Robert Coover 『Treatment』
★★☆☆☆
御年86歳のロバート・クーヴァーの掌篇3篇です。
ポストモダンの作家、寓話やメタフィクションの作家として知られているそうです。何冊も翻訳されていますが、僕は読んだことがありません。
treatmentはおそらく「台本、シナリオ」という意味でしょう。
ニューヨーカー2018年4月30日号掲載。
『Dark Spirit』
舞台は撮影所です。美女と野獣の焼き直しのようなくだらないシナリオにうんざりしている女性が主人公。不吉な森に入っていく場面を撮影中、彼女は闇のなかに迷い込みます。誰もいなくなり、何も見えません。なんとか彼女はそこから戻ってきます。
『Desperate Hours:The Musical』
脱走した囚人たち三人組が郊外の家に押し入り、一家を人質にとっている場面から話は始まります。
一家の子供である少年が、一味のボスに本物のならず者かどうかをたずねると、三人は歌い出します(タイトルにミュージカルとありますね)。
そこに杖をついた老人が訪問してきます。が、老人はあっさり始末されます。
一味のボスが砂糖を欲しがりだすものの、あいにく砂糖を切らしているため、手下の一人が隣人に砂糖を借りにいきます。
隣人の女性は物憂げに歌い出します。手下も歌に加わります。それを見た夫はショックを受け、外人部隊に入ろうと出ていきます。
一方、少年は逃げようとして撃たれてしまいます。ボスは少年を治療してやり、手下の一人を残して少年と出ていき、教会を襲うことにします。そこで隣に出かけた手下と遭遇します。
改心した二人は歌います。集会に出ていた人らも歌います。騒ぎのなか、少年は牧師を撃ちますが、思ったほど楽しくありません。銃をボスに返し、代わりにアイスが食べたいと言います。
なんの話なんだか、よくわかりませんね。僕もわかりません。
『The Lone Ranger』
表題は西部劇を元にしたヒット作品です。目のまわりにマスクをつけ、白馬シルバーに乗り、相棒トントを連れているヒーローで、テレビや映画にもなっているようです。西部劇クラシックといった感じでしょうか。
正義の主人公であることに飽きたローンレンジャー。いつもの白い帽子から黒い帽子に代えて、悪役に扮します。町の教会に行くと、宿敵ブッチ・キャヴェンディッシュに出くわします。こっちは逆に改心しています。
キャヴェンディッシュに扮したローンレーンジャーは町で悪事を働きます。銀行を襲ったり、銃を撃ったり、馬を逃がしたり。
悪事を終えて根城に帰り、再びローンレンジャーの姿に戻ると、キャヴェンディッシュ一味を捕まえに町に戻ります(要するに、マッチポンプですね)。せっかく改心した一味ですが、濡れ衣によって吊るし首にあってしまいます。
えっと、なんだかしょうもないパロディに思えますね。僕はそう思います。
内容について特に思うところはありませんけど、出てくる単語がむずかしかったです。ヴォキャブラリーが貧困なので、知らない単語だらけでした。移民系の作家と比べると、やはりネイティヴの作家の語彙は豊富な気がします。つらい。
それくらいです。
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