【36】過去に学び理性的に未来を考える『2100年、人口3分の1の日本』鬼頭宏
2020年の国勢調査が先日届いた
各種政策への活用を目的として5年に1度実施される重要な調査である
21回目となる今回調査は、大正9年の第1回から数えて100年目という節目の調査でもあるという
本書は2回前の国勢調査結果が使われている2011年に出版された本だが、今でも勉強になる内容だった
少子高齢化に伴う日本の人口減少は長らく課題認識されているものの、決定的な打ち手はなく、すでに人口減少期に入っている
歴史人口学者である著者の主張で特徴的なのは、日本が人口減少を経験するのは初めてではなく、「文明の成熟化」に付随する必然的な歴史現象だということ
そのため、無意味に将来を悲観するのではなく、歴史に学んで必要な対策を長期的な視点で打ち出していくことが必要だという
それに対する答えの1つが「持続可能な新しい文明の構築」である
この言葉だけだと抽象的だが、10年前から脱工業という方向性を持続可能性という観点で提示しているのはすごいと思う
その他読んで印象に残ったのは
現在問題視されている「少子化」は日本政府主導で始まったということ
1974年の「人口白書」の副題は「静止人口をめざして」であり、出生率を2程度に抑え込むことが期待された
背景には、労働人口の急増に伴う労働問題を回避すること、人口ボーナスの経済効果享受(生産年齢人口比率が高まることによる経済活動の活性化)などがあった
なお、1975年以降は合計特殊出生率が2を下回ったのだが、実際に人口が減少をはじめるまでに30年程度かかっている
このように出生率の動向が人口動静に反映するには長い時間にかかることは重要な視点だと感じた
また、2100年がどうなるか予想するだけでなく、どういう世界にしたいたかを考えるべき、という主張は他の問題へのスタンスでもいえることだと思った
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