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新宿御苑前で月食を臨む。

仕事が終わり急いで電車に飛び乗った。
皆既月食をどうしても観たかったから。

聞いたところによると、完全な形に近い皆既月食が見られるのは89年ぶりらしい。
次はなんと65年後だとか。
特別天体ファンというわけではないけれど、月を眺めるのは大好き。しかもこの貴重な機会を逃すわけにはいかない。

でもひとつ問題が。
私のアパートから見える空はとても狭い。
だから最寄駅では全然ないのだけれど、空がまあまあよく見えそうで帰りも便利な、新宿御苑前で途中下車したのだった。

駅前に降り立つと、予想通りはっきりとよく見えた。おそらくこれが世紀の瞬間だ。

しばらくすると、隠れていた月が現れて辺りが照らされた。


月を眺めていると、空の隙間から見られているような、何かと目があったかのような不思議な感覚を覚えた。

そういえば古典や和歌の題材に月は多く使われるけれど、なんだかわかる気がする。
現代と比べて、夜道を歩けば照らすものがほとんどない時代。
そんな時に空の隙間から覗く月の灯りは、さぞかし神秘的なものだっただろう。

そんな風に思いを馳せながら2駅分歩いた。
ネオンだらけの都会の真ん中で仰ぐ空。
それでも、月はいつだってわたしたちを惹きつけてやまないし謎めいた存在だ。

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