【ワインと脱炭素】30年後も世界中のワインを楽しめる社会であるために、僕らにできること(をみんなで考えていきたい)
こんにちは、南部です。
最近、「ワインと脱炭素」をテーマに勉強をはじめました。
世界には脱炭素とSDGsの大波が来ています。
毎年のようにどこかで起こる山火事や、大型ハリケーン、洪水、熱波などの異常気象に接し、いよいよ気候変動への危機感は世界的に共有されるに至りました。
自分もこれまでロクに勉強してこなかったので、まずはここでしっかり勉強をすること。
そして自分がサプライ側としても、消費者側としても関わっているワイン産業でできることを考えたいし、行動を起こしたい。
そのためには自分が得た知見を共有することで、多くの人に関心を持ってもらって、もしくは専門知識を持っている方に知見をもらって、次世代のワイン産業についてみんなで考えていけるようにしたいと考えています。
そういうわけで、まずは えいじさん と一緒に、勉強したことをnoteにシェアしていこうと思います!
今回は第一回ということで、気候変動の全体像と、ワイン産業における論点をまとめてみます。
世界の状況
2015年にパリ協定が採択され、温室効果ガス排出削減のための新たな国際枠組みができました。このパリ協定には、すべての国が参加しています。
重要なポイントは以下になります。
・世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べて、2℃より充分低く抑える。できれば1.5℃に抑える
・気温上昇を2℃未満に抑えるには、2075年頃には脱炭素化する必要があり、1.5℃に抑えるためには、2050年に脱炭素化しなければならない
・すべての国が参加
参考: https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1w_000119.html
参考: https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4348.html
また、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2021年8月の報告で、気候変動を人間によるものと初めて断定しました。
現状について以下のように報告しています。
・地球の2011~2020年の地表温度は、1850~1900年に比べて摂氏1.09度、高かった
・過去5年間の気温は1850年以降、最も高かった
・近年の海面水位の上昇率は1901~1971年に比べて3倍近く増えた
・1990年代以降に世界各地で起きた氷河の後退および北極海の海氷減少は、90%の確率で人間の影響が原因
・熱波など暑さの異常気象が1950年代から頻度と激しさを増しているのは「ほぼ確実」。一方で寒波など寒さの異常気象は頻度も厳しさも減っている
引用) https://www.bbc.com/japanese/58142213
また、温室効果ガス排出量がどう変化するかによる複数のシナリオを検討し、将来の影響を以下のように記述しています。
・どのシナリオでも、地球の気温は2040年までに、1850~1900年水準から1.5度上昇する
・全てのシナリオで北極海は2050年までに少なくとも1回は、ほとんどまったく海氷がない状態になる
・1850~1900年水準からの気温上昇を1.5度に抑えたとしても、「過去の記録上、前例のない」猛威をふるう異常気象現象が頻度を増して発生する
・2100年までに、これまで100年に1回起きる程度だった極端な海面水位の変化が、検潮器が設置されている位置の半数以上で、少なくとも1年に1度は起きるようになる
・多くの地域で森林火災が増える
引用) https://www.bbc.com/japanese/58142213
海水面の上昇や異常気象などについては、すでに手遅れの状態にあるということです。
いますぐ手をつけないと手遅れになる、ではなくて、もう遅い、やるしかない、という状態であり、黄色信号ではなく「人類への赤信号」(国連事務総長発言)ということです。
日本は、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。
参考) https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/
2050年までの普遍的な改革の必要性
あと30年。めちゃくちゃ時間がありません。
しかも、世界の二酸化炭素排出量はいまも増えています(参考)。
パリ協定は、あらゆる国を巻き込む枠組みになりました。
実際には上位6ヶ国で60%を排出しています。
その6ヶ国には、日本も入っています。
国別でみても、これだけ格差があるわけですが、パリ協定はすべての国を巻き込んだ枠組みとなりました。
これは産業についても言えると僕は思っています。
世界のあらゆる産業のなかで、ワイン産業が排出するCO2の割合は0.1%もないはずですが(※ 注)、割合が小さいから何もしなくて良い、という状況ではもはやないと思うのです。
※ 注
年間のワイン生産量: 258億リットル(参考)
瓶詰めされたワインのCO2排出量(LCA): 1.16kg/リットル(参考)
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上記を単純計算すると、ワイン産業の排出するCO2は2,992万トンとなり、これは世界全体の0.1%弱。
(上図にあるように、世界のCO2排出量は335億トン)
