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バスタフェロウズ シュウ攻略感想

※個人の感想です
※ネタバレあり

 本作のヒロインはテウタ。職業は記者。成人に達しているヒロインは、乙女ゲー界でははわりと少ないので新鮮である。
 舞台は現代のアメリカのニューヨークっぽい架空の都市『ニューシーグ』だ。当方、ニューヨークに住んだことがないので実際のニューヨークとの比較はできないが、乱立するビル、煌めくネオン、ダイナー、モーテル、バーガーショップ、銃、スラム、ガムをクチャクチャさせた巨漢、バカデカいアイスクリームといった、我々が映画とかでよく見るアメリカの大都市=ニューシーグという気がする。

 テウタは過去に兄を殺された(犯人は謎)過去を持ちながらも明るくて一生懸命なタイプ。「健気」とは少しちがうのだが、コミュ力が高く友人も多そうで陰がない。いちいち傷つき仕草をしてこないので好感度大だ。
 私は自己投影夢女子タイプの乙女ゲーマーではなく、ヒロイン見守り型ではあるが、どんなヒロインでも無条件に愛せるわけではない。見守り型のプレイヤーがみんなヒロインちゃん大好きっ子だと思われたら困る。特に私はむしろヒロインの好き嫌いが激しいタイプなので、馬が合わないヒロインだと見守りにも支障をきたすのだが、その点テウタは合格である。

 バスタフェは(架空の)現代アメリカが舞台なので魔法使いとか騎士とかは出てこないのだが、ファンタジックな要素として、テウタの持つ特殊能力があげられる。
 テウタは時間を遡って、過去を変える力があるのだ。ただ、龍神の逆鱗(『遙か3』)みたいに自由自在に過去に行けるわけではなく、「短時間だけ」「必ずしも行きたい場所には行けるわけではない」「テウタ自身の姿では過去に行けない」「過去に行った後は体調を崩す」など、能力にはかなりの制約がある。
これほどの制約の中では思い通りに現在を改変できるわけがないので、テウタの能力はいざという時の隠し玉みたいな使われ方をする。
 しかしこの能力がきっかけでテウタは、弁護士のリンボ、バウンティハンターのシュウ、検死官のモズ、美容整形外科医のヘルベチカ、ハッカーのスケアクロウと出会う。
実はこの5人には、表の法律では裁けない事件を「解決」するという裏稼業がある。それも慈善事業ではなく、多額の金銭が動く。ハッキング、殺人、捏造、不法侵入、書類改ざん、手段はなんでもありで、依頼人もしくは犯人から金銭を取得して山分け。やっていることは犯罪なのだが、彼らのターゲットが彼らに輪をかけて悪い奴らなのでその辺は気にならない。必殺仕事人形式だと思えば大体あっている。
 彼らと知り合って、テウタは事件に巻き込まれていくのだ。

 ということで、一周目はシュウ。
 シュウはバウンティハンター、つまり賞金稼ぎだ。犯罪者や賞金首を捕らえるのが仕事なので、荒事ならなんでもこなすチームの戦闘要員である。銃の扱いにも長けた凄腕のスナイパーだ。
 強面ではないのだが、優しげでもない。普段はぼんやりしていてやる気なさげというか、良く言えばアンニュイなのだが、いざとなると目に光が宿る。シュウは見た目も含めて、銀魂の銀さんからギャグと糖尿成分と下ネタを抜いた感じだ。
 ヘビースモーカーで長身猫背、アンダーグラウンドの危険な匂いを持つ大人の男、「やれやれ、仕方ねぇなぁ」と出ていってかっこよく決めるところは決める。それがシュウだ。

 まだ1周目なのでよくわからないが、バスタフェ全体の大きなストーリーの柱として、『ルイ・ロペス』という組織が登場する。殺傷能力の高いウイルスを開発したり、不法移民で人身売買的ビジネスをしたりと、とにかく悪いことをやってるらしい。組織を調べて真相に迫った者は、次から次に消されていく。警察内部にも構成員がいて、テウタの友人ルカも巻き込まれる。
 しかしルイ・ロペスも結成当時から悪の組織だったわけではなく、元々は移民の互助組織のような感じだったものが次第に『悪』に変容したようだ。その変容を良しとしない人間の手を借りて、テウタはルイ・ロペスについて知るキーマン、カパブランカとコンタクトをとる。
 シュウのルートにもルイ・ロペスの影は見え隠れするのだが、エンディングまで見ても全容は不明だった。全部のルートを攻略したらわかるのだろうが、その件はひとまず脇に置く。

