デヴィッド・フィンチャー 映画『ファイト・クラブ』
★★★★★
ふだんまったく映画を観ないのですが、DVDをレンタルして鑑賞しました。いやはや、ブラッド・ピットのかっこいいこと!
小説をきちんと踏襲して作られているだけでなく、卓抜な演出、映像化するための再構成、結末の変更など出色の出来です。
15年以上前の映画ですが、エドワード・ノートンの着ているスーツの野暮ったさとパソコンの古さ以外に気になるところはありませんでした。
小説には小説のよさがあるのですが、総合的には映画版に軍配が上がるのではないでしょうか。というよりも、この映画版がなければ小説の方もこれほど注目されてはいなかったように思えます。よくも悪くもチャック・パラニュークの小説は癖が強い(強すぎる)ので、読む人をかなり選んでしまいます。映画版の方はもう少し観る人を選ばないでしょう。
それにしても、叙述トリックというか、文章ならではのギミックのある本作をよくぞ映像化できたものです。その手腕に脱帽です。すごいとしか言いようがありません。
小説版の癖を要素として取り込みつつも、観客を置いてきぼりにしないように丁寧に扱われています。腕のいいシェフが癖の強い素材の臭みを抜いて極上の味に仕立て上げたようなものです。素材の魅力を損なわずに、旨味だけを引き出しています。その結果、間口の広い作品になっています。
ひと言で言うと、小説よりもキャッチーですね。小説はきつい人でも映画の方がいけるでしょう。デヴィッド・フィンチャーさんに拍手。
そして、ブラッド・ピットが演じるタイラー・ダーデンは間違いなく映画史に残るダーク・ヒーローですね。ほれぼれするほどかっこいいです。
ミスター・チルドレンにも『ファイト・クラブ』という曲があり、歌詞の中で、タイラーに憧れてたといったことが書かれてましたが、
深く肯けます。
観ていない人はいつでもいいので観ることをお薦めします。
もっとも、暴力描写がえげつないので、そういうのが苦手な方は避けた方がよいでしょうが。
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