見出し画像

その後のカスタマーマーケティング2020

こんにちは。この記事は、cmkt Advent Calendar 2020の1日目の記事です。ちょうど1年前の同じ日に、同じようにcmkt Advent Calendar 2019の第一日目の記事として「カスタマーマーケティングのはじめかた」と題してこんな記事を書きました。

さてその時から1年、カスタマーマーケティングを取り巻く状況、そして私自身にもいくつか変化がありました。
このエントリーでは、1年の間でどのような変化があったのか、また逆に変わらなかったのは何か、について振り返ってみたいと思います。

カスタマーマーケティングmeetupの盛り上がりとコンテンツの増加

2019年6月に始めたカスタマーマーケティングmeetupは、コロナの影響などもありましたが、これまで6回開催し、12月に7回目を予定しています(詳細は最後に)。イベントが回を重ねることに、毎回参加者によるたくさんのTwitterやブログでのアウトプットがあり、そしてコミュニティでの議論の成果としての記事なども出すことができました。

1年前はカスタマーマーケティングで検索してもこちらの記事くらいしか見当たらなかったのですが、1年経って、私自身が書いたり企画した記事だけでなく、第三者の方からのコンテンツも少しずつ増えてきているようです。

たとえば、2020年12月1日現在、Googleで検索するとこんな結果になります。

スクリーンショット 0002-12-01 16.37.30

トップ2件がカスタマーサクセス 関連のプロダクトを提供する企業さんのコンテンツだというのは、なかなか興味深いところですね(SEO対策されてますね)。

いずれも、「カスタマーマーケティングの目的はカスタマーサクセス」と定義してくださっているのが、地道な普及活動の成果を感じて少々嬉しくもあります。なぜかというと、もともとアメリカで「カスタマーマーケティング」と言われ始めた際の目的は「LTV向上」「リテンション」など、完全に収益目標にフォーカスしたコンセプトだったからです。これを「カスタマーマーケティングmeetup」の分科会"fundamentals"で議論し、もう少し広く解釈して、「目的はカスタマーサクセス」と再定義をしてみました。結果、カスタマーサクセス文脈での位置付けが明確になり、カスタマーマーケティングというコンセプトを広げやすくなったのではないかと思っています。

このあたりの、「カスタマーマーケティング」の再定義と議論については、Markezineで山田ひさのりさん、岡本剛典さんと一緒に書かせていただいた、先ほどの連載をぜひ読んでいただければと思います。

コロナの影響は?

今年の変化というと、全世界の人々の生活やビジネスに最も大きな打撃を与えた新型コロナウイルスによる影響がまず思い浮かびます。これについては、オフライン→オンラインという手法の変化はあったものの、カスタマーサクセス やカスタマーマーケティングの効用・価値そのものを揺るがすような直接的なインパクトはなかったかと思います。むしろ、ユーザー企業側が事業を一時的に縮小せざるを得ない状況になり、新規投資の決断が遅れるような状況にあっては、新規顧客の積極的な開拓よりも既存顧客のリテンションや拡大にフォーカスが集まるなどの機運も生まれていたと感じます。

手法の面では、物理イベントの開催が難しくなった状況で、一気にデジタルシフトが進み、オンラインの手法に完全に切り替わった年でもありました。カスタマーマーケティングの文脈でいうと、これまでオフラインで開催していたイベント、特にコミュニティのイベントがオンラインに移行したというのが一番大きな変化だと思います。

ユーザーコミュニティのイベントをオンラインで開催し、ユーザー中心に盛り上がりを作っていくのは、オフラインに比べて難易度が高いというのが多くの実践者が感じているところだと思います。今年の春先以降、多数のオンラインイベントが乱立し、参加する側のモチベーションが下がりつつあるのでは?という意見もちらほら聞きます。

一方で、既存のコミュニティをオンラインに移行してうまく行っている例や、オンラインファーストでコミュニティを立ち上げ、成長軌道に乗っているケースなども見聞きします。

来年以降、仮にコロナが収束したとしたら、オフラインに戻るのか、それともオンラインファーストは変わらないのか。予想しても何の意味もないことではありますが、今後が気になりますね。

日本のSaaSビジネスの成長率は引き続き高い

変わっていないどころか、更に加速して成長し、カスタマーサクセス やカスタマーマーケティングの追い風となっているのが、日本のSaaS市場の拡大という背景です。富士キメラ総研の調査によると、SaaS市場は年平均成長率約13%の勢いで急成長しているとのこと。

スクリーンショット 0002-12-01 19.36.00

https://marketimes.jp/saas-industry-report/ より引用)

ご存知の通り、カスタマーマーケティングの背景にはカスタマーサクセス があり、カスタマーサクセス はリテンションとLTV向上が収益の大きな鍵となるサブスクリプション型サービスにとって必須の要素です。
日本のSaaS市場が大きな伸びとともに成長しているという大きな流れにより、今後もカスタマーサクセスというアプローチの重要性、そして人材の需要は更に増していくことでしょう。比例して、カスタマーマーケティングについてもフォーカスを増していくと考えます。

ちなみに上記のデータは2019年の実績を元にした見込みですが、ではコロナの影響は?というと、ALL STAR SAASの前田ヒロさんの見解が、実際のスタートアップの実態を見ているだけあってとても納得感があります。

一方で、ひとくちにSaaS業界と言っても「新型コロナのインパクトは均等ではなかった」と前田氏は振り返る。「コロナが追い風となったのは、オンライン完結型のサービスです」と前田氏はいう。ALL STAR SAAS FUNDの出資先では、AIチャットボットをSaaS型で提供するカラクリ、SmartHR、製造業の受発注業務クラウドを提供するA1Aなどが、コロナ禍にあっても業績好調だった企業だ。
https://signal.diamond.jp/articles/-/371より引用。強調は筆者による)