 シュウはベタベタに甘やかしてくるキャラではないが、気づいたらそばにいて、ボソッと不器用な慰めや助言を発してくる。要所要所でさりげなく優しいのだ。無愛想ではあるが何だかんだ面倒見はいいし、冗談やからかいを口にする茶目っ気もある。
 コンニャロウ! かっこいいな!
 口が上手いわけではないのに、「こいつは女にモテる」と本能的に感じる。シュウはヘルベチカみたいにわかりやすい一般モテではなく、遊びと割り切ったイイ女が勝手に寄ってきそうな雰囲気があるのだ。関係を持っても後腐れなく済みそうで、プレイボーイタイプではないのに適度に遊んでそうだ。少なくとも女っ気皆無の童貞には見えない。

 テウタは大人だし、察しの悪い女ではない。シュウが纏っている夜のムードや危険な香りをちゃんと感じ取っていて、「シュウには何か別の顔があるんだろうな」とプレイヤーにもわかるような描写がちょいちょい出てくる。
 そして「やはり」と言うべきか、シュウは合法の範囲内に収まるバウンティハンターの他に、裏の顔を持っている。金目当ての殺人を生業にする暗殺者のリストを手にしているシュウは、そのリストに載った暗殺者を探し出しては殺しているのだ。
 シュウはそのことを仲間には隠してはいないが、いくら銃規制が緩い国とはいえ殺人がオッケーなわけはないので、おおっぴらにしていいことだとも思っていない。シュウの仕事について、仲間は見て見ぬふりで干渉しない。気にしていないわけではないが、本人が話さない限り踏み込まないのだ。
 しかしそこで踏み込んで聞いてくれるのがテウタ。
 シュウが暗殺者を殺してまわるようになった経緯は、彼の生い立ちと密接に結びついていて、それがシュウルートの展開につながっていく。

 シュウは『殺人者殺しの殺人者』なのだが、別に正義感からそれをやっているわけではない。金目当ての暗殺者殺しはもともとシュウの銃の師匠(女性)がやっていたことで、師匠亡き後シュウがそれを継いだ形だ。
 「お師さんの意志を継ぐ=暗殺者殺し」が、シュウの生きる目的になっているのだ。それだけでもシュウがいかに師匠を慕っていたのかがわかる。
 なにしろ捨て子だったシュウにとって、師匠は母親代り。師匠の子どもであるヤンはきょうだいみたいなものだった。いささか特殊ではあるものの、師匠とヤンとシュウは仲の良い家族だったのだ。
 師匠とシュウとヤン、家族のように暮らしていた3人だが、ある日突然それが壊れる。帰宅したシュウが見たものは、倒れた師匠の懐を探っているヤンの姿だった。師匠はすでに亡くなっていて、ヤンは姿をくらませる。手帳(例の暗殺者リスト)のラストページと、三人で撮った写真を奪って。
 殺した瞬間こそ見ていないものの、状況から考えて師匠を殺したのはヤンだと判断したシュウは、残された手帳に載っている暗殺者を殺しつつ、行方知れずのヤンを追っていたのだ。

