、人間は過去のパターンを活用して、新しいことを素早く覚えることができます。

それを利用することで、より本質的なことに集中できます。

例えば、新しい椅子を開発するとしましょう。

椅子の基本は、そこに座ることを提供するのです。つまり腰がかけられる適切な高さにお尻が座れる適切な広さの提供が基本的な設計です。

この基本設計ができ上がれば、利用者はまず過去の経験則にそって、その椅子を利用することができるので、「どうやって座る」ことを教えなくて済みます。また、利用者も反射的に座れることがわかるので、その商品が「椅子」であることを説明しなくとも、利用者はおのずと理解できます。

その上で、差別化を図るのが椅子デザイナーの本当のお仕事と言えるでしょう。

背もたれを設けたり、材質を低反発性クッションに変えたり、キャスターをつけて移動しやすくしたり、折りたためるようにしたりなど、実に様々な派生があります。

こうして、座ることをまず満たせたと理解した利用者も、やっと自分の「座る」以外の希望に合わせて、いろんな椅子の中から比較し、そして購入するのです。こうして、満足とした買い物体験がユーザに提供できれば、成功したUX(ユーザ体験)設計ができたと言えるでしょう。

ウェブサイトも同様です

ウェブサイトもアプリも同様です。まずは利用者が満たしたい主要目的を、学習コストを下げて、できれば利用者の経験則を利用して満たせるかどうかが重要です。

例えば企業のウェブサイトを作るとします。

グローバルメニューは、どこに置きますか?

利用者に素早く利用して知りたい情報を見てもらいたいのが企業の本音のはずなので、学習コストを下げて配置する必要があります。そうなると現在の主流の置き方を取り入れなければなりません。

利用者は、グローバルメニューがどこにあるかを知りたいのか目的ではなく、メニューのページに飛び、その中の情報を得たいのが目的だからです。


今日はとりあえずここまで。

では

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