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音ゲーで見つけた異様に好きな声で歌う人と気がついたら2ショットを撮っていた話

2023年春夏、私は荒れていた。
荒れていた、というのは自身の心身も身の回りもともに、である。

というのも、まず持病が悪化してしまい、当時フリーランス業であったために、収入が途絶えた。途絶えた、というか、「この一ヶ月の働きじゃあやっぱり払えないや!」と投げ出された。

契約書も交わさない個人同士の口約束の取引であったために、どうすることもできずに、すべてがおしまいになった。

体調を崩したアラサーぽっちゃり貯金なし女の生活費が底を突くのはあっという間。

何とか行政のお世話になりつつ生き延びて、体調を回復させ、再就職先も決まった。

そんな秋に、もともとら好きなリズムゲームの新作が出た。SUPERSTAR EBiDAN、通称シュスエビである。

もともとEBiDANのことは朧気にしか知らなかった。今回の主題の属する、超特急がそこに所属していることも曖昧な認識であった。

多彩なグループの楽曲でリズムゲームが楽しめて、楽しくなってしまった。そして、気が付き、出会う。

超特急にやたらと好きな声と歌い方をする人がいた。ああこれは沼だぞ、と予感して、それが誰か特定する前に、一度ゲームをアンインストールした。

体調を崩してから、自分を大切に思えなくなっていた。一時は、楽しい、嬉しい、とポジティブに思うことは罪だと感じてしまうまでに強迫的な態度を自分に取っていた。だから、義務的にミッションをこなすだけでなく、楽しい、と思えるリズムゲームのシュスエビが怖くなったのだ。

この「自分を疎かにしたい」という薄らとした通奏低音が思考に流れることにより、体調が戻っても生活は相変わらず整わなかった。

端的に言うと、セルフネグレクト、という状態になるだろうか。自分のためになることが、自分がどうでもよすぎて、自分の中での優先順位が激低となるのである。

例えばリップクリームひとつとっても、冷静に考えればセルフケアの一環として、唇が荒れないように購入し、塗ることは何ら罪では無い。そのはずなのに、頭のどこかで「色気づくんじゃないよ」「誰も見てないよ」「お前に使うお金がもったいないよ」と声がするのである。まあこの容姿を整える系の物品に関しての内なる文句は、昔母親から言われた言葉そのままなんだから、トラウマに近いのかもしれないが。

そういった過去のトラウマが、浮き彫りになる心地が齢アラサーにして初めてした。嫌だなあ、と思うと同時に、何が嫌かようやく自覚できたのだから、克服するチャンスかもしれない、とも思った。

2023年冬から2024年始めにかけて、再就職先は優しく、フルリモートでキャパが小さくてもできる、でもやりがいのある仕事を私に投げていた。それは私の自己肯定感を上げることに、有益に作用した。

気持ちと時間に余裕が出たことで、ふとシュスエビのことを、あの好きな歌声のことを、思い出した。

そしてゲームを再インストールし、超特急の歌割りを確認して(ここで初めて2人しか歌っていないことに気がつく)、声の主の名前を知る。

超特急 シューヤ、その人である。

そこからあれよあれよとYouTubeの映像を漁り、サブスクの曲を聴き、FCに入り、ライブに行った。このスピード感を達成できたのは、今思えば非常に幸運なことである。特に2024年春ツアーライブチケットは激戦であったので。

ライブで、生で聴くシューヤくんの歌声は格別であった。天性のハイトーンな声質はもちろん、歌い方も巧者すぎて、魅入られきるまで時間はかからなかった。

と同時に個人FCであるところのキラリなどで垣間見える彼のパーソナルな部分にも惹かれていった。彼は、いわゆる陽キャである。先述のようにネチネチした思考をしてしまう私とは対極とも言えるだろう。だからこそ、眩しくても、素直に受け入れられた。と同時にその光に近づきたいと思った。

