コミュニティのエンゲージメントを高める3つの魔法 - Delight,Spotlight,Co-create
こんにちは。この記事は、cmktアドベントカレンダー2021の5日目の記事です。
2019年に始まったcmktアドベントも今回でもう3回目になります(2019、2020)。すごい。書いてくださるブロガーの皆さん、やろう!と言い出してくれる運営の大野さん、本当にどうもありがとうございます。カスタマーマーケティングのコンセプトや課題、そして未来を共有してくれる方々が増えたことで、#cmktはもはや私個人の領域を超えて成長しているように見えます。感慨深きことこの上なし。
さて私個人はというと、昨年8月からジョインしたAsanaでコミュニティマネージャーをやっておりまして、このところコミュニティにどっぷりです。とはいえコミュニティの構成要素としてカスタマーサクセスやテックタッチ、カスタマーエクスペリエンスも含まれているし、相変わらず事例制作にもたまに関わっているので、広い意味ではやっていることはさほど変わらず、相変わらずカスタマーマーケティングの世界に生きています。
Asanaの日本コミュニティ立ち上げで私がやっていること
Asanaのコミュニティは、もともと事業戦略にコミュニティががっちり組み込まれていたこともあって、アメリカ本社主体かつグローバルレベルで立派なプログラムがあり、目標や成果指標、イベントのフォーマットに至るまで、フレームワークがきっちりできていた取り組みでした。
私がやっていることは、それを日本にどうやって持ってくるか、何を日本で提供して何をやらないか、何を独自でやって何をグローバルのものを活用するか、を取捨選択/創作/捨象/翻訳/翻案/連携しつつ、最終的にはグローバルレベルでの目的と成果指標(Asanaの場合はOKR)に落ちていくように設計して実行する、ということです。
それを具体的にどうやったのかについてはとても全部は書ききれませんが、日本でコミュニティを立ち上げた最初から今に至るまで一番大切にしているのは、コミュニティメンバーの皆さんとの関わりの部分。英語で言うと「エンゲージメント」と呼ばれるところです。
(ちなみにこれ以外にどんな要素があるかというと、メンバーを増やすための施策を行う、イベントを開催する、フォーラムの運営と活性化、あともちろん社内のステークホルダーとの調整などの要素があります)
「エンゲージメント」=「自分ごと化」
「エンゲージメント」というのは界隈ではよく聞く言葉ですが、英語なのでいまいちピンとこないですよね。
私はコミュニティにおけるエンゲージメントとは、「自分ごと化してもらう」ということではないかと思っています。
よくコミュニティを成功させるための一つの要素として、メンバーにコミュニティを「自分ごと化」してもらい、コミュニティを「自走」させることが大事、って言われますよね。
そのためにベンダー側のコミュニティマネージャーがコミュニティメンバーにやってほしいことって色々あると思います。例えば「イベントに参加してほしい」「登壇してしゃべってほしい」「ブログとかTwitterとかでアウトプットしてほしい」 「イベントを自ら主催してほしい」「他の人からの質問に答えてほしい」etc
でも、コミュマネやってる方ならよく分かると思いますが、これって全然簡単じゃないですよね?
