12月26日の日記(かもしれない物)
新聞をとりに表へ出ると、人影が見えました。ただいま午前三時です。お化け出現率マックスの時間帯です。
私はパジャマ姿ですし、見なかったことにしようと思ったのですが、人影は私に気がついてしまったようです。
振り向いた人影は、ものすごい立派なヒゲを生やした、おじいさんでした。
はて、こんな遺族がいたかしら?と考えていると人影は「水をもらえませんか?」と言いました。よく見れば足もありますし、目力も強くお化けではなさそうです。
水くらいコンビニで売っていそうなものですが、おじいさんは途方にくれている様子です。聞こえなかった振りをしようか悩んだのですが、つい「2リットルペットボトルで、いいですか?」と言ってしまいました。それほど困って見えたのです。
おじいさんは助かったと申し訳ないの間の顔で、「できればバケツでもらえると…」と言いました。
我が家の新聞受けのわきには、水道がありバケツも常備されているので、お水をバケツにいれ、おじいさんに渡しました。
と、おじいさん、やや上を向いて「おーい、お水をいただけたよ!」と声をあげました。
空からトナカイが、しゃなりしゃなりと降りてきます。トナカイ?トナカイです、たぶん。先日テレビで特集していたので、たぶんそうです。
トナカイは順番にお水を飲んでいます。トナカイが何頭もいるので、もうひとつバケツを用意しました。
うっすらと、おじいさんの正体に気がついてしまったのですが、気がつかない振りをすることにしました。仕事上がりなのかコートの下に赤い服がチラチラしています。
おじいさんは丁寧にお礼を言ってトナカイと共に帰っていきました。
狐につままれた気分だったのですが、私は本来の目的の新聞を取り出しました。
新聞紙が上質紙のキラキラフルカラーになっていました。…。ありがとう、ヒゲのおじいさん。でも、ちょっと読みにくいです。