ワインを伝える
昔話が続いた。最近のことを書く。2年前からワインスクールで講師を始めた。ワインの仕事で幸せに感じることの一つがワインの素晴らしさを伝えることだ。特にビギナー向けのクラスは楽しい。スクールのテキストを踏まえつつ、四半世紀のワイン業界で得た裏話やワインを楽しむコツを盛り込んでいく。ワインの値段の秘密、ソムリエの心の声、デートでのかっこいいワインのオーダーの仕方。ネタは尽きない。
スクールの講義はこうだ。クラスにもよるが90分〜2時間の授業時間の前半はいわゆる座学。ビギナークラスならワインの作り方や種類、レストランで上手にオーダーするには、のような内容。中級クラスはワインの生産地を深く掘り下げて学んでいただく。後半は座学で説明したワインを比較試飲する。大体4〜6種類。ワインスクールに通う最大のメリットはこの比較試飲だろう。まず普通の生活では数種類のワインを同時に比較しながら飲む機会は無い。ワインバーやペアリングコースでも通常は1種類ずつ出される。一方比較試飲では色や香りの違いを比べることができる。こうすると特徴がわかりやすい。もう一つのスクールのメリットはコメントを共有できることだ。ワインのテイスティング、特に香りのコメントはなかなか難しいのだ。例えば青リンゴのような香りがある白ワインをテイスティングするとしよう。その香りはどの方の鼻にも感じられているのだが、それが「青リンゴ」と脳で認識するのに慣れていないのだ。これは人の名前と顔を一致させる作業に似ていて反復が鍵だ。つまりある方の顔を見ながら〇〇さん、と何度も呼ぶことで名前と顔が一致するようになる。ワインの香りでは鼻にその香りを感じている時に、講師の「これは青リンゴの香りがあります」という言葉を聞くと、鼻での感覚と脳の情報がつながるのだ。昔、脳科学者が「アハ!体験」が重要と言っていたが、あれだ。これは1人で飲んでいてもなかなか起きない。だから最初はピンと来なくても繰り返し講師や仲間と意見をシェアしながらテイスティングをすることは重要なのだ。
ワインスクールやクラスを選ぶのはなかなか迷うと思う。スクールに関しては通いやす場所にあるというのが一番大事と思う。どんな習い事でもそうだが「遠いな」と思うと気分が乗らないとか天気が悪いとかという理由で足が遠のくものだ。それで言えば駅から近いのは考慮に入れるべきだろう。無料体験説明会を行なっているスクールも多いので利用してみてはいかがだろうか。私の教えているスクールでは説明会でプチセミナーも行う。ワインの基礎と3種類の試飲ができる。そのうち1つのワインは小売価格1万円近いものなので、これが無料で試飲できるだけでも儲けもんだ。クラスを選ぶ際に試験の準備など明確な目的がなく、ワインのことをちょっと知りたいのであればビギナー向けクラスを1コマ受けてみるのがいいと思う。私の教えるスクールでは90分が隔週で5回完結のものが用意されている。勉強する、というよりは楽しく飲んで、「ちょっと友人に自慢できる知識」がつく気軽なクラスで毎回授業が楽しみだ。特に今年から始まったビズワインというクラスはワインをビジネスでの会食やご接待に活用する「明日から使えるワイン知識」をテーマにしており、「億の金を動かす時の接待では乾杯に何を頼むべきか?」など話している。
この他には単発の1 dayセミナーで中国茶とワインというのも好評だ。詳しくはPLAZA CHAでそのうち書こうと思うが、中国茶とワインというのは共通点がとても多く、ワイン好きの方はほぼ間違いなく中国茶にもハマる。中国茶の楽しさをワインとの比較試飲で見つけていこうという講座だ。
ワイン講師をして気づいたのはワインというのは一生勉強していける、好奇心のカタマリのような私にとっては永遠の楽しみだということ。これからもワクワクして生きていこう。