マガジンのカバー画像

海部公子という生き方

20
洋画家、陶芸家であり、「ゴッホの手紙」などの翻訳でも知られる硲伊之助。その弟子であり、硲の精神を受け継ぐ海部公子さんの人生をたどります。
運営しているクリエイター

#茅葺き屋根

#10 海部公子という生き方

#10 海部公子という生き方

 石川県加賀市山中温泉の山奥で、ダムに沈む寸前の民家に出会った硲伊之助と海部さん。この家を同じ加賀市内の吸坂(すいさか)町に移築することになるのですが、吸坂町は古九谷と同じ江戸時代初期に「吸坂焼」と呼ばれる焼き物が作られた場所でした。二人は運命的にこの地と出会い、窯を構える覚悟を決めます。多くの職人の助けを借り、九谷焼に絵画表現を模索する日々が始まりました。

経済的に苦しい生活を覚悟して 東京か

もっとみる
#9 海部公子という生き方

#9 海部公子という生き方

 海部さんは20歳の時に硲伊之助に弟子入りし、共同生活を始めました。東京からどのような経緯で石川県加賀市吸坂町へと移ったのでしょう。大きな動機になったのが、現在も暮らす築400年と言われる茅葺き屋根の古民家でした。そこにも手仕事への深い洞察があります。経済的に苦しい生活を、ひと肌脱いで支えてくれた人たちもいました。 

(筆者注:硲伊之助は1951年〈昭和26年〉、当時56歳ころから陶磁器制作のた

もっとみる