見出し画像

中小企業診断士と事業承継

この記事を書こうと思ったきっかけ

ABEMAの放送「#アベプラ」の「ボンボンと呼ばれても...2代目社長が人知れず抱える苦悩とは?当事者達に聞く」という内容を見ました。

↓アドレスは以下です。ただ、有料会員のみなので、見られる人はあんまりいないと思いますが、リンクを貼っておきます。

https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p5367

あんまり事業承継については仕事の関係もあって記載はしなかったのですが、まぁいいネタだし、現場で関わる診断士目線での意見も出しておきたいと思いました。

放送の概要

ひろゆき、メンタリストDaiGo、あおちゃんぺなどが出演者で、2代目社長がWEB会議を含めて、参加しているというものです。

そして、ひろゆき氏の発言は以下のようなものでした。

  1. 全権委任じゃなきゃ継ぐべきではない。そうでなければトットと会社を出ればいい。

  2. 能力が低いことを自覚すべき。

  3. 2代目は単なる従業員である。

  4. 上手く回し続けるだけで、儲かるので血縁継承すればいい。

他の出演者たちも同様で、2代目社長がボロクソに言われるだけの30分というとんでもない番組でした。

ちなみに番組にZOOMで社長枠で出ていた高橋さんは中小企業診断士で、一応お知り合いだったりします。

中小企業診断士としての現場目線

正直なところ、今回の放送はこれまでの行政が発信している事業承継の話とは全然違う話ですが、現場で仕事をしている私としてはその通りだと思うところが多いですし、事業承継の本質です。

絶対に行政としては2代目の能力が不足しているということは言いません。そもそも経営者の能力の差、違いということにフォーカスもしません。

公としての公平性だったり、公務員という職業柄の問題もあるのかもしれませんが、事業承継で一番重要なポイントを無視してしまっていることが事業承継をちゃんと把握できていない原因なのかもしれません。

創業者と2代目にはとてつもなく差がある場合がほとんどです。特に行動力の面で。経営で最も必要なものは行動力なので、行動力が足りないと変化に対応できず業績が悪化する場合も多かったりします。

一方で、創業者にだって沢山問題あったりします。行動力が暴走するパターンとか、事務処理面が弱すぎる場合などは多いですね。

ただ、出演者は創業者ばっかりですし、フリーランスタイプで、しがらみのない新しい世界で生きて、成功している人なんです。パーソナリティが全然違いますし、出演者のような人達だけだと、絶対に社会は回りません。

ほとんどの人はしがらみで生きているので、継ぎたくなくても継いでいる人も多いですし・・・

事業承継の本質

事業承継ということが問題になっていますが、私は事業承継というのは社会問題ではあるが、会社には問題ではないという認識です。

以下は個人的な意見ではありますが、わかりやすくするために、かなり誇張して極論を記載しているということをご了承の上、ご覧頂ければと思います。

会社にとっての事業承継

事業承継が問題だというのは行政・社会・国にとってだけであり、経営者個人だったり、会社にとっては全く関係ありません。

会社にとっては事業承継したければするし、事業承継したくなければ潰せばいい話です。儲かっている会社であれば継ぎ手はいくらでもいます。

赤字が続く大企業だって、社長争いをするぐらいなのに、利益が出ているオーナー会社だったら、言うまでもありません。

継ぎ手がいない会社というのは結局全く儲かっていませんし、借金も多額にある場合が多いです。

商店街のシャッター街問題も実際のところは事業承継問題です。

商店街は昔非常に儲かっていたので、子どもに教育を与えたので、東大、京大、医学部など、学歴が高い人も多かったりします。そういう人たちは継ぐよりも東京の大企業、官僚、医者として勤めて、稼ぐほうがいいということで継がなかっただけです。

もちろん、親父の言うことを聞くのが面倒な人も多かったでしょうけど。

能力の高い人たちはひろゆき氏が言う「トットと会社を出て」を行っているわけです。

行政・社会・国にとっての事業承継

行政にとっては事業承継は非常に大きい問題です。

会社の収益は都道府県、市区町村の税金にも影響しますし、雇用の場所としても非常に重要な問題です。

そしてサービス業の場合は、会社自体が、地域のインフラだったり、魅力の源泉だったりもします。代表例としては衣・食・住・移動・教育・娯楽とかですかね。(例えば、衣料品店、飲食店、スーパーマーケット、不動産会社、タクシー会社、学習塾、本屋)

会社が存続しないのが先か、できなくなるのが先かという問題はありますが、会社がなくなれば地域は死んでいくことになります。結果、負のスパイラルが続くことになります。

そして、国としての問題としてはもっと難儀な問題です。

事業承継しなくても、実際のところは沢山の代替方法があります。会社が多すぎるぐらいですし、規模を集めて大きくした方が、稼働率も上がるでしょうし、効率性が向上することは間違いないです。

(最近の経済産業省自体の方針は事業承継より集約していく方向に切り替わってきている感じはしますけど・・・)

それでも事業承継を進める一つの理由は変えないということだったりします。事業承継できればこれまでのシステムを変えないので、今いる人に迷惑を掛けないということでもあります。基本的には人は変化を嫌うので、現状維持を求める部分はあります。

もう一つは低価格で商品を供給して欲しいということです。事業承継を悩む会社はほとんどが儲かっていません。代表者でも年収200~300万程度だったりします。

年収200万円~300万円で必死に働く人がいてくれると、社会福祉という面ではとてもありがたいです。また、大企業に商品を納めているのであれば、原材料費が安くて、大企業が利益を出す源泉ともなります。

「社会のしわ寄せを受けているオマエの企業がなくなると、オレの利益が減るやろ。誰か連れてきて、しわ寄せを受け続けろ!」というのが事業承継問題の本質だったりします。

まぁ、上の形は絶対無理ですから、役立つところは早く他の人に引き取ってもらってという流れになっていますが。

もう一つの理由としては借金を背負って欲しいということもあります。破産すれば終わりなんですが、そうすると銀行や国に負担が回ってきます。

事業承継して、返せない借金を背負ってくれる、負担を受けてくれる人がいないというのが社会にとっては問題です。

中小企業診断士にとっての事業承継

結局、中小企業診断士に来る事業承継の仕事は「会社を儲けさせられるか」、「継ぎたくなる会社にできるか」が全てです。税理士や弁護士とは明確に違います。

ただ、長年続けている事業自体があるので、創業よりは確かにうまくいく可能性は高いです。このあたりもひろゆき氏が言う通りですね。

それでも環境が大きく変わっているために、収益力が落ちていて、変化への対応が必要になる場合も多いです。ワンマンな先代社長が原因で20~30年前からやり方が何にも変わっていない会社も多いですし。

事業承継の支援の方法として先代社長が改善できなかった部分について後継者が改善することをサポートすることもたくさんありますし、必要であれば、先代社長に引退を迫る場合だってあります。

これからますます事業承継が関係する仕事が中小企業診断士に来ることは増えてくると思いますが、事業承継が問題なのではなく、収益改善、人的な問題であると単純化してとらえていくといいと思います。

最後に

優待券が来たので、ABEMA見てみましたが、議論している内容が地上波よりかなり攻めているので、ちょっとハマっています。

ケチな私が有料でも見るかもしれないとちょっと思ったり・・・

あと、今回かなり表現が荒いのは、番組の雰囲気に左右されたかも・・・。

仕事でお会いする後継者社長のことは尊敬も、応援もしているということだけはご理解頂きますようお願いします。

いいなと思ったら応援しよう!