 そのヤンなのだが、ある日突然現れて、銃をテウタの背に当てて脅すという物騒なやり方でシュウと接触してくる。
 中性的イケメェン……!! と身を乗り出したやつは多いのでないだろうか。
 ヤンはシュウに対して『クローザー』と呼ばれる暗殺者を始末するための協力を依頼する。報酬はヤンが持ち去った手帳のラストページと家族写真である。
 クローザーは、殺しのターゲットと近しい人間を人質にしてターゲットを自殺に追い込む。ターゲットの自殺を見届けたあとは人質も殺すというゲスな暗殺者で、師匠の暗殺者リストのラストページに載っている。
 ヤンへの怒りで我を忘れていたシュウだが、冷静に考えれば、欲しいものは手にできるしリスト上位のクローザーは始末できるので悪いことは何もない。
 ということで、シュウはヤンへの感情は一時置いて、仕事を引き受けることに。
 スケアクロウたちにも協力してもらい、上院議員を狙撃するつもりのクローザーを逆に狙撃する計画を練る。
 計画は完璧だったが、クローザー殺しは失敗に終わる。クローザーはそこに現れなかったからだ。現れなかったどころか、上院議員はヤンによって狙撃され、シュウはその実行犯の濡れ衣を着せられ逮捕されてしまう。その間にまんまとヤンは逃げる。シュウはヤンの代わりに逮捕されたということであり、つまりはヤンに嵌められたのだ。
な、なんやて?
と、このへんから「もうちょいゆっくり説明を頼む」としか言いようがない怒涛の展開となる。
 テウタたちはシュウの死を偽装。濡れ衣で逮捕されたシュウを事故死したと見せかけて助け出すことに成功する。

 肝心の恋愛面だが、シュウがテウタに『家族』の話をしたあたりから二人の距離はずいぶん近づいていたのだが、テウタは絶体絶命になったシュウを見て、「彼のために必死になった自分」を自覚した感じがした。
 シュウの方も「あなたが大事だし、好きだし、淋しいから死ぬな」とテウタにはっきり言われたことで、「俺にそんなことを言ってくるやつに初めて会った」となる。
 これまでシュウが親しくなった人は彼のプライベートには深く踏み込んでこなかったんだと思う。薄情なのではなく、深い事情や彼の過去を察してあえて聞かないという、距離を保った付き合い方だったのではないだろうか。
 シュウも相手に気を遣わせるのが面倒だからと、わざわざ自分のことを話さないタイプだ。シュウの生業や無口な性格も手伝って、そういうさらりとした関係が彼にとって当たり前だったんだと思う。何度も言うが他が薄情でテウタが優しいとかそんな話ではない。
シュウはいつ死ぬかもしれない仕事をやっている自分に対して「死なないで」と真っ直ぐに言ってくる人間に初めて会ったのだ。そんな人間がいることに驚いて、さらにその人間を「いいな」と思っている自分自身にも驚いた感じがする。
 ともかくシュウとテウタは、ここではっきりお互いヘの好意を意識したように見えた。

 シュウを死んだことにして警察から逃し、ほっとしたのも束の間。再びヤンがテウタに接触してくる。
 そこでヤンの真の狙いが明らかになる。シュウ本人は気づいていないが、実はシュウはクローザーに命を狙われているという。
 暗殺者殺しは元々シュウの師匠がやっていたことなので、師匠亡き後その子どもがそれを引き継いだという話が暗殺者界隈(?)に広まるのは分かる。
 特にクローザーは暗殺者リストのラストを飾るやべーやつで、実は師匠を殺したのもヤンではなくてクローザーである。また、ここで師匠が『ルイ・ロペス』(移民からなる闇組織)の元構成員だったことも明らかになる。クローザーは組織を抜けた師匠を、組織の命令で殺した。殺害直後に帰宅したシュウは、それをヤンがやったと誤解したのだ。
 つまり現在、暗殺者たちとヤンを探すシュウ、そのシュウを消そうとするクローザー、そのクローザーを狙うヤン。この三つ巴状態なのだ。ヤンはそこからシュウを逃がすためにひと芝居うったのだ。クローザーからシュウを守るために一番安全な場所(=刑務所)に一時的に入ってもらい、その間に自分がクローザーをぶっ殺す予定だったとヤンは言う。クローザーはシュウの存在は知っているが、ヤンのことは知らないからだ。
も〜〜〜! 待って待って! 情報が多い!
テウタじゃなくても「もうお前ら二人で協力してクローザーを殺せえ!」と言いたくなるが、今までずっと師匠殺しの犯人として追っていたヤンからその話を聞かされたシュウが素直に信じるかは分からないし、ヤンのせいで刑務所にぶち込まれそうになったのはつい数日前のことだ。ヤンもシュウと同じように口数の少なさが誤解を受けそうなタイプなので、ヤンが「説明するより、自分一人でクローザーを殺すのが一番早くて安全」と思うのもわかる。
 だが、いずれにせよヤンがシュウを守りたいと思っている気持ちは本物で、ヤンがテウタに言った「お前なら俺の気持ちが分かるはず」という言葉は、ストーリーが終わる頃にヤンのあれこれが判明すると色々と深読み可能だ。

