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初めての畝づくり

朝6時。今日は、畝(うね)づくりに挑戦する。
前日に草刈りを済ませた畳一畳分の土地。
雑草だらけだったこの土地は、果たして生物多様性あふれる畑に変われるだろうか。

今回、二拠点リジェネラティブ生活 で参考にするのは、「協生農法」の考え方だ。
「協生農法」とは、畑に多様な生物からなる生態系をつくり出すことで、耕したり肥料を与えることなく作物を育てる農法だ。不在がちの二拠点生活者としては、自然にお任せできる部分が多いこの方法にかなり期待している。

協生農法では果樹を植え、その周りにいくつもの種類の種をミックスしてまく手法をとる。果樹に集まる細菌や虫、鳥などの多様な生物の力を借りて、生態系を豊かにできるという。
今回は果樹の調達が間に合わなかったため、代わりにもともと裏庭にあった紫陽花と山茶花の木の根元に畝を作ることにした。

この場所には、2カ月前に草刈りをしたたっぷりの草をしばらく置いていた。草は干し草と化し、表面はカラッカラに干からびていているが、表面をめくるとしっとりとした、いかにも発酵中の土壌が姿をあらわす。

もともとこの土地は祖母の時代まで、畑(今でいう家庭菜園)だった。夏休みにはとれたてのトウモロコシやトマト、キュウリを食べさせてもらっていた。
それが、35年前に今の家を建てたときに、裏庭の畑をつぶし、外から砂を入れて造成した。以来、少し雨が降らないと土は白く埃っぽくなり、スギナやイネ科の乾燥に強そうな草が生い茂るような環境になった。

ただ、木や草で覆われているところや、干し草が積んであるところだけは、艶やかなしめりけを保っている。

ということで、鍬を使って、干し草エリアの横の土を掘り、畝に盛り付ける作業に入る。目指すは横1メートル、縦2メートルほどの太めの畝。

あぜ道を掘り進めていくと、硬くて鍬が入らない根っこにぶつかる。以前ここに何かの木があったらしい。この根っこに住む菌も、畝の生態系の一部になっていくと期待する。
更に進むと、みみずさんの仕事場や、休眠中の幼虫、土を掘り返されて大慌ての蟻たちに出くわす。そのたびに思わず「わっ」と声が出る。そしてそっと土をかけて、お戻りいただくようにする。

そうして20分ほどの作業で、高さ約10センチの畝が出来上がった。
初めて作った畝は、ところどころ取りそびれた葉っぱや草の根が混じっている。しかも東西にまっすぐ作ろうとしたはずが、途中ぐにゃりと曲がり、凸凹している。
細かい作業が苦手で、行き当たりばったりな自分自身が表れている。

それより気になるのは、掘り返した箇所の土がまたたくまに乾燥で白っぽくなっていくことだ。こんなに白い畑は見たことがない。
これを放置しては土中生物が死んでしまう・・・

焦った私は早々に種まきと草をしく作業まで進めることにする。

本来、協生農法では草をしく手法はとらないようだが、8月の炎天下、カラカラのこの土地ではとりあえず草マルチで保湿した方がよさそうだ。ここではYouTubeで聞きかじった自然農のおしえに従う。

気づくと、大量の汗が額からしたたり落ちる。
腕や背中が、じんわりとした疲労感につつまれる。
たった畳一畳分の畝づくりでこの労力。
農家の方々への感謝の気持ちが沸き上がる。

東京に比べると軽やかな山形の風につつまれて、これから二拠点リジェネラティブ生活 最初のクライマックス、種まきだ。


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