I think of you. (1) 黒髪ボブの美少女
先日、オンラインショップの発送業務をしていたとき、見覚えのある懐かしい住所が目に飛び込んできた。
私はそこに行ったことがない。
小学5年生から6年生まで通っていた中学受験のための塾で同じクラスだった女の子が住んでいた町の名前だ。
目の大きな美少女で、ボブにしていたキレイな黒髪が印象的だった。育ちの良さがにじみ出ていた。とても頭が良くて都内の有名御三家の中学に進学した。
はじめて彼女と話したのは、私がその塾に入塾し、はじめての授業の時だったと思う。たしか彼女も初日でお互い緊張していた。席が近かった。
「地元のお友達が誰もいないの…お友達になってくれませんか?」
と真っすぐ目を見て言われた。
私も同じ小学校の友達は同じクラスにいなかったので(他のクラスにはいた)「うん!」といってお互いはにかんだ。
2年の月日が過ぎ、受験も終了。彼女と塾で最後に会った日。
「これ、私の住所。違う中学に進むことになったけど、お手紙ちょうだい。私も書くから」
と彼女の住所が記された紙を手渡された。
当時私は「文通」が好きだったので、嬉しかった。
何度か手紙の行き来があったように記憶している。でもそれはすぐに途絶えた。どちらから…とか、理由は…とか、覚えていない。どちらからともなく。おそらくお互い新しい生活に慣れてきた、もしくは、必死だったんだと思う。
でもそれでいい。なんだか、とてもいい。
彼女の笑顔や住んでいた町の名前は覚えているのに、何度も呼んだはずの彼女の名前は思い出せない。
彼女は今どこで何をしているのかなあ。元気だといいなあ。笑っているともっといい。
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