 テウタはヤンとのやり取りをシュウに話して聞かせるのだが、やはりシュウは師匠を殺したのがヤンではないと薄々思ってはいたようだ。それなら話は早い、二人で協力せえとまたしても思ったのだが、クローザーを補足しているヤンと会うにはどのみちシュウの方でもクローザーの場所を知る必要がある。シュウがクローザーと接触すれば、クローザーを狙うヤンもどうせその場に現れるからだ。
 まどろっこしいな、もう!
 仇であるクローザーとの最終決戦ムードの中、シュウはテウタに本音を話す。本音と言っても相変わらず回りくどいというか、はっきりと「テウタお前が好きだ!」みたいなことは言わない。「あんたは俺のことを特別だと感じてくれている」というセリフに動揺したテウタにすかさず「わかる。俺も同じだから」という被せ方をするシュウ。しかもそれに対してテウタが何か言う前に「だから悲しませたくない」と続ける。
 おいおいおい! さっきの「俺も同じ」のあたりをもうちょい詳しく! と思いながらも次の言葉を聞きたくなる絶妙の返しだ。
 カッコイイな、コンチクショウ!!
 危険と隣り合わせの自分の立場を良くわかっているシュウは、好きな女をそれに付き合わせたくないと思っている。ごちゃごちゃ抜かしてはいるが、要は「自分は危険な身の上だからお前を巻き込みたくない」みたいな話なのだ。
 しかも「他に好きなやつを探せ」ときた。
 大人の男らしく慎重で誠実だが、まどろっこしくもある。それにしびれを切らして「嫌なら嫌、好きなら好きでいいじゃん。付き合ってみないと分からない」とバッサリいくテウタ。心配事をシミュレーショする性格のシュウに対して、テウタの考え方はとにかくシンプル。でも、テウタのそういうとこにシュウは惹かれたんだろうなと思った。
 これでシュウも腹を決めたらしく、「巻き込まないようにするけど、巻き込んだらごめん」とテウタたちを遠ざけるのをやめる。
 シュウのいいところはぶっきらぼうな自分の言葉を、直情型のテウタが勘違いしないように「言ってることわかるか?」といちいち尋ねるところだと思う。

 クローザーの居所を突き止めたところでシュウはリンと二人で話して師匠の死の真相を知り、二人は協力体制に入る。しかし、先手を打たれ、テウタがクローザーに拉致される。
 ここからはシュウとリン、それからチーム全員で協力してシュウの死を偽装したりクローザーとテウタの居場所を突き止めたりするのだが、その間のテウタはクローザーにびっくりするくらい殴られる。モブに犯されかけるヒロインや攻略対象に殺されるヒロインは見たことがあるが、ここまで容赦なく殴る蹴るされたヒロインは初めて見た。
 しかもその後でテウタは、シュウの死(実はヘルベチカによる偽装)とともにシュウからの伝言を知らされるのだが、ここで選択肢が出る。
 「自力で逃げ出す」もしくは「何もしない」。
 伝言の真の意味は「シュウは生きている。信じて待て」なので「何もしない」が正解だ。そちらを選ぶとシュウがクローザーを狙撃してテウタを助け出すハッピーエンドとなる(ちなみに自力で逃げようとするとクローザーに殺され、テウタの死に怒り狂ったシュウがクローザーを惨殺するというバッドエンドになる)。
 ハッピーエンドらしくテウタを抱きしめて無事を確かめるシュウの声がとにかく優しいし、話す言葉が愛情に溢れている。テウタを失いかけて、シュウは「やっぱり彼女から距離を置くなんて無理」だとはっきりわかったんだろう。

