HPV感染症とワクチンの「豆知識」集
【この記事の結論】
・性別問わず10代前半までにHPVワクチンを接種すると良い
・子宮頸がん予防のために、①HPVワクチン接種、②検診+治療、この2つを組み合わせると良い
【おことわり】
HPV感染症とHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を正しく知ることで、ワクチン接種の参考になったり、誤解や偏見が減ってほしいと願いながら、「個人的に」知っておいたほうが良いと思うことを列挙していきます。
できれば、個人的な意見だけで何か確信を得るのではなく、公的機関や専門家機関からの情報源もチェックした上で判断するようにしてください。
例として、行政に関わることは厚生労働省、子宮頸がん予防に関わることは日本産科婦人科学会、医学的に詳しいことは国立がん研究センターの各サイトを参照してください。
【ウイルス&感染症編】
・HPV(Human Papillomavirus:ヒト乳頭腫ウイルス、ヒトパピローマウイルス)というウイルス
・HPVは数百に及ぶ多くの種類があり、型ごとに性質が異なる
・型ごとの性質の違いとして、粘膜に感染しやすい/皮膚に感染しやすい、がんの原因になる/尖圭コンジローマの原因になるなどがある
・主に性交渉で感染するが、稀に母子感染といった他の感染経路もある
・発がんと関わりがあるHPVは10数種類あって、中でも16型と18型の悪性度が高い
・発がん性のHPVは、子宮頸がんを筆頭に、肛門がん、中咽頭がんなど性別を問わずがんの原因となっている
・日本の子宮頸がんの死者数は年間3000人ほどで、罹患者数は年間1万人ほどである
・子宮頸がんのほとんどがHPVに関連していると考えられている(95%以上とか、扁平上皮癌では99%以上とか)
・発がん性のあるHPVに感染した後、一部の人が前がん病変(軽度異形成~高度異形成)を経て、浸潤子宮頸がんに進行する
・子宮頸がんと子宮体がんをまとめて「子宮がん」と呼ばれることもあるが、両者は別物で、子宮頸がんとHPVは密接に関連する一方、子宮体がんとHPVは基本的に関係ない
・尖圭コンジローマの原因は、主にHPV6型と11型
・尖圭コンジローマは、性器やその周辺にイボができる疾患で、がんのように命に関わることは基本的にないが、けっこうしんどい(画像検索する際は閲覧注意)
・日本の尖圭コンジローマの年間報告数は、おおよそ6000例(男4000、女2000)程度
【ワクチン&予防編】
・日本で使われているHPVワクチンは3種類、サーバリックス(2価:16.18型)、ガーダシル(4価:6.11.16.18型)、シルガード9(9価:6.11.16.18型+ハイリスク5種)であり、近年は4価か9価のワクチンが主に使用されている
・HPVワクチンは、2006年の発売以降、全世界で億を超える接種実績がある
・HPVワクチンの公的接種プログラムを実施している国は、WHO加盟国194カ国中145カ国に上り、その中で男女を対象にしている国は、約半数の75カ国を占める(数字は2024年11月時点、最新情報はこちら)
・HPVワクチンの有効性と安全性に特段の懸念がないと評価され、ワクチン接種が行われている
・HPVワクチンは、感染予防ワクチンであるため、接種後の新規の感染機会に対して予防効果を発揮する一方、既に感染している部分には効果がない
・HPVワクチンの長期の有効期間は、長すぎて未だに効果減弱したこと(ブレイクスルー感染)が観察されていない
・HPV感染予防におけるコンドームの使用は、覆われていない部分からの感染があり得るなどの理由により、あまりアテにならない(性感染症予防のためには重要である)
・WHOは、子宮頸がんの予防戦略( Cervical Cancer Elimination Initiative )として、HPVワクチン接種と子宮頸がん検診と治療の組み合わせを推奨している
・ワクチンの安全性を評価するWHO内の諮問機関(The Global Advisory Committee on Vaccine Safety:GACVS)において、HPVワクチンの安全性を累次にわたって評価していて、「GACVSはHPVワクチンが極めて安全であると考えている ( "GACVS considers HPV vaccines to be extremely safe" )」と発表している
・HPVワクチンの接種回数は、導入当初は3回接種だったが、エビデンスの蓄積により多くの国々で1~2回接種の運用をしている(再掲)