コロナにより、全体の流れとしてデジタルシフトが進みSaaSの需要が高まる中でも、更にオンラインで完結するSaaSについては追い風となっているということですね。

私自身の変化について

ここからは私自身の話になりますが、2020年8月に転職をしました。現在は、Asanaという外資系のクラウド型ワークマネジメントツールのベンダーでコミュニティ・マーケティング・プログラム・マネージャーとしてユーザーコミュニティの立ち上げを行っています。
入社時には、こんなエントリを書きました。

先ほど、コロナの影響について書きましたが、私自身がじつは「オンラインのみでコミュニティの立ち上げを行っている真っ最中の当事者」でもあります。もちろん前職でオフラインイベントができた頃に比べて様々なハードルはありますが、だからと言って最初から諦めたくないですし(というか諦めたら何も始まらない)、オンラインを前提として、何ができるか、どれくらい壁を取り去れるか、というのを日々試行錯誤しながら何とか立ち上げを進めているところです。

「オンラインファーストでのコミュニティ立ち上げ」についてはまた別途どこかでまとめたいと思いますが、すごくざっくりの所感として私が感じたのはこんなところです。

- オンラインでのエンゲージメント(関係づくり)は一対一が基本
- オンラインイベントは、少人数の方が満足度が高い
- 離れていても、同じ物理体験を共有する仕組みがあると盛り上がれる
- 同期と非同期のコミュニケーションを組み合わせると、コンテンツの可視化とコミュニケーションの継続につながる

コミュニテマーケティングとカスタマーマーケティングの関係

さて、前項で転職の話をしましたが、あることに気づいた方がいらっしゃるかもしれません。

「あれ、長橋さんカスタマーマーケだったのに、コミュニティマーケなの?カスタマーマーケじゃないの?」

・・・そうなんです。今回私が担当している領域はコミュニティマーケティングなので、カスタマーマーケティングという名前ではありません。が、少々乱暴な言い方にはなりますが、コミュニティマーケもカスタマーマーケも広い意味ではほぼ同じジャンルに属していて、根っこは同じ、見ている角度が違うだけだと思っています。

カスタマーマーケティングの文脈でいうと、ゴールはカスタマーサクセス であり、そこから派生してのアドボカシー(顧客からの口コミの発生)なので、コミュニティはいくつかある中の一つの手法ということになります(実際には最も重要な部分ではありますが)。

一方、コミュニティマーケティングはマーケティングの文脈から派生しているので、従来のマーケティングの一部をコミュニティという手法で置き換えて、より効果的なデマンドジェンを目指そうというものになります。
(コミュニティマーケの父の小島さん、もし認識違ったらご指摘ください笑)

このように出自は違うのですが、いずれも「ユーザーを中心としている」「ユーザーから発せられるコンテンツを重要視している」というコンセプトは同じです。なので、多少の建て付けの違いや目的の違い、手法のバリエーションなどの切り取り方は違っていても、大体同じようなところを見ているという認識です。

なので、私自身としては今回の転職により職種を変えたという認識は特になく、今までやってきたことを少々違う角度から更に深めて、違うフィールドで実践しているという感じです。
実際、カスタマーサクセスの文脈でなくても近いことをやっている実感はあります。何より、プロダクトを愛して使ってくれているユーザーさんを発見し、寄り添いながら、ストーリーを可視化し、一緒に盛り上がりを作っていくこと。それを他のユーザーの役に立つ形で発信していくこと、発信を支援すること、は変わりません。

ちなみに、実際「カスタマーマーケティング」という職種で転職しようとしたとしても、この職種での募集はまだとても少ないので、全く同じでなく近しい職種での転職にならざるを得ないということもあると思います。これは決してネガティブになるところではなく、細分化された細かいジャンルにこだわる必要はないということなのかなと思っています。自分のやっていること、やりたいことを、広い視野で見ながら認識し、目指していくことで、「自分はここまで」と制限をつけずに成長を目指せるのではないかと思います。

1年を締めくくるイベントのご案内

さて、これまでこの1年の変化について、市場の変化から私自身の転機まで雑多に振り返ってきました。最後にイベントのご案内です。

次回のカスタマーマーケティングmeetupでは、最後に取り上げたカスタマーマーケティングのキャリアをテーマに取り上げ、今年カスタマーサクセス 界隈で転職された数名の方のキャリアについてお話しいただくとともに、Sansanの山田ひさのりさんとともに今年のカスタマーサクセス界を振り返ってみたいと思います。

こちらはオンライン開催になります。
12月23日、つまりイブイブの日になりますが、いろいろあった今年一年を一緒にわいわい総括しましょう!ご参加お待ちしています。

そして、それに先立って12月14日にはコミュニティマーケティングのコミュニティであるCMC_Meetupの振り返りイベントが予定されています。

こちらは会場参加とオンライン参加のハイブリッド型という新しい取り組み。
私はヤプリさん会場にて、コミュニティのオンライン化についてヤプリの島袋さんChatwork藤井さんと一緒にお話しする予定です。コミュニティ属性の方は、こちらもぜひご参加を。

奇しくも、カスタマーマーケティングとコミュニティマーケティングの二つのコミュニティイベントが近い期間に開催されるという展開になりましたが、実際運営メンバー同士は重複もあり、つながりも多く、仲良くやらせてもらっています。

そんなわけで、今日から始まったcmkt Advent Calender 2020、明日からのポストも楽しみに読ませていただきます。
それでは皆さま、Have a nice rest of the year!


いいなと思ったら応援しよう!