 さて、シュウが報酬としてヤンから受け取った手帳のラストページには「我が息子シュウ」という言葉があり、師匠の実子はヤンではなくシュウだったことが明かされる。しかも師匠が亡くなったのは、クローザーの襲撃からヤンをかばったせいだ。ヤンは自分が実子ではなかったショックと、自分のせいて師匠が死んだショックを同時に受け止めなくてはならなかった。
 特に「自分のせいで師匠が死んだ」というショックはかなりのもので、ヤンはシュウへの負い目と申し訳なさから、一人で仇討ちを決行しようとしたのだ。
 いやー、でもやっぱりその場に残ってシュウと協力した方が仇討ちには早道だったんじゃないかな、とは思ったが、シュウとヤンの立場が逆だったとしても、シュウはヤンと同じ行動(一人で仇討ち)をしそうな気がする。シュウとヤンの思考回路はやっぱりよく似ていると思う。
 あと、ヤンは実は女性だったのだ。これには、ヤン登場時「うひょ~! そっけない態度の中性的黒髪美青年!!」「もしやヤンを攻略する隠しルートがあるのでは?」と色めき立ったプレイヤーもスンッとならざるをえない。
 ヤンがシュウに対して抱いていた感情が家族愛なのか恋愛なのかはっきりはわからないが(「もしや恋愛感情があったのかも?」と思わせるようなやり取りはあるものの)、どちらであっても彼女はテウタたちと同じくらいシュウを大事に思って行動している。
 その後、クローザーが上院議員殺害の真犯人であることと、移送中に事故死したシュウ(ほんとは死んでないけど)が犯人ではなかったことが大々的に報じられたことで、ヤンがシュウを守るために全てのセッティングをしていたことがわかるからだ。テウタたちがわざわざ死を偽装しなくても、ヤンがクローザーを殺せばシュウは無事に解放されただろう。

 そしてラスト、シュウはテウタの部屋にやってくるのだが、テウタが言っているようにシュウがわざわざテウタに会いに部屋に来たのはこれが初めて。
 死と隣り合わせの生活ゆえ、互いに好きだと分かっているくせに「他に好きなやつを探せ」とテウタを遠ざけたシュウだが、実際テウタに死が迫ったことで考えが変わったのだろう。いつ死ぬかはわからないからこそ遠ざけようというのではなく、いつ死ぬかわからないからこそ「好きなら好きでいい」とテウタと同じようにシンプルに考えたのだと言う。
 こちらとしては、慎重居士のシュウからはっきり「お前の事が好きだ」「他に好きなやつを探したりするな」という言葉を引き出せて感無量である。この時にスチルが出るのだが、シュウはベッドの上に腰掛けてその膝の上にテウタを乗っけている。大事な告白イベントでこんな事を言うのもなんだが『椅子前座位』という感じがする。これは四十八手でいうところの『抱き地蔵』だ。あまり人が背後にいない状態で各自ググって欲しい。
 何が言いたいのかというと、このスチルは「なんかエロい」ということだ(ひどい結論)。
 シュウは普段から人の意見をちゃんと聞いてから色々と判断する。いちいち「わかるか?」と確認する。だがこの告白シーンでは、テウタがシュウの好きなところを挙げている最中にも関わらず、シュウは「それはあとじゃだめ?」と途中で遮ってまでテウタに触れてくるのだ。
 もしシュウが女に手の早いタイプのキャラだったら今後が不安になるというか、「人の最後まで話を聞け! お触りはその後!」と思ってしまうところだ。だがシュウは、前述したようにかなり慎重なタイプだ。そんなシュウがこのイベントではテウタがびっくりするほどの積極性を見せている。
 そこからのキスも良い意味でがっついているというか、「もう待てねえ」という感じがしてすごく良かった。ラストは「俺の世界から消えないで」というシュウの懇願で締められる。
 だが何度も言うが、これは、ここまでテウタを突き放してきたシュウがやるからこそいいのである。

