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奄美大島で視覚障がい者の母と広告制作会社をやりながら暮らす話⑦視覚障がい者と暮らす家族のリアル:料理、食事、生活編

前回はこちら。

前回は、中途視覚障碍者という言葉についてお話しました。
今回は、視覚障がい者と暮らす家族のリアルについてお話したいと思います。


見えづらくなった視界をどうするか

母が黄斑ジストロフィーと認定されたのは2019年。第3回でも書いたようにそれまでは専業主婦を経て広告制作の仕事をしていました。

料理も得意で、読書や映画も好き。化粧品やファッションも好きで、雑誌も好き。私はもともと雑誌のライターをしていて、それから小説家としてデビューしているのですが、私が文章関連の仕事を選んだのは母の影響もあると思います。

料理、読書、映画、化粧品、ファッション、雑誌。

これらはかなり視覚に頼ることが多い趣味です。けれど、目が見えづらくなったからといって、それらを全部諦めていたら、母はもちろん、一緒に暮らす私自身もしんどいです。

ところが、最近は便利なグッズがたくさんあるんですよ!

母がどんな風に暮らしているのか、一部ご紹介いたします。

白いまな板と黒いまな板の違い


現在、母は全盲ではないので、今も料理をしてくれています。

ただ、例えば白いまな板の上にある大根などがよくわかりません。

健常者にはわかるこういった境目が母はわかりにくいのだとか。

そういう人のためにあるのが、黒いまな板。こうすればコントラストがはっきりして、大根を切ることができます。

見てみれば境目のわかりやすさが一目瞭然。

お箸とテーブルの配色とコントラスト


また、茶色や黒のお箸で種類が異なるものがよくわかりません。また、テーブルが茶色や黒の場合、お箸がテーブルに同化してどこにあるかわからないことも。

こちらもテーブルの色とお箸の色が混ざってしまってわかりにくいですよね。

うちにあるのが、この白と茶色のお箸。こういったデザインのものなら、違う種類のお箸を使ってしまうこともなく、また、2トーンカラーならテーブルや食器の色がそれぞれ違っても背後と同化することが少ないです。

こういったお箸なら、テーブルやお皿が白でも茶色でも黒でもわかりやすい!

と、偉そうに書いていますが、こういったことも、私自身、母と暮らすようになってから知りました。

「目が見えにくい」ことは、日常生活において非常に不自由であるのが、誰でも想像ができると思います。
しかし、「どういった部分で不自由さを感じるのか」の詳細は、本当に身近で暮らしてみないとわからないことなのではないでしょうか。

電子機器のスイッチ類はどうするか

また、お風呂の追い炊き、お湯張りなどのスイッチ、レンジや炊飯器などのスイッチ、ストーブや加湿器などのスイッチ、ラジオの周波数、ボリュームなどのスイッチもわかりにくいようです。

文字が読みにくい人には、こういったスイッチはかなり難易度が高いです。

そんな時に便利だったのが、前回でも書いた「網膜色素変性症の患者・家族の集い」での福祉機器展示会で購入した、突起のあるシール。

先日は、「ラジオのボリュームのボタンにシールを貼って」と頼まれました。

見えにくいですが、VOLボタンの+部分に突起のあるシールを貼っています。


それまでは、ボリュームと周波数のボタンが隣合っているため、ボリュームを変えようとすると、周波数が変わってしまいラジオが聞けなくなってしまうことがあったそうです。
ですが、このシールを貼ることで、ボリュームのボタンと周波数のボタンの位置がわかるようになったとか。

いつかは欲しい、シール型音声メモ『タッチボイス』

福祉機器展示会では、他にも体温計ほどの大きさで附属のシールに「しょうゆ」「ソース」など録音をできる『タッチボイス』というグッズもありまして。

本当、こちら視覚障害の方にはめちゃくちゃ便利だと思います!

要は同じ形の容器だと、触っただけでは何が入っているのか、視覚に障害があるとわかりにくいですよね?

容器に輪ゴムなどをつけて「1本の輪ゴムは醤油」「2本の輪ゴムはソース」などを決め、暮らしてらっしゃる方もいらっしゃるそうですが、これ、現在、目が見えている人でも普通に考えてわかると思うんです。

ちょっと醤油足したいと思っただけでも、容器を探して、さらにどの容器かを輪ゴムの数で見極めなきゃいけないのってめちゃくちゃ面倒くさい。

そのうえ、輪ゴムが切れたり、ずれたりすることだってあるわけで。

そんな時、こういった音声を録音できるシールがあれば、シールを押せばすぐにその容器に何が入っているかがわかるんです。

使用例はこちら。詳しくは株式会社システムギアビジョンさんの公式サイトへ!

他にもいつも飲む薬の瓶に薬の名前、いつ飲むか、毎回何錠飲むかを録音して貼っておいたりもできるそう。なんと洗濯用の耐水チップもあり、お洋服にも使えるのだとか! もうめちゃくちゃ便利。

こちらは、定価3万9900円。
福祉機器の中では、日常用具給付金という各自治体で異なる助成金が適応される道具もあるんですが、この道具は現在、私と母が住む奄美市では、助成金の適応がされないそうで。

もちろん、各自治体、いろんなご都合があるとは思うんですが、こういった機器が視覚に障害を持つ人に求められているということは、知っていてほしいことだったりします。

さて、次回は、視覚障がい者と暮らす家族のリアル:ファッション&メイク編をお送りしたいと思います。


こちらの記事はstand.fmにて、AI音声読み上げ機能で作成した音声でも配信しています。
母と暮らすようになって、音声読み上げ機能を使うことも増えたので、こういった機能はぜひ進化してほしいところ!

もしよろしければ聞いてみてくださいね。


【今日のつぶやき】
年末年始バタバタで更新が滞っておりました……。しかし、元旦から母と二人、住んでいる奄美大島から船で約3時間半ほどの島、徳之島に行けてよかったなあ。そのうち、旅行記も書きますね!

Header photo by nobuaki



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三谷 晶子
いただいたサポートは視覚障がいの方に役立つ日常生活用具(音声読書器やシール型音声メモ、振動で視覚障がいの方の歩行をサポートするナビゲーションデバイス)などの購入に充てたいと思っています!