FP学習日誌(番外編) -最近読んだ本 その1
本業の税理士業務がやや忙しくなってきて、FP学習はお休みがちなのですが、そんな中、お金に関する本を最近読みました。今日はお勉強からちょっと外れてその話をさせてください。
著者は投資家の与沢翼さんという方ですが、ご存知の方も多いのではないでしょうか。正直わたしはこの方あまり好きではなかったのですが(与沢さんすみません、まさかこれお読みにならないとは思いますが。。)、家族が面白半分でファンだというので読んでみました。
今回は、この中からいくつかのポイントをピックアップしたいと思います。
出典: 『お金の真理』与沢翼(宝島社2020年5月)
与沢さんは投資家ですが、この本には「この銘柄や業界がねらい目」とか「暗号資産がきてる!」とかいうような具体的な投資に関するアドバイスはありません。サブタイトル「与沢翼が出したお金と幸せ、その最終結論」の通り、投資に限らずお金全般に関する話で、お金に対する彼の姿勢や哲学が語られていました。読んでいていいなと思ったのは、現在とにかく彼が家族との生活を楽しんでいて幸せそうだということでした。
与沢さんは、日本での倒産・自己破産や国税滞納差押え等の経験を経て、現在は海外在住です。この本を読んで初めて知ったのですが、少年時代には非行で鑑別所に入ったこともあるそうです。
まず、印象に残ったのは「現金一括で買えないものはすべて身分不相応」というメッセージでした。人間の欲望には際限がないので、それをまず断ち切ることが重要だそうです。
「賃貸でタワマン最上階」とか「ローンで外車」、そして「住宅ローン」さえも彼によるとNGだそうです。「ローン組まずに住宅買うなんて無理!」と思いましたが、その場合は賃貸で頭金を十分ためてから購入すればいいと。そのときにローンを組んではいけないということではなく、いつでも返せる状態にしておくことが大切だと言ってました(それでもちょっと無理。。。の声が聞こえてきますが。笑)。
その他には、
- 自分の会社を作れ、しかし大げさな起業はするな
- 収入は浅く広く
- 貯金だけではお金持ちになれない
- ミニマルな生活を心がける、しかし節約バカになってはならない
- 「コップからあふれた水だけをすすれ」→たとえば1千万円たまっても、基本的には再投資し、「あふれた部分」だけを使う
- 大手が提案してくる金融商品は危ない
などなどがありました。
「法律とはそもそも不完全」というフレーズにも共感しました。たとえば、税務署のあいまいな経費認定に対して憤りや不公平感を持つことがあるかもしれませんが、この社会を生き抜いていくためには、その理不尽を飲み込まなくてはならない、と。特に海外では、約束が守られないことは日常茶飯事なので、そういったことと上手にお付き合いしていくのが大切だということです。怒りに任せてケンカしたり、裁判を起こしたりしても、得るものはおそらく何もありません。むしろケガを負ったり、裁判が長引いたりすることで時間とお金の浪費が続くだけでしょう。
それから「国や会社に助けを求めるのはナンセンス」ともありました。危機感を持つことが成功のためのスタートライン、お金の不安はなるべく若いうちに感じた方がよいということでした。これを読んで、「もうわたし若くないし。。。」と思ったかもしれませんが、今日のわたしは明日のわたしより若いんです!一番若い今日から考え始めるということでも決して遅くはないとわたしは思いました。
で、危機感をもったらどうするかというと、「備蓄が大切」なのです。本当のお金持ちは年収が多い人ではなく純資産の多い人です。このnoteの別の回でわたしも同じことを言いましたが、年収がいくら多くてもそれに見合う生活をしていると資産は増えません。与沢さんは、とにかくフロー所得からストック=純資産をつくることを勧めていました。そして増やし方は。。。
まず自分の「本当の年収」を知るところからはじめましょう。これは「可処分所得」と言い換えた方がいいのですが、同じ年齢・年収の人でも、毎月の支出を考えたときに手元に残るお金が異なります。さきに言ったことと重複しますが、同じ「30歳、年収1千万円」でも、六本木のタワーマンションに住んで高級車、外食ばかりというAくんと、適度にいい感じのアパートで自炊を楽しみながらこつこつ貯蓄するBくんでは明らかですよね。毎月手元に残るお金がいくらなのかを把握し、少しだけでも貯蓄を始めることがスタートです。これ当たり前すぎて言うのは簡単ですが、でも実際できてる人って少ないのではないでしょうか。そして軍資金が溜まったらいよいよ投資です。