 エンディングを見た後は『後日談』的なルートが開くのだが、ここではシュウと想いを通わせたテウタが「私とシュウってほんとに付き合ってんのかな」とスケアクロウに相談するところから始まる。
 シュウから「好きだ」とは言われたしキスはしたけど、「付き合おう!」みたいなことは言われてないし、デートらしきものもしていないと言うテウタの話を聞いて、スケアクロウ(と仲間たち)がシュウに「もうちょい恋人っぽくなんとかしろよ」と迫るのだ。
 前述したように、エンディングではテウタとシュウがベッドの上で『抱き地蔵』の体勢でキスしていたし、その後暗転したので、私はてっきりそのまま致したのかと思っていたが、そういうわけではなかったようだ。

 しかしシュウが恋人らしい態度を取らなかったのには理由があった。シュウの頭には昔食らった弾丸が残っていて、その摘出について悩んでいたからだ。
 手術によって摘出は可能だが、頭の手術なので当然危険はある。そのまま弾丸を残しておくという選択肢もあるが、いつ何が起きるかわからないという危険は残る。
 手術を受けても受けなくてもリスクがあるので、はっきり恋人になってしまうとその件でテウタを苦しませるに違いない。それならいっそ「他に好きなやつを探せ」と言おうかとも思っていたらしい。
 まさかあのエンディングの後で、2回目の「他に好きなやつを(以下略)」が画策されていたとは。相変わらずシュウは最悪パターンの脳内シミュレーションに余念がないのだが、お互いやっぱ好きだ!ということで軽いキスからのディープキス(多分)。
 言い忘れていたがここは外だ。しかも人通りはそこそこありそうな場所である。さすがはメリケン。路上での情熱キッスは洋画とか洋モノのドラマとかでよく見るやつだ……、と思った。
 その後、「お前は俺の女だ」「私はあなたの彼女よ」と、言い合って、シュウの手術シーンとなる。
 手術は無事に成功し、ラストはシュウがテウタの両親に「お嬢さんとお付き合いをさせていただいてます。よろしくお願いします」と電話で挨拶して「完」となる。

 乙女ゲームでは色んな恋愛イベントが起こるが、意外と見かけないのが「攻略対象がヒロインの身内、保護者に挨拶をするイベント」である。
 実際私はそれをしてのけたキャラを今までこのシュウと『下天の華』の羽柴秀吉くらいしか見たことがない。
 「両親へのご挨拶」は、師匠とヤンとの『家族』や、スケアクロウたたちとの『家族っぽさ』を大事にするシュウならではのイベントだと思った。「自分はこの子と真面目に付き合ってますよ」という真剣交際ぶりがはっきりわかるから私はこういうご挨拶イベントが好きだし、キャラの株も上がる。
 シュウは、アンダーグラウンドなキャラならではの良さとともに、そういうキャラ特有の「将来への不安」を併せ持っている。だが、このイベントがくることによってシュウという男に対して「安心感」や「誠実」が付与されるのだ。シュウは特に『家族』にこだわりが見えるので、テウタだけでなくテウタの家族とも本気で『家族』になりたいんだなと、その行動が響いたのかもしれない。

 また、小柄なテウタと長身のシュウ、このカップリングは二人の体格差が非常に魅力的。身体の上に乗っけたり抱きしめたりキスしたりという接触以外でも、遊園地でのイベントで向かい合って観覧車の中に座る2人の身長差がいいなと思った。体格差カップリングが好きな人にはかなり刺さるのではないかと思う。
 体格差以外にも、テウタとシュウの組み合わせは、猪突猛進と慎重、子どもっぽさと大人っぽさ、饒舌と寡黙など、ギャップの宝庫である。
 バスタフェキャラの中でシュウは、「どこ行きたい?」「何食べたい?」の問いに対して「なんでもいい」と答えそうなキャラナンバーワンだ。私などは「そういう返事が一番困る」と苦虫を噛み潰したような顔をしてしまうのだが、テウタは自分のやりたいことや行きたい場所に食べたいもの、全てをはっきり主張するタイプ。だからシュウの返答にも特にストレスを感じなそうだし、シュウもテウタといると楽なんじゃないだろうか。
 バッドエンドも含めて最後までストーリーも恋愛も楽しませてもらった。

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