インスタライブやFCでの配信を、何となく見ているうちに、ポジティブな陽の気にあてられたのか、自分の醜さや怠惰も受け入れつつ、前に進むことも悪いことではないと自然と思えるようになってきた。

とはいえ、強迫的な自己否定・卑下はまだまだ根強く、お礼を伝えるとともにあと一歩、背中を押してほしいな、なんて贅沢な願望を持つようになっていた。

そんな時にニューシングルの発売と、付随する特典会の開催が発表された。

このチャンスを逃すまい、とCDを予約し、応募。幸運にも2ショット会とお渡し会に当選することができた。

そして特典会当日、2024年11月9日はやってくる。

当日まで「私なんて……」を押し殺しつつ、「いやシューヤくんと間近で会うんだし!」と言い訳に使わせてもらって、数ヶ月ぶりに美容院に行ったりネイルをセルフながらしたり、メイク道具を新たに揃えてみたりと、これまででは考えられないほど、自分をケアした。おかげで当日は、自分でもこれなら会いに行ってもまあ許されるやろ、というラインにたどり着けた。

いざ最初はお渡し会。3部の参加であったため、1部と2部のレポで結構話せることを知り、2ショットでは喋れるけどお渡し会はあっという間やろ、とタカをくくっていた私は急いで話題を考えることになる。

その結果、2ショットで話そうと思った好きになったきっかけはそのままに、お渡し会では自己肯定の後押しをもらうことにした。

その結果がこちらである。

お渡し会のレポ

以下、いらん解説である。
初手から名札を確認して名前を呼んでもらえて叫ぶかと思った。それでも気を確かに持って、自分のことを大切にできない、と突然初対面で宣言し始めるヤバい奴になった。目的としては「自分を大切にしな」と言ってもらうことだったが、お願いする前に「大切にした方がいいよ!」と真顔で言われて、心底それはそう、と思ったので間髪入れずに「ですよねー」と返したら、大ウケされてしまう。このままでは言われ逃す!と判断して、顔を背けてまで爆笑しているシューヤくんを全力でスルーして、おねだりに成功。まさかの「ままた会いに来てください」までいただいてしまって危うくその場に崩れ落ちるところだった。よたよたとブースを出るころには、満足感で満たされて、シューヤくんを爆笑させられた間合いで「ですよねー」と返答できた自分のことを少し好きになっていた。

ほわほわした気持ちのまま、友達に拾ってもらい、話を聞いてもらったり逆に友達のレポを聞いたりして過ごしているうちに、2ショット会もまだあるという現実が襲ってくる。

2ショット会は最後の部、6部での当選であった。諸事情でブースに遅めに入ったため、最後から数えた方が早い順番で、さすがにシューヤくんも疲れているだろうな、と思ったが、ブースに入ると相変わらずきゅるんきゅるんな素敵な人がそこにいた。

撮影が終わり、当初の予定通り、好きになったきっかけを話す。前の部に入った友人から情報を得て、私の言いたい事の量では、相槌や返答を挟み込んでもらう隙はないと判断して一息に、
「あの私、リズムゲームが大好きで、EBiDANとかよくわからずにシュスエビ出た時にインストールしたら、めちゃくちゃいい声の人がいて、で、気がついたらここにいました」
とリリックをぶちかました。

すると、シューヤくんは
「えー!その好きになり方やばいね!!!やば!!!」
とめちゃくちゃ笑顔で、体をブースの隅に寄せる勢いできゅるきゅると体をひねって喜んでくれた。

もちろんそこでタイムオーバーであったが、伝えたいことをすべて伝えられて、大きく素敵なリアクションまでもらってしまって、私はその場では紛れもなく世界一の幸せ者であった。

2ショットの一部

シューヤくんの声に、歌に、出会って一年のうちに、自分にこんな幸せを与えられるようになるなんて、想像していなかった未来である。

これからもたくさんの歌を、彼の声で聴けることを楽しみに、自分自身も愛しつつ、生きていきたい。

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