だって自分ではない他の人に、しかもビジネス上の取引でなく個人のモチベーションをもとに(メンバー自身の業務やキャリアに結びついている場合も多いとはいえ)、こちらの都合よく動いてもらうなんて、はっきり言って無理じゃないですか。無理じゃないにしても、そうそううまくいくものではない。うまくいったとしても、それを再現するのは難しい。だって他の人のやる気次第だもの。
製品のユーザーコミュニティは、ベンダーからの一方通行では成立しない。そこを自分の場だと思ってGiveしてくれるメンバーがいないと成立しない。でも「お願い」しても必ずGiveしてくれる訳ではないし、思っていた通りの方法でやってくれるわけでもない。
GIveしてもらうには、まずコミュニティのビジョンに共感してもらい、参加することにメリットを感じて、やる気になってもらわないといけないわけなんです。
今日はその「エンゲージメント」を高めて、「自分ごと化」してもらうために、私が行っている3つの工夫についてご紹介していきたいと思います。悩めるコミュニティマネージャーにとっての一つのヒントになれば幸いです。
メンバーにコミュニティを「自分ごと化」させるための3つのステップ
これまでやってきたことをまとめたら、この3つになりました。英語が韻を踏んでいるのは偶然です。
コミュニティに新しく入ってきてくれた人に、コミュニティを「自分ごと化」してもらうためのステップ、と思ってもらえると良いかと思います。
有名な山本五十六の「やってみせ」という人を動かすための格言がありますが、これのコミュニティ版のようなものだと考えてもらえるとイメージが湧くのではないかと思います。(そんなに立派なものではもちろんないですが、、)
Delight : 喜んでもらう
コミュニティメンバーからのGive(つまり自発的な行動)を引き出すためには、まずはコミュニティに入って良かった!嬉しい!と思える体験をしてもらえることが大事だと思っています。特に、新しい人がコミュニティに入ってきたときの最初のエクスペリエンスというのはとても大切。
何が喜ばれるかは人によって違うので、その人のことをよく知らないと何をしたらいいか分からないですが、まずは何かをプレゼントするというのは誰にとってもシンプルに嬉しいものですよね。特にファン中心のコミュニティではノベルティグッズはとても喜ばれることが多いので、Asanaのコミュニティではノベルティグッズにはとても力をいれています。
また「コミュニティでしか得られない情報」というのはコミュニティに参加する大きな価値の一つなので、Asanaのコミュニティ出来るだけ汎用的な形でメンバーがほしいと思われるリソースを提供するということもやっています。例えばこんな感じ。
歓迎する
新しくメンバー(アンバサダー)になってくれた方にウェルカムキットを送付
Asanaのお祝いキャラクターのステッカーやアンバサダーの認定ステッカーなど
コミュニティ限定のノベルティグッズ
オンラインで世界中どこからでもオーダー可能
イベント主催者にはグッズを支援
大きなイベント開催時には豪華なギフトを送付
メンバーへの限定ギフト
参加申し込みをしてくれた方に、オリジナルのお茶/コーヒー、毎回違うスイーツなどを事前に送付
離れていても、同じ物理体験を共有することで一体感に
メンバーが欲しいと思う情報を提供する
メンバー限定でプロダクトリリースの先行情報などを提供
「ラーニングセンター」をメンバー専用のAsanaスペースに作り、学習用リソース、事例、社内説明資料、動画などを提供
Spotlight : 脚光を当てる
コミュニティに参加して、Delightの体験をしてもらった次は、何らかの形で主体的な活動(アウトプット)をしてもらいたいですよね。
分かりやすいところだと、イベント開催時に「発言する」「Tweetする」さらには「登壇する」「イベントを主催する」などの活動がありますが、Asanaのコミュニティでは、いつものミートアップイベント以外でもみんなで楽しくわいわい盛り上がりながら気軽なアウトプットをしてもらい、公平に表彰を受けられるよう、様々な企画や機会を設けています。
そして、コミュニティの場でアウトプットをしてくれた人に対しては、他の人に見える形で貢献を讃え、感謝し、脚光を浴びてもらうのが大切だと思っています。
前提は「共感」であり、常に共通なのは「感謝」。「お願いする」「お願いされたからやってあげる」という関係ではなく、目指すところに共感してもらい、自ら手を差し出してもらうというのがスタートになります。その結果、貴重な時間を割いて、しかも仕事でもなく自分の時間を使って(仕事だとしても自らの意思で業務時間を割いて)、コミュニティに貢献してくれたことへの圧倒的感謝!です。
こうやって貢献してくれ、他の人の前でスポットライトが当たった人は他のメンバーにとってのロールモデル(お手本)にもなるので、他の方にも良い影響を与えてくれます。
