発見への真摯な眼差し
リサーチャーやアナリストに求められる能力とはなんだろうか。メディアスキャニングのスキル?インタビュースキル?統計やデータ分析のスキル?などいろいろ挙げられるだろう。これらのさまざまな知識やテクニックはもちろん重要だが、新しい発見や今までになかった気付きを真摯に探求しようとする眼差しこそがリサーチャーにとって最も重要な資質だと思っている。
先日の「シニアの食生活」に関する案件でのこと。71歳の一人暮らしの男性に話を伺ったが、食には全く興味がなく、レンジでチンするだけの冷凍パスタなどで済ませることが多いらしい。食事を摂る時間も全く決まってなくて、それどころか気がついたら夕方で朝から何も食べてないということもあるそうだ。シニアの生活というと「早寝早起きで規則正しく」というイメージだったが全くそんなことはなく、どちかと言うとだらしのない大学生のようなイメージに近かった。よく考えてみたら高齢の単身者の多くは毎日何かやることがあるわけではないし、誰かのペースに合わせる必要もなく、自分のペースで自由に生活できる。想像していた高齢者像とは全く違って驚いた。
リサーチの醍醐味は、今まで知らなかったを知ることや新たな発見をすることにあり、そこで得られる驚きや感動こそがリサーチの楽しさだと思う。その意味では、知らなかったことを知ろうとする探究心や、まっすぐに「発見」「気づき」を求めようとするピュアな姿勢こそが重要だと思っている。高齢者の食生活の実態についてもまさにそのような驚きがあった。
しかし昨今のリサーチと呼ばれるものの中には、実は「発見」と向き合えていないものも多い。新聞やテレビの内閣支持率調査がメディアによって全く数字が異なるのはその典型例で、各メディアの意図や思惑によって調査設計がされている。
これはビジネスでも同様で、新たな答えを探索するためのリサーチではなく、自分の欲しい答えを得ようとするためだけのリサーチも多い。もちろんこういった裏付けを目的とした調査も時には必要だと言うことは否定しない。ただそれでもやはり未知の何かを得ようとすることこそがリサーチの本来の役割であると思う。そしてリサーチャーにとっては新たな発見への真摯な眼差しこそが、リサーチの知識やテクニックよりも大切な資質ではないだろうか。