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いち中小企業診断士が見る103万円の壁、106・130万円の壁

話題になっている103万円の壁、106・130万円の壁について、中小企業診断士として経営支援をしている中で感じていることを記載します。

106万円の壁・130万円の壁が本命

会社にとって大きいのは106万円・130万円の壁です。
社会保険料への加入ですね。

中小企業診断士として数値計画を作成するとき、法定福利費は毎回悩まされます。

基本は役員報酬と給与・賃金の合計に対して、16.5%を計上しています。(雇用保険なども計上するため)

ただ、パート・アルバイトがいると役員報酬・給与・賃金合計の10%以下の会社もいまだに沢山あります。

こういう会社は今後の社会保険料加入者が増えることで、大幅に人件費が増加することになります。赤字になる可能性だって十分にあります。

103万円の壁なんて実際はない

103万円の壁は実際のところ壁ではありません。イメージは強いですが。

100万円の住民税の壁、103万円の所得税の壁は存在していますが、企業経営においてはほとんど問題にはなりません。

103万円の扶養控除も配偶者特別控除の制度があるので、現在は関係ありません。学生だと関係はありますが、全体に占める割合ではそこまで大きくはありません。

社会保険料は重い負担

法律として定められていることであるため、どうにもならないですが、社会保険料は負担として本当に重いです。

会社の利益から給与を支払うという考え方を取ると、会社負担分も結局、給与として支払える原資であることは間違いないです。

現状で労使折半として、ざっくり33%の社会保険料なので、1000円の手取りを目指すと、会社としては1,400円程度の人件費を支払うことになります。(給与:1,200円、会社負担:200円、労働者負担:200円)

会社負担分の200円を稼ぐためには会社の粗利率が20%だった場合、1時間当たり1,000円売上を上げる必要があります。

給与を上げたところで、実際のところ、商品力やサービスレベルが変わるわけではありません。そうなると労使とも社会保険に加入したくないという流れになります。

なぜ料額表を調整しないのか?

社会保険料の負担を減らすという選択肢はないでしょうから、収入が低い人からも負担をとるという形になるでしょう。

最終的に収入が低い人からも取ること自体は仕方がないかなと思っています。ただ、料額表で算定しているので、料額表で収入に合わせて%調整すればいいんじゃないのかなと思っています。

税金と保険料が違うのはわかりますが、実質的には同じような状況になっていますし、保険料だけ収入の差を考えずに一律の負担率にしているから壁の問題がいつまでたっても解消しないんじゃないかと思っています。

あと「3号被保険者がずるい」という意見に対しても、壁が存在するから3号を選択している割合も多いわけで、壁をなくさない状態で3号の制度をなくすと単純に負担が増えすぎます。

パイを広げるための選択肢をして欲しい

個人的には日本全体のGDP(パイ)を拡大する選択肢が一番正しいのではないかと思います。

働く余裕も気力もある人が働かないようにする仕組みはもったいないですし、従業員不足の現場にいると何とかして欲しいとは思います。

一方で現状の形で税金を減らさないことが、パイを広げる(国全体の豊かさとか幸福度が上がる)なら、今のままでいいと思います。ただ、これだと全て税収として国が一度徴収した方がみんなが幸せになるわけで、共産主義的になりますが。

基本的に仕組みで人は動くし、判断するので、うまくやって欲しいなぁと思っています。

地方税はそんなに問題になるのか?

各種知事から財政破綻するというようなニュースも流れていますが、実際のところ本当かなと思っています。

東京や大阪の大企業がいるところであれば地方税への影響は大きいですが、都市部でないところは所得税を納めている人自体が少ないので、そこまで目くじらを立てる必要はないと思います。

例えば島根県は自主財源が予算全体の35%でしかないですし、個人県民税なんて予算全体の3.4%しかありません。

松江市の市民税(個人)で9.4%、安来市も5.6%程度です。働く人が増え、観光収入、消費税が増加する方がよっぽど健全だと思います。

まとめ

数値計画を作るうえで、社会保険料が重要だということを書こうかなと思っていた中で、ニュースネタがあったので書いてみました。

何でもいいけど、効率向上と負担軽減して欲しいなぁというのが正直なところですね。

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