介護や医療、高齢者にかけるお金を削って現役世代に付け替えると結果として現役世代の負担が増えるのでは…

今までの日本の社会保障や福祉政策は高齢者に偏っていて、現役世代への給付が少なかった。
全世代型の社会保障制度を構築する為には高齢者に使っていたお金を減らして、それを子育て世帯や若者支援に回すべきと主張するものがいる。
一見すると正しいように思えるが、これは大きな間違いであることを指摘する。
今、高齢者の医療や介護の自己負担を引き上げることや要介護1.2の訪問介護、通所介護を保険外にし、市町村が運営する総合事業へ移管する事が進められようとしている。
今年の介護報酬改定では訪問介護の報酬が減らされた。この影響は大きく介護事業者の倒産件数が過去最多になってしまった。
在宅で介護をしている方々がヘルパーの派遣を受けたくても事業所が減ってヘルパーさんもいなくなってしまったら、介護保険制度はあっても、サービスを受けたくても受けられなくなる。そうなった時にどこに皺寄せが行くかと言えば、在宅で介護をしている子ども世代もしくは孫世代、つまり現役世代が仕事を削って介護しなくてはならなくなる場合が多いだろう。
医療保険の自己負担の引き上げは引き上がっても本人が貯金を切り崩したりして支払いが可能なら問題ないだろうが、そういう方ばかりではない。支払いきれない場合、必要な医療を受けなくて良いとはならず、結果的に子どもや孫世代で医療費の負担しなければならない場合が生じるだろう。
つまり、国の予算上、高齢者への支出が減って、子育て世帯や若年層への予算が増えるようになったとして、これはあくまでも国家の予算の話で、個人個人の家計で考えると、高齢者世帯への負担増を子どもや孫が支払わざる得ないことが生じ得る。つまり、個人、個人の家計では負担増になるのだ。
高齢者への支出を減らす事は一見若者には良さそうに思うかもしれないが、結果、若い世代が親や祖父母の介護をしなくてはならなくなるという物理的な負担も増える。
親や祖父母が支払きれなくなった医療や介護の費用を若年者世帯、子育て世帯が負担することになる。
つまりは、国が制度の中で負担していたものを削って、個々人に負担を付け替えているだけなのだ。
これはある種行政の責任放棄では無いだろうか?
自己責任どころか親の責任まで負わせる家族連帯責任みたいなことになってしまいかねない。
介護保険制度って介護の負担を家族だけに負わせるのではなく、社会全体で支える仕組みを作ろうということで始まったはず。4半世紀経ってぐるっと一周回って、家族に戻って来た。これで良いのだろうか。
少なくとも国の負担を減らして個人に付け替えるような真似はしないで欲しい。
高齢者への支出を減らせば、子育て世代や若者への支援が増えるは嘘
結果として、子どもや孫世代が国に変わって負担をしないとならない事になるのだ。

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