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#7 コロナへの向き合い方に学ぶ、リサーチャーマインド

昨日4月7日、東京都をはじめとして全国7都府県に緊急事態宣言が発令されました。法的な強制力はほとんどないとは言われていますが、それでも人々がより緊張感を持って日常の行動を変えていくのには十分な効果があると思います。

日本国内では1月中旬に初めての感染者が確認され、そこから3ヶ月ほどの間に少しずつ局面が変わってきました。大型クルーズ船での大量感染、ライブハウスなどでのクラスター発生、全国の小中高の臨時休校、オリンピックの延期決定、東京都の急速な感染者増加、志村けんさんの逝去…などが日本国内のコロナに対するムードを変えていくインパクトのある出来事になった気がします。そして3月下旬頃からは日々刻々と状況が変わり、あっという間に日常が激変してしまいました。

私自身も日が経つにつれてコロナの問題に対する態度や向き合い方が変わってきたように思います。小中高の臨時休校が決まった頃などは、コロナに対する危機感というよりは、休校による日々の暮らしや経済への影響の方が心配で、少々やり過ぎではないかという思いがありました。なぜならまだこの頃は「大多数の人は感染しても軽症で終わるので過度に日常を制限する必要はない」というのが自分自身の認識だったからです。大方のメディアの報道やSNSの情報なども同じような論調でしたし、それらの情報を見ながら自分なりに状況を捉えていたのだと思います。

しかし日が進むにつれ、状況は少しずつ変わり、新たな情報もたくさん出てきました。検査数や感染者数、死者数などをはじめとした数的データの情報もあれば、日本に先行して状況が進んでいる海外の情報もありました。そして様々な分野の専門家や有識者の見解も数多く目にするようになりました。多くの情報を目にするうちに当初の状況よりも問題が深刻であることが見えてきましたし、それらの情報を受けて自分自身の態度も当然のように変わってきました。3月後半からは仕事も完全に在宅ワークになり、プライベートでの外出もできる限り自粛しました。家族の中でも声を掛け合って、それまで以上に体調管理に気を遣うようになりました。

コロナへの向き合い方から何を学ぶか

結果的に見ると、この短い期間の中でも自分自身の認識や考えが何度も変わることになりました。しかし、それらの過去の判断が誤っていたということではなく、それぞれの瞬間においてはできる限りの情報収集と分析をしつつ、その時点で最適と思われる判断を自分なりにしてきたつもりです。その思考の過程そのものは自分にとって合理性のあるものでしたし、様々なメディアから多様な情報を複合的、横断的に見ていく中で、情報の質や意味を見極めていく目利き力も少しずつ磨かれていったように思います。

それぞれの瞬間における当時の判断が正しいのかどうかは未来になってみないと分かりません。それはこの先も同様で、コロナがどのような結果をもたらすのか、どう終息するのかという未来は予測できませんが、今できる情報収集と分析を行い、時にはリスクを取りながらその時点で自分なりに『合理的』だと思える判断をすることが求められるのだと思います。

このような態度や姿勢は、リサーチワークにおける考え方としても学ぶべきところが多いと感じます。

ビジネスリサーチの活動では、未来予測や顧客理解など不確実な領域への解釈や仮説構築が求められます。そこで重要になるのはコロナへの向き合い方と同様、できる限りの情報収集や分析はしつつも、一方で不確実性を許容しながらリスクを取って歩みを前へと進めていくことです。なぜならそもそも不確実な物事に対して100%の精度を求めることは無意味ですし、情報収集を繰り返して判断を先送りすることは問題をより深刻にしてしまう可能性があるからです。

ところが残念ながら実際のビジネスリサーチでは、このような思想が浸透しているとは言えません。「精度や確率が不明だから判断できない」という考え方は多くの企業において根強く、十分な納得感や確からしさがありそうな仮説の確率を100%に近づけるために大きなコストをかけたり、不確実であることを理由に新たな取り組みは「やらない」という現状維持の選択をしたり…といった場面にしばしば遭遇します。

背景にはロジカルシンキングへの誤った理解や失敗が許されない組織文化などがあるのかもしれません。いずれにしても現状の多くの企業の文化や慣習は、本来あるべきリサーチの実現を阻む要因となってしまっているのです。

コロナは人類に多大なダメージを与えることになりました。この先もさらに大きなダメージを引き起こすかもしれません。しかし一方で、コロナから学ぶべきことや、コロナによって好転していくこともたくさんありそうです。ビジネスにおける「リサーチ」という営みにおいても、どのような思想で臨むことが相応しいのか、その本来のあり方に多くの人たちが気づく契機になればいいなと思います。

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