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厚生年金保険料の労使折半になぜ誰も疑問を挟まないのだろうか?

財政や社会保障制度についてこのnoteに何度か書いているが今日は厚生年金の事業主負担について述べようと思う。
日本は所得の再配分後の方が格差が広がると指摘されているが、その理由のひとつが社会保険料が報酬額(所得)に関わらず同じ料率になっているからだ。
以下の通り所得税は年収が高くなるに連れて税率も大きくなる累進課税になっている。

一方で厚生年金の保険料は年収に関係なく一律で18.300%を労使で折半(個人の負担は9.15%)することになっている。
健康保険料も含めて社会保険料は労使折半が当たり前だと思われている。
しかし、冷静に考えるとここに大きな不公平が潜んでいるのだ。
健康保険は医療機関にかかった時に窓口で負担する割合は現役世代は所得に関係なく3割負担だ。
同じ割合で保険料支払っているから自己負担も同じ割合というのは納得出来る。
しかし、厚生年金の保険料は健康保険とは性格が異なる。
どう違うかというと納付した「金額」に応じて、将来もらえる年金「額」が変わるのだ。
沢山保険料を納めたのだから、年金額が多くなるのは当然ではある。
しかし、半分は事業主が負担しているのであって本人負担ではない。
現行制度はお給料を沢山もらっている人程、会社が沢山保険料を納めてくれて、その結果、将来受け取れる年金額も多くなっているのだ。
所得の高い人の方がより多く貯蓄出来る。一般的に所得の高い人の方が資産が多くなる。
それなのに更に会社が保険料を沢山納めてあげる制度って公平なのだろうかと疑問に思うのだ。
例えば、月の報酬額(社会保険では保険料の額を計算する基礎となる月の給料の額を標準報酬という)が200,000万円の人の保険料は36,600円を労使で折半している。つまり事業主が18,300円の保険料を納めている。
厚生年金の保険料は報酬額が月65万円が最高額になり、保険料118,950円で事業主負担分は59,475円になっているのだ。
つまり、給料20万円の人よりも65万円の人の方が会社から4万円以上年金保険料を納めてもらっているということになる。
年間で50万円も多く会社が保険料を納めてもらう事になり、結果として退職後の年金生活まで優遇してもらえることになっているのだ。
健康保険と違い将来年金として戻ってくる厚生年金の保険料については事業主負担を一律にしていると給料が高い人ほど事業主に支援してもらっていることになり、所得の再配分という視点からかけ離れている制度になっていると感じるのだ。
高度経済成長期のように終身雇用、年功序列賃金の時代は40年間勤続する中で給料も上がり、それに応じて事業主から支払ってもらう保険料の額も上がっていくので大きな差にはならなかった。
しかし、現在は非正規雇用などで賃金がほぼ上がらないまま退職年齢を迎える人もいる一方で、毎年昇給していく人もいるというように賃金が皆同じように上がっていく時代ではなくなった。
収入の多い人ほど事業主から多くの保険料を納めてもらい高い年金をもらえるようにする制度は見直す必要があると考える。
どう変えるかというと厚生年金保険料については労使折半をやめる。
個人負担分は今まで通り所得に対して一定の割合(現行の保険料率では9.15%)を維持するが、事業主負担は割合ではなく保険料の「額」を固定化したらどうだろうか。
現行の厚生年金保険料は32等級あるので、その真ん中16等級(標準報酬月額240,000円)だと事業主の負担は21,960円になる。
事業主負担をこの金額に固定すると標準報酬月額が220,000円以下の人は事業主が払ってくれる保険料の額が増え、260,000円以上の人は事業主の負担する保険料の額が下がる事になるのだ。
この金額については事業主が負担と感じない程度の範囲にする必要があるが将来の年金額にも反映されるのでもう少し高くても良いかもしれない。
例えば、最高額の半分程度の30,000円程度が妥当なように感じますが…印象で言っているのでちゃんと試算が必要です。
このように労働者ひとりに対して幾らと固定の額を納めることにすると人頭税みたいだと批判する人もいると予想される。
税金は反対給付がないが、年金保険料は将来年金として戻ってくるものだ。
将来戻ってくるのに給料高い人の方に会社がより多く支援するのではなく、社員はみんな等しく支援するという制度の方が公平だと感じるのだかいかがだろうか。

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