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#9 失敗しない調査対象者リクルーティング

とてもマニアックなテーマで恐縮ですが。。。
リサーチを目的として実際の利用者あるいは仮想のターゲット層に対してインタビューや観察、ユーザーテストなどを行うことがあります。こういった場面でしばしば問題になるのがリサーチ対象者のリクルーティングです。具体的にはどの候補者が適切なのか選べない、想定する条件に合う候補者が見つからない、といった問題が起こります。このような対象者リクルーティングにおいてどのようなマインドセット、アプローチで臨むべきなのかを4つのポイントにまとめました。

ちなみにリクルーティング手法としてはスクリーニングアンケート、機縁法、ブログやSNSからのコンタクト…などの手段がありますが、ここでは手段よりも“考え方”に着目します。なぜなら手段それ自体よりもどのように対象者を選んでいくべきなのかという考え方がより重要だからです。

それでは4つのポイントを見ていきましょう。

選定条件を事前に明確にしておく

多くのケースにおいて想定する対象者の条件は明確で分かりやすいものではなく、暗黙的で曖昧です。しかしだからと言って、選定条件がきちんと定まっていないと選考の際に結論がなかなか出せないということになりがちです。たくさんの候補者からいつまでたっても数を絞り込むことができず、膨大なデータと睨めっこしながら行ったり来たりの議論を繰り返すことになってしまいます。選定作業に多様な関与者が絡むとしたら尚更です。必須の条件は何か?緩和できる条件は何か?…など、優先すべき条件は何なのかを事前に明確し、選定の意思決定ができる仕組みを作っておかなければなりません。

対象顧客の想定はアバウトに

前述の「選定条件を明確にする」と反するように見えるかもしれませんが、厳格すぎる条件もまた問題です。AかつBかつCかつD…のように想定顧客の条件が厳格にしすぎると、条件に合う人を見つけるのが難しくなります。そもそも本当に実在するのかさえ分からない人物を延々と探すことになってしまったり、第一希望の候補者との取材調整がつかなかったときに補欠候補がいなかったり、といった問題が起こります。またここで重要なのは、対象者の人物像について事前に深く想像することは悪くないということです。調査前に対象者について思いを馳せ、想像し、仮説を立てることは非常に重要です。一方でリクルーティング条件は、合理的に選定作業ができる条件に留めておくことです。

対象者情報は客観的に見る

取材前に得られる対象者情報は表面的な情報でしかありません。事前の断片的な情報から対象者のキャラクターを想像していまいがちですが、過度な想像を加えた人物情報を元に選定作業を行なってしまうことは避けなければいけません。なぜなら大抵の場合、それらの想像は思い込みであったり、誤っていたりすることが多いからです。また同様に「感情」や「価値観」に関する情報よりも、「行動」「経験」「状態」などの事実に関する情報を優先した方が、より客観的で合理的なリクルーティングが可能になります。

不適格な対象者はいない

調査対象者のリクルーティングで最も大事なことがこれです。「取材対象者を選ぶ」という行為自体に、正しいものとそうでないものを分けるようなニュアンスがあります。ところが実際にはそうではありません。どんな対象者であっても他の人にはないユニークな気づきや発見を必ず与えてくれます。そもそも正しい候補者とそうでない候補者という発想自体が間違っているのだと思います。事前に設定した対象者条件に固執せず、目の前の対象者との対話や交流から学ぶ姿勢を持つべきなのです。そしてまた実際の調査が終わってみると当初の事前条件はそれほど重要でないことがほとんどです。


「リクルーティングがうまくいかなかった」という声をしばしば聞きますが、それらはリクルーティングがうまくいかなかったのではなく、リクルーティングに向き合う姿勢が間違っていたからです。合理性や妥当性を重視しつつも、一方でリスクをとって前進しながら目の前の状況から学びを得ようとする態度が何よりも大切だと思います。

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