最近読んだ本 「仕事を教えることになったら読む本」
「教え方の本」です。タイトルずばりの「仕事」に限りらず、何かを教えたり人前で話す必要のある人には参考になるでしょう。
本書では、まず「教える」の定義づけというか教える行為を分解して、
1.知識を付与する教え方
2.技術を付与する教え方
3.意識を高める教え方
としています。「知識=Teaching」「技術=Training」「意識=Coaching」ですね。
そして、得た知識と技術は相互に効果を与え、意識はそれらを支えます。図にするとこんな感じでしょうか。
知識を与える=ティーチング
では最初にまず「ティーチング」です。どんな知識でもティーチングの基本は、
①動機付け→②説明→③効果測定
です。「教える」というのは、もちろんメインは②の説明ですが、その前後の動機付けと効果測定によって完成します。
「では今日は当社の取扱製品について説明します。A製品は・・・・」と、いきなり始めてませんか?それでは聞き手は興味が湧きません!
対してこれはどうでしょうか?
「はい、では今日は当社の取扱製品の覚え方を教えます。いまからお話することを知っていれば、数多くある当社の製品を早く覚えられるよ!」
と、ここでは言葉じりがフレンドリーかどうかとかはあんまり関係ないのですが、どうですか?「早く覚えられるよ!」という聞き手のメリットが強調されているように聞こえますよね。これだけで聞き手は、他人事ではなく自分ごとだと考えるようになりモチベーションが上がります。
ちなみに、動機付けには2パターンあります。
A. メリット獲得アプローチ
B. デメリット回避アプローチ
つまり、Aは前記のような「〇〇すると良いよ!」という方向、そしてBは「XXを知らないと困るよ!」というやや脅しめいたアプローチです。これらは場面によって使い分ければよいのですが、どちらでもよい場合は、できるだけAのメリットアプローチの方がよいでしょう。
そして②説明ですが、これはおそらく自身の専門分野のことを教えるので、コンテンツについては問題ないでしょう。重要なことは話の組み立てです。
大原則は、
全体→部分、または、結論→理由
の順で話すことです。これ、頭では分かってても、ついつい細かいところから話してしまうんですよね。間違ったことを教えたくないあまり、ディテールに入って行って、そのまま全体が分からないまま時間切れ、みたいなこともよくあります。
これに対応するには、「ひとことで言うと」とか「ざっくり言うと」、「早い話が」のようなフレーズが役に立ちます。あとは、「大切なことは3つあります」「大きく2パターンに分類できる」みたいなのもgoodです。できるだけ、まずは全体像や着地点を伝えてから、詳細に入って行ってください
話し方のポイント -間を置く・たとえ話を多用する
話し方にも工夫が必要です。自分の知っていることを畳みかけるように話しても、相手には入っていきません。時間がもったいない!と思わずに、十分な間を意識してください。
③の効果測定でも大切なことですが、間を置いて、質問を投げかけるとここまでの説明がきちんと習得できているかも確認できます。
あと、これはわたしの経験からも感じていたことですが、教え方の上手な人は「たとえ話」が上手です。ぼんやりした教科書の中の話ではなく、身近な事象に置き換えて説明すると、相手にぐっと入っていくことができます。
技術を与える=トレーニング
次にトレーニングです。これは、ティーチングで教えたこと(≒座学)を、実際やって見せることです。
動機付け>やって見せ>説いて聞かせて>させてみて>ほめて>見届ける
山本五十六風にいうとこんな感じですね。
さっきのティーチングの①動機付け→②説明→③効果測定、に「やって見せ」を加えるということですね。
やって見せるときに、まずは、いったんすべての動作を見せるのが良いそうです。動作の途中途中で「で、このときはこんな感じで・・・」「そしてこのときは・・・」みたいな解説が入るよりは、ひと通りの流れをつかませてから、あとで説明する方が頭に入りやすいのです。
「させてみて」のあとの効果測定では、具体的なフィードバックを行うわけですが、その際にもポジティブなメッセージを送ることがお勧めです。たとえば、名刺交換のトレーニングで「相手に近すぎた」というフィードバックをするときには、「近すぎないようにする」という否定よりは、「あと20cm手前に差し出してみようか」というような具合です。そしてフィードバックのポイントは2つくらいまでがいいそうです。もし3点以上の否定すべきポイントがあったら複数回に分けて行ってください。
もし、2日以上の指導セッションがあったとしたら、2日目の始まりには、前日の内容のおさらいをすると効果的です。24時間以内に習得したことがらについて、再度「記憶を押し付ける」作業をすると、それがより強固なものになるからです。
そしてコーチングです。
コーチングで大切なことは、「傾聴・共感」と「オープン質問」です。傾聴・共感は「アクティブリスニング」とも言われますが、ただ聴くだけではなく、聴く側が、自分自身の言葉や表情、動作などに気を配って「よりよく聴く」ものです。その場合、否定したくなる場面でもぐっとこらえて「共感」することが重要です。ポイントは簡単、
①目を見て聴く、②あいづちを打つ
のふたつだそうです。当たり前すぎることですが、昨今ではリモートでのミーティングや、実際対面していても、PCやスマホを見ながら、という場面もあるのではないでしょうか。会話の内容に関係ないものを見ているのは論外ですが、パソコンで会話のメモを取ることや、紙のメモも、話し手にとっては話しづらいアイテムになるようです。「手元フリー」が、この本でのアドバイスでした。
そして「オープン質問」について。コーチングでは「本人に考えさせる」ことが大切ですが、ここで「5W1H」の登場です。
5W1Hはみなさんよくご存じだと思いますが、本書では5W1Hではなく「5W2H」が推奨されています。一般的な
①When、②Where、③Who、④What、⑤Why、⑥How
に加えて、⑦How muchが入ります。その中でも④⑤⑥が重要なのだそうです。なぜならその他は、オープン質問であると言いながらわりあい簡単にこたえることができますが、④What、⑤Why、⑥Howに関しては、こたえる幅が広いため、考える範囲も広がるからです。
普段の雑談でもこの「5W2H」を意識して会話すると練習になりますよ。
具体的には、例えば部下に「いま何か問題ある?」と質問すると「いいえ」とだいたい答えてきてしまいますが、「いま問題だと思ってることは何?」と聞くと「そうですね。。。僕としては。。。」と意見が出てくることがあります。それは、前者がyes / noクエスチョンであるのに対して、後者はwhatで聞いており、思考が深まるためです。また、前者は「問題があるかどうか」という「事実」を聞いていますが、後者は、厳密に問題があるかどうかではなく「あなたはどう思うか」と、相手の意見や気持ちを聞いているところが大きく異なります。
その他テクニック的なことでは、あいづちの打ち方にバリエーションを持たせるとか、相手の言葉をオウム返しにする、要約を返す、気持ちを返す、というようなものがあります。
濱田秀彦『仕事を教えることになったら読む本』アルク(2021年)
※画像と本文は関係ありません。
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