連作短編小説「婿さんにいってもいいか」4月
【四月 ノンフィクションな人生】
生まれ育った島根のこの町に帰ってきて二年になる。
広島の大学を出てそのまま広島で就職し、四年間会社勤めをして退職した。これといった出来事もなくただ万全と一日一日を過ごしていた。さすがにこのままではいけないと、専門学校に通って介護士の資格を取得した。せっかく取得した資格を活かさない手はないんじゃないかと、田舎の母にすすめられるままに、地元の老人福祉施設の試験を受けたら、再就職が決まってしまった。そのまま町営の特別養護老人福祉施設「桃玉の家」で