ここからは私見ですが、割合の大小に関わらず、普遍的に改革をする必要性があると考えるのは3つの点からです。
1つ目は、実効性を担保するために。
我関せず、な産業があると、全体の意欲が低下するように思います。世界がこれだけ密に繋がり、モノが大量にやりとりされる時代ですので、すべての産業が努力する必要があるでしょう。
2つ目は、消費者の価値観の変化に合わせるために。
エコでないものはカッコよくない、という価値観が普通になり、消費者の選択も変わっていく可能性があります。
例えば、ガソリン車ではなく電気自動車が買われる。大量消費型のファストファッションではなく、良いものを長く着る。
消費者ニーズが変わるなら、それに合わせて変わる必要があるでしょう。
3つ目は、規制産業にならないために。
いまのところ、気候変動対策は成長との両立が図られています。
SDGs = 持続可能な開発目標という言葉にも現れていますし、環境省も「カーボンニュートラルへの挑戦が、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想で、日本全体で取り組んでいくことが重要」だとしています(参考)。
資本主義は成長しないと成り立たないので、市場のメカニズムに任せながら、脱炭素するというのがいまの国際社会のあり方です。
しかし、例えば2050年の節目にあたって、これがやはり立ち行かないとなると、いよいよ市場のメカニズムに任せておけないということになるかもしれません。
そうなると、各国政府や、国際社会での規制が進むでしょう。
政府は、公共の福祉に反するものは規制できます。
例えば、タバコはたった30年で、数量ベースで70%減りました(参考)。
消費者の価値観の変化もあると思いますが、税金によるものが大きいでしょう。
エッセンシャルかそうでないか、というのは、コロナ契機でよく使われるようになった考え方のように思いますが、エッセンシャルでないものは特に規制しやすいものです(例: コロナ禍における飲食店への規制)。
例えば、輸入酒類が大幅に増税されることもあり得るかもしれません。
そうなれば、世界中のワインが自由に楽しめる今の生活様式も変わらざるを得なくなります。
「30年後も世界中のワインが楽しめる社会であるために」とタイトルをつけたのは、この点からです。
ワイン産業における二酸化炭素排出
それでは、いよいよワイン産業についてみてみましょう。
ワイン産業のCO2排出における、各セクターの割合は以下のようになっています。
パッケージ: 50%
輸送: 18%
ワイナリー: 17%
ぶどう畑: 15%
※ 2016年のAWRIの研究をもとにグラフを作成
参考) https://winetitles.com.au/199176-2/
パッケージというのは、ワインを入れる容器のことです。
ワインはガラス瓶が主流であり、ガラス瓶の製造時に、CO2を大量に排出しています。
また、ガラス瓶は重量が重いため、輸送時のエネルギー負担も増加します。日本に輸入されるワインの多くも、生産地でガラス瓶に詰められて、遠くから運ばれてきます。
ワイン産業における脱炭素の論点
今回の記事では論点をいくつか挙げて終わりたいと思います。
①まずパッケージについては、ガラス瓶に代わる代替パッケージをより増やす必要があるのではないか、ということ。
例えば、アルミ缶、ペットボトル、パウチ、紙パックなど。
製造時の二酸化炭素排出が少なく、軽量なものを使ったほうが脱炭素へ近づくことができます。
そのとき、代替パッケージのリサイクル率は重要です。
また日本はリサイクルに頼りがちですが、本来より大切なのは、リデュース(削減)とリユース(再使用)です。3Rという考え方です。
それぞれの代替パッケージのデメリットも考える必要があります。
例えばペットボトルなら、マイクロプラスチックによる海洋汚染。脱炭素だけで議論を進めると、ほかの場所に負を転嫁することになり得ます。
②輸送については、バルクでの輸送が最も効率が良い手段となります。
すなわち、生産地で瓶詰めするのではなく、大容量のタンクで輸送し、消費地で詰める、ということ。
生産地で瓶詰めするようになったのは、偽造防止などの歴史的背景があります。また、バルク=安いワイン、というイメージもあります。
このあたりに新たな可能性はないのかも探っていきたいと思います。
③ワイナリーでは、省エネと自然エネルギーの活用が肝になるでしょう。ブドウ畑では、トラクターの動力と化学肥料の削減(化学肥料の製造では大量の二酸化炭素が発生する)が肝になりそうです。
勉強した内容を逐一シェアしていきます
今回挙げた論点を中心に、深堀りして今後noteにまとめていきたいと思っています。
記事の冒頭で書きましたが、これを通して自分が学ぶと同時に、いろんな方の意見や、知見のある方のアドバイスもいただきたいです。
というのも、みんながイケてる、楽しいと思えるエコなワインが作れたら、それが一番改革も速く進むはずですよね!
それこそが市場経済の強みです。
規制や我慢ではなく、よりエコにワインを楽しむにはどうしようか、とポジティブに考える時間が残されています。
定期的に投稿していきますので、どうぞよろしくお願いします。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました!😃
また、ワイン商えいじさんも投稿してくれています!よかったらそちらもぜひお読みください😊
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