五臓:肝は木:『生きる意思』
☆肝は一本の木:『生きる意思』
人間を、大地にしっかりと根を下ろし、光降り注ぐ天空に向かって枝葉を広げる1本の木のありようと例えることができます。
そしてこの一本の木のありよう、つまり人をよーく観察するために、肝心脾肺腎という5つの要素に分けて考えます。五臓の肝心脾肺腎がそれぞれ独立して存在しているわけではなく、 一人の人間をよく診るための要素として五臓という概念を使っているのです。
・大地(脾腎)に根ざし天空(心肺)に枝葉を広げる木
このしっかりとした大地を脾腎
健やかな生きる意思を肝木
光り輝く天空(心肺)であると考えることができます。
しっかりと大地(脾腎)に根を張り、健やかな(肝)木が暢びやかにたちあがることによって、力強く天空(心肺)に手を広げることが出来ます。
この暢びやかな木は、『やる気、生きる意志』でもあります。
全身の気血の流れを調整し、生きる意思をもたせるものが肝気の力です。どっしりとした肥沃な大地に根ざすことで、充分に暢びやかになり、しっかりと力強く天空に手を広げることができるのです。
☆生きる意思(肝木)のトラブル3選
1:痩せた大地に立つヘロヘロの肝木
ところが現代人は、暢びやかなやる気、生きる意思を支える大地が痩せていることが多々あります。土台となる脾腎の力が弱いのです。
痩せた大地に育つ肝木は、身体の上部である天空に助けをもとめます。人間においては、身体がキーキーとヒステリー状態となり、他者に助けをもとめて泣き叫んでいる状態です。その必死さによって、熱を生じ、その熱が他の臟や生命力を圧迫してしまいます。
2:キーキーとした鬱滞の肝木
この身体がキーキーした状態(肝気鬱結)によって不妊に陥っている方が沢山いらっしゃいます。ストレスが不妊にはよくないといいますが、ストレスとは、ご自身の内なる問題である場合が多く存ります。
一義的には肝木がキーキーと熱を持った状態と考えられます。またそのキーキー状態をより強くするのは、外的なストレスも関係しますが、その大本の原因は、痩せた大地(ひ弱な脾腎)なのです。
3:土台の弱さの上になんとか頑張る肝木
ご自身の大地の充実度(脾腎の状態)を無視して、肝の『生きる意志』だけが暴走している場合もあります。
やせ細った大地にたった、もやしのような身体なのに、あれもやりたい、これもやりたいと『やる気』の暴走、肝気だけでキーキーがんばっている方がいらっしゃいます。
この状態を長く続けると、土台がよりやせ細り肝木を支えられなくなり、悪循環となります。この状態の結末は、どうしても肝木が立たない、つまりやる気がまったくでなくなるという状態です。
ここまできてしまうと、建て直しが非常に難しくなります。身体を支える大地を充実させることの大切さを心に留めて置いていただきたいと思います。大地(脾腎)を充実させること、肝気(生きる意志、自分の欲望)と折り合いをつけることが、生きていく日々を健やかに過ごすためには重要になるのです。自分の欲望とどう付き合うのかということが大事なのです。
☆肝は血を蔵する
また全身の血を藏することにも、肝は関与しています。藏するというのは蓄え貯蔵し、全身の血のめぐりを調整するという意味です。妊娠したいという女性に
とって、血が健やかにあり、全身によくめぐるように調摂されていることは大事なことです。女性の生理の問題を『血の道』などと表現することがありますが、肝と関係の深い言葉です。