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意味もなく、無駄なことの探求
先月末の金曜日夜、主任教授の新たな研究会に顔をだしたら、衝撃的な打ち出しがあった。
「我々は、意味もなく、無駄だと言われる領域を研究する」
昨年の秋、ムサビに共同研究拠点「自律協生スタジオ」が開設された。上記は、この研究の取り組みの1つのテーマとのこと。
”ソーシャルクリエイティブ研究所と日本総研は、一人ひとりがもっと自己を表現し、主体的・自律的に生きて十全に能力を発揮できる、自由で寛容な社会になることが、個人のウェルビーイングを高め、日本社会の活力を向上する鍵になると考えています。そこで、主体的・自律的に生きる個人が自由を享受しつつ、他者や自然、テクノロジーと力を合わせる中で創出される生き生きとした社会を「自律協生社会(Convivial Society)」と名づけ、その実現に向けた共同研究を開始します。”
プレスリリース
山口周氏の著作で、「ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式」に以下のような記述がある。
”横軸が「意味がある/ない」、縦軸が「役に立つ/立たない」。世の中にある組織や企業、そして個人も、「役に立つ」か「意味がある」かのどちらかでしか、世の中に居場所を与えられません。”
例えば、、
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このマトリックスの左下、役に立たないし意味もないもの、その領域こそが人間を豊かにするのではないだろうか、という仮説を探求するという。
ここからは私の解釈だが、確かに分かる気がする。
例えば、飲料であれば、お酒は体にいいわけでもないし、ときには人に悪いことをさせたり、酒自体に特段意味があるわけでもない。しかし、人は酒を飲む。アートも、機能もなければ、意味もない(わからない)ものが高額で買われることも多々。人は、役にも立たないし、意味もないけど、なぜかしてしまう、なぜか好んでしまうものが、世の中にはたくさんある気がする。そしてそういったものが、人生を豊かにしているといわれると、そうかもしれない、と思う。前に見たフランスの映画で、「余白のある人生が幸せだ」というセリフがあったような気がするが、そういうことなのだろうか。
著書で言われている意味というのが、社会の最大公約数や共通認識となるような意味であって、意味がないという領域は、「しかし個人にとっては意味がある」と捉えてもよいかもしれない。つまり、左下の本来の姿は、機能がなく社会通念では意味がないとされているが、個人にとって何かしらの意味があるもの、ということだろうか。そうとらえると、確かにその領域は人を豊かにするだろう。
この研究会は春先まで続くので、これからどう議論が展開していくのか、とても楽しみだ。