【短編小説4/4】家族伝承 …の母の母の母

 やったー!
 高女に通える!
 高等女学校だ!
 親父殿が本家を説得してくれた。
 本家では、大伯父上が亡くなって田畑を受け継ぐときにひと騒動あったらしい。継ぐのは大伯父の長男さんで問題なかったのに、お上にごっそり税金をもっていかれることになったって。一生懸命に家業を手伝っていた長男さん、税金を払うために田畑を手放すことにもなりかねず親戚中から責められたって。
 そこで我が親父殿は考えた。決して多くない資産を子どもたちに残すために、親父殿は考えに考えた。山林や田畑を残すより学問を授けようと。学があれば人生を切り開いていけるだろうし、なんといっても学費に税金はかからないと。税金の話題になると本家は口をつぐむしかなくなる。
 そこで私は晴れて女学生となれるのだ!
 親父殿の第一子である私が、成功例にならねば!
 なんて気合いも気おくれもない。
 決意も努力もない。
 そんなもん必要ならあとからついてくるでしょ。
 もう、ただ、ただ嬉しい。
 高女に通える。
 時代は昭和。
 先行きは明るい。
 私はモダンガール。
 お気楽な女学生。
 これからの日本? 世界? 
 うーん、なんとかなるんじゃない? 
 私が背負わなくてもいいでしょ。
 ちゃんとした人が考えてくれるよ。
 ね?
 未来はまかせた。

                了

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