定例のミートアップイベントの他に、コンテスト形式に企画を開催
通常の「事例登壇」「LT」を募る以外にも、「動画コンテスト」「マイタスク選手権」「アドベントカレンダー」など、季節企画やコンテストの形にして公募すると、これまでやったことがない人でも手を挙げやすく、脚光が当たりやすい
フォーラムでバッジを表示
Asanaのコミュニティフォーラムでは、メンバーのアイコンに「アンバサダー」のバッジが表示され、他の人に認知される
また特にフォーラムに貢献してくれる人のアイコンには「フォーラムリーダー」のバッジも表示
メンバースポットライト
グローバルで定期的に発行しているニュースレターで「メンバースポットライト」として、特に貢献してくれたメンバーを紹介するコーナー
Co-create : 一緒に作り上げる
Delightを体験してもらい、貢献にスポットライトを浴びたその先は、コミュニティを当事者として「一緒に作る」つまり「共創(Co-creation)」というのが、コミュニティの目指す一つの理想形ではないかなと思います。
コミュニティのプログラムを一方的に押し付けるのではなく、メンバーがやりたいことを応援し、実現できるものでありたいですし、良いアイデアをもらったら、それを取り入れてさらによくしていきたい。
コミュニティに共感してくれ、当事者として関わってくれるメンバーと共にコミュニティを成長させていき、最終的にメンバーの皆さんの成長にもつながるようになってほしいな、という思いです。
そして、ベンダーが運営するコミュニティならではの点として、「コミュニティからの意見をプロダクトに反映する」という大切なCo-creationがあります。これはコミュニティ単体でできるものではなく、プロダクトチームとの連携が大いに重要になるものなので、一朝一夕にできるものではありませんが、これができるコミュニティの価値はめちゃめちゃ大きいものになると思います。
メンバーのアイデアを取り入れる
ちょっとしたことですが、コミュニティで何か新しい企画を立てる時、私は必ずメンバーの皆さんの意見を募ったり、個別に意見を聞いてみたりして反応をうかがって、フィードバックをもらってから始めるようにしています。
イベントを一緒に開催する
メンバー主催イベントやミートアップの懇親会など、イベントはいつもメンバーの皆さんの手をお借りして一つずつ作っています
コミュニティの意見をプロダクトに反映する
Asanaには、製品開発の過程にコミュニティの声を取り込むというフィードバックループがあります
まとめ
コミュニティを「自分ごと化」してもらうためのステップとして、「Delight, Spotlight, Co-create」の3つを紹介してきました。
コミュニティメンバーに喜んでもらい、感謝&賞賛し、一緒に作っていくことで、コミュニティの運営が主催側・参加側どちらにとっても楽しくなるだけではなく、関わる人たちの成長にもつながると私は考えています。そして、Co-createのあるコミュニティは、決して競合他社には真似できない大きな差別化要因になることも間違いありません。
このステップはそれぞれ1回やっただけで終わりというものではなく、常に組み合わせて繰り返していくことで、少しずつ効果が出てくるものだと思います。タイトルにあえて「魔法」とつけましたが、実は1回でうまくいく魔法なんてあるはずもなく、一つ一つの地道な積み重ねでしか結果は生まれません。
Asanaで実施しているアイデアの例を紹介しましたが、それぞれのコンテンツはコミュニティとオーディエンスの性質によって全く違うとも思いますので、ぜひご自身のコミュニティではどんな形が良いか考えて工夫していただければと思います。
最後に:社内コミュニティの可能性
そして私が今関心があるのは、上記の手法を社内のチェンジマネジメントにも使えないか?という点。
コミュニティという手法は、社内で何かを変革したり、新たなムーブメントを起こして行く際にもとても有効だと思うのです。
例えばTHE COMMUNITY ROUND TABLEが毎年出しているThe State of Community ManagementというレポートにはInternal Community(社内コミュニティ)についての調査結果も載っています。実際に私が知っている限りでも、前職で取材させてもらったRPAの成功事例において、社内でRPAを推進するコミュニティを立ち上げ、手を挙げた人を中心に広げていくことで、ボトムアップ型に浸透したという企業の例が複数ありました。
この観点で知見をお持ちの方、ぜひ情報交換させてください!
それでは、明日以降のアドベントカレンダーもどうぞお楽しみに🎄
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