ショートショート2/7 「学級委員 in the train」

浅田 佑樹(18)

 スーツを着た鼻の高い人、白髪の老人のように見えるけど、現役であるという目をしてる人、目の下に泣きぼくろがある女性、自信なさげに下を向いてスマホを弄っている男子高校生だが、足腰がガッチリしていて侮れないなと思う人、、、

全員いるな。


よく学校のクラス分けを朝の満員電車のように、勝手に人を押し込んだだけだから、全員と仲良くするなんて、考え方も異なるし無理なんだよ。と伊藤くんは言っていた。確かにそうだなと思っていたが、僕には朝の満員電車もクラスなんだよな。そう思っていた。

「瞬間記憶兼永続記憶能力」(僕が名付けた)、僕にはこの能力があるらしい。暗記とか楽勝じゃん。ずるい!と思われるかもしれないがなかなか厄介なものなのだ。学校の勉強、主に字や数字の配列などを瞬間記憶できる人もいるのだろうけれど、僕は人の顔や形などにしかこの能力が働かない。これは厄介である。一度を人を見ると忘れないのは良いことなのだが、妙に気が回ってしまう。なので、関係のない人の情報まで細かく覚えてしまい疲れる。


朝の満員電車は一見人が多すぎて匿名性が高い空間だと思うけれど、僕にとってはもう2年以上も関わっている顔見知りなのだ。毎年何人か入れ替わりが起こるが数人程度であるため、転校生が多い学級だとも言える。名前も知らないのに、寂しい気持ちになったり、新生活が始まる4月には気持ちが昂ることもある。

いつも通り視界の端で電車の中を見渡して、いつものメンバーであることを確認する。たまに他所のクラスから遊びに来る人もいる。

こうしていると学級委員みたいだなと感じることがある。しかもこのクラスは100人以上いるため、まとめるのが難しい。なんて妄想をしながら最寄駅に着く。


扉を開けて、教室を見渡す。田口くんは昨日より顔色が悪い。あんまり、寝てないな。橋本さんと小木さんは今日も仲良く話している。

僕も席に着き、朝読書の準備を始める。8:15を過ぎた頃、元気の良い数学教師、僕らの担任だ。

「はい、浅田号令」

僕はこの能力をこの教室でも活かす。

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