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スペキュラティブデザイン

美大に入る前、アートやデザインについて色々勉強していた時に出会ったスペキュラティブデザインという考え方。大学の授業の一環で、その大家である長谷川愛さんのお話を直接伺うことができた。(嬉しい!)

長谷川愛さんは世の中の常識に問いをたてる衝撃的な作品を世に放ち、今の社会に対して問題発見、疑問提起をされている。
いくつか作品の紹介をすると、

I WANNA DELIVER A DOLPHIN…

人間は遺伝子を次世代に渡す方法として子供たちを育てるように遺伝的に仕向けられていますが、人口過剰と緊張した地球環境のために最適な状況で子供を育てることはより難しくなっています。
このプロジェクトは、潜在的食物不足とほぼ70億人の人口の中、これ以上人間を増やすのではなく、絶滅の危機にある種(例えばサメ、マグロ、イルカ等)を代理出産することを提案しています。

Ai Hasegawa

SHARED BABY

2016年、ミトコンドリアDNAに問題がある女性の医療の一環で3人の親の遺伝子を引き継ぐ子供が産まれました。体外配偶子形成(IVG: in vitro gametogenesis)の研究等の先には更に3人、4人、5人等、複数親の遺伝情報を持つ子供が作れる可能性があり、子供にとっては 遺伝子や経済、愛情のリソースが増え、親は出産育児にかかわる様々のコストが軽減される等、多くの利点と共に様々な問題が発生することが容易に想像できます。同時に何故私たちは一夫一婦制を、血縁主義を信じるのか、そして子供を欲しいと思うのか、といった疑問も浮上します。

Ai Hasegawa

(IM)POSSIBLE BABY, CASE 01: ASAKO & MORIGA

実在する同性カップルの一部の遺伝情報から出来うる子供の姿、性格等を予測し「家族写真」を制作した。現在ではまだ”不可能”な子供だが、遺伝子データ上での子供の推測ならば同性間でも出来る。ウェブの簡易版シミュレーター(β版)では、カップルの23andmeの遺伝データをアップロードすると、ランダムに出来うる組み合わせの子供のシミュレーションが病気のなり易さや外見、性格に関する情報等が文章で出てくる。

Ai Hasegawa


スペキュラティブデザインの役割

ここ数年、インクルージョンダイバーシティの観点からアンコンシャスバイアス(無意識の偏ったモノの見方)を人は持っているということを意識して、コミュニケーションしましょう、ということが企業研修でも言われ始めている。見た目や属性で分かる特徴から発生するアンコンシャスバイアスは比較的是正しやすいが、社会的問題、今の仕組み自体に存在しているバイアスを意識する、気づく、というのは難しい。特に、上記の長谷川氏のような、”社会の大半がそうだろう”と思ってしまいがちな事例への疑いなど。
そういった、自分が、世の中が、当たり前と思っているであろうバイアスをクリアにしていくことが、スペキュラティブデザインにはある。

自分が大学生〜新卒で就職した頃は、個人のわがままは許されず、社会の仕組み、会社の仕組みにいかに適応していくかが大事、それ以外は無駄か馬鹿か、というか許されない、というような、極端にいうとそんな圧力があった(と自分は感じている)。ホリエモンやモノ言う株主が台頭してきた頃で、彼らの活躍をどこか痛快劇のようにみていたが、世間のバッシング風潮があり、かつ彼らも経済事件を起こしてしまい、結局今の世の中の風潮を変えることはできないのか、、と諦めのような感覚を感じたことを覚えている。
そして社会に対してどことなく違和感を感じながらも、結局自分もその雰囲気に支配されていった。
しかし、そんなもやっとした違和感や歪みに対して、自分のスタンスを持って挑んでいくのがスペキュラティブの姿勢だ。

社会への違和感

最近自分が思う違和感は、本来、人間のために仕事があり、会社があり、社会があるのに対し、社会のために会社があり、仕事があり、人間がいる、というように、世の中がなっていまいか。その結果、働く本当の意味や喜びを見失っている人ばかりになってしまった。社会のため、人のため、ということ以前に、自分が楽しめているか、わくわくしているか、にもっとわがままになって仕事をしていくことに、自分は拘り続けたいと思う。

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