リーマンショック、東日本大震災、そして今回の新型コロナのような状況に陥ったときに、人は「もう日本経済は終わりだ」みたいな考えになることがあります。しかし、マクロ視点でみたときには、世界のお金の総量は基本的には変わらないので、与沢さんはそれもチャンスだと考えます。どこに自分の大切なお金をシフトさせるか?「ピンチをチャンスに」とかいうと安っぽく聞こえますが、それを考え抜くそうです。在宅時間が増えてアマゾンでのお買い物やピザの宅配が盛況、くらいはよく聞きますが、与沢さんはある日、CNNニュースで「ドイツのアダルトグッズメーカーの業績が1.5倍」というのを見つけたそうです。「長期間、単独あるいはパートナーと一緒にいることを強いられる人たちの模索の結果」と報道されていたそうです。これは、そのニュースを見て彼がそのドイツの会社に投資したということではなく、そういった視点を持つことが大切だということです。当たり前ですが、ニュースになった時点ではときすでに遅し、です。自分の頭で考え抜いて見つけることが大切なのです。
そのタイミングとしては、「アーリーアダプターへの普及を確認してから動く」のがよいそうです。世の中の5つの層(イノベータ→アーリーアダプター→アーリーマジョリティ→レイトマジョリティ→ラガード)の中で、50%を超える前が「アーリーアダプター」のフェーズといわれています。さまざまなビジネス・サービスなどを、早すぎず遅すぎないタイミングで見極めることが重要です。
それから本書では、昨今のコロナ禍での「給付金」や「助成金」についても触れられていました。今回の新型コロナのような局面でも、業績を伸ばしている企業はあるのだから、自身の事業をダメだと判断したらそれはさっさと捨てて、次のステージに向かうことが大切だろう。しかし、そこに中途半端に給付金や助成金が出ることで無駄な延命措置が行われている、と。表現はともかく、これにはわたしもなるほど、と感じました。社員から「社長、助成金申請してください!」と言われて申請して、もらってしまったらそれを社員に給与として支払わないわけにはいきません。もし助成金なんてものが存在せず手元資金が底をついたら、社員に頭を下げてその時点でビジネスを畳むしかありません。しかし、そこで心機一転新しい世界に飛び込む方が、社員にとっても自身にとっても、結果的には良いかもしれないのです。これは理想論かもしれませんが、一考に値するのではないでしょうか。
逆に本書でひとつ賛同できなかった点は、「人脈は負債」です。いま与沢さんは、ほとんどすべての交友関係を断ち切ったと言っていました。会合には行かない、LINEの友達もいない、などかなり極端に人間関係を整理されたようです。これは過去の経験を踏まえた彼なりの結論なのでその生き方を否定することはしませんが、わたしにはできないことだと思いました。
最後に、わたしがこの本でもっともグサッときたのは、「過去の意思決定の否定」です。「ローンで高級車」とか「六本木で豪遊」、「投資の失敗」など、過ぎてしまったことは仕方ないけれど、それをきちんと振り返りましょうと。
わたしは、外車も豪遊もないですが、株式投資での失敗は数多くあります。しかし過去の振り返りはほとんどしていないですね。。。負けたものは見たくないですし、勝ったもの(取得価格より高く売れたもの)でも、現在値がさらに上がっているのを見るのは気分のよいものではありません。しかし与沢さんは、そういったものも冷静に見直しながら、誤った意思決定をしたことを自分で反省することが大切だとおっしゃってました。猛省です!
本書にはその他、過去の自身の自己正当化バイアスについて語っているところとか、「直感・実行・反省」、「期待値を高く持ち過ぎない」などの言葉もありました。読後には、この方はわたしよりもずいぶん若いのに、いろんなことが分かっている方だな、ほんとに頭のいい方だな、と感じました。
以上、思いつくままの読書